中国の通販サイト(ECサイト)は、欧米のみならず、韓国や日本などのアジア諸国においても、急速にその影響力を広げている。
この状況に対し、韓国政府は、国内の中小企業や製造業の利益を守ると同時に、国民の個人情報が中国政府の手に渡るリスクに対する対策を練っている。
特に、韓国における中国の通販サイトの拡大は顕著である。韓国の調査会社のWiseapp Retail Goodsによる最近のデータによれば、中国の代表的な通販サイトであるAliExpress(アリエクスプレス)、Temu(テム)、Shein(シーイン)のスマホショッピングアプリ利用者数が過去最高を更新した。
このうち、AliExpressの利用者数は818万人に達し、前年同期比で130%の大幅な増加を記録した。また、TemuとSheinのアプリ利用者数もそれぞれ581万人、68万人と、どちらも新記録を更新し、韓国の総合ショッピングアプリランキングではAliExpressが2位、Temuが4位にランクインした。
3月17日に韓国税関が発表したデータによれば、2023年における中国からの通販サイトを通じた商品輸入量は前年比で70%増加した。また、同期間に海外から直接購入した商品全体も36.7%増を記録した。
金額では、昨年の中国からの直接購入額は約23億5900万ドル(約3570億2750万円)に上り、前年と比較して58.5%の増加を見せた。全体の海外直接購入額も約52億7800億ドル(約7987億1974万円)に達し、11.7%の増加を記録した。この結果、中国からの直接購入が初めて米国を超え、海外直接購入でトップの座に立った。
中国からの通販輸入が急増、問題も浮上
一方で、中国の通販サイトにおいては、品質の問題や偽物、不正行為に関するクレームがしばしば寄せられている。
例えば朴鎮洙さんは(29歳、韓国人会社員)「アリババのAliExpressで注文したゼロ重力チェアが、配送遅れどころか、使用不可能な状態で届いた」と述べている。
朴さんは商品購入時、配送保証や顧客保護、配送遅延時のクーポン提供などが約束されていたものの、実際には「どれも信用できなかった」と話している。
昨年、韓国における消費者クレームの件数は673件に達し、2022年の228件と比較して3倍以上に増加したことが韓国消費者院のデータから明らかになっている。
特に、今年に入ってからAliExpressに対するクレームがすでに352件に上るなど、中国の通販サイトへの問題提起が続いている。
中国の通販サイト、不正行為と偽造品の問題
韓国公正取引委員会は、医薬品やわいせつ物、有害化学物質、未認証の電気製品や工業製品、刀剣類を含む15種類の商品のオンライン販売を禁止または制限しているが、中国の越境ECサイトではこれらの規制を無視した販売が行われている状況だ。
例えば中国の通販サイトで「下着」や「人形」といったキーワードで検索すると、アダルトグッズや媚薬と見られる商品が表示される。
また、韓国内で医師の処方箋が必須のメラトニンやED治療薬、矯正眼鏡、及び安全認証が求められるライターや充電池などもオンラインで販売されており、これらは韓国の法律に違反している。
さらに、韓国税関のデータによると、昨年中国からの偽造品の押収件数は6.5万件に上り、前年比で8.3%の増加を見せている。押収品全体の中で、これら中国からの偽造品が96%を占めるという結果が出ている。
個人情報が中国共産党政府に漏洩する恐れ
中国の通販サイト市場の拡大に伴って、韓国の市民は自己の個人情報が中国政府に漏れる可能性について、ますます懸念を抱いている。
業界関係者は、AliExpressやTemuなどの通販サイトは、利用規約において収集した個人情報を第三者に提供する可能性があると述べている。
中国では、中国国内の企業が政府へデータを提供することが法律で義務付けられている。「国家情報法」第7条により、全ての組織や個人は法に従って国家の情報活動を支援し、協力しなければならないとされている。
韓国の業界関係者は、中国の法律により、中国企業が海外のサーバーに保存された個人情報を中国共産党政府に提供する可能性があると指摘している。これは、情報の主が外国人ユーザーであっても変わらない。
昨年10月に韓国国会の政務委員会で行われた国政監査では、アリババの子会社AliExpressが顧客の個人情報を中国へ転送することが可能であることが指摘されたが、これらの情報がどのように管理されているのかについては、詳細が明らかにされていない。
韓国、通販サイトの問題に対処するための法改正を検討
中国の通販サイトがもたらす課題に対応するため、韓国は法律の改正を考えている。韓国内での独占を防ぐための法律を実施する機関は、政府によるより厳しい規制を求めており、通販サイトと国内の通販サイトが法的に等しく扱われるような計画を進めている。
この機関は電子商取引法の改正も進めており、一定の規模以上の海外通販サイト業者には、国内代理人を指定することを義務づけ、消費者保護の責務を強化しようとしている。
個人情報保護委員会は、業者が個人情報保護法に従っているかを監視し、放送通信委員会は通販サイトを介した消費者情報の流出に対する対策を強化する予定である。
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