中国では子供に対し、「いじめられたら相手を殺していい」と教唆する親が続出している。そのきっかけとなったのは、先月、全中国を震撼させた「中学生殺人事件」だ。
そんななか、先月22日、江西省九江市のある学校の前で撮影された動画が、ネットで拡散されて物議を醸している。この動画が反映しているのは、音を立てて崩れ行く現代中国の社会道徳と教育崩壊のリアルである。
動画のなかで、ある女性の保護者はヒステリックな声をあげて、その子供に対して次のように教育?教唆?していた。
「怖くないよ! 何かあったら遠慮なく言うんだ」「今度またこの子が殴りかかってきたら殴り返すんだ! 相手を地面の上に押さえつけて殴るんだ、殺しても問題はない。なぜならばあの子は悪い子だから」
女性と女性の子と思われる小学校低学年の男子生徒の向かいには、いつもいじめてくるという「クラスメイト」と思われる男子生徒とその保護者(父親と思われる)が立っていた。
(「いじめられたら殺していい」と教唆する親)
「未成年」は免罪符ではない
先月10日、河北省邯鄲(かんたん)市で中学生3人による同級生の殺害および死体遺棄事件が起きた。事件発生から2週間以上経つ今も、中国のネット上で大きな話題になっている。
現地当局は被害者宅のネットを遮断したり、被害者側の弁護士を弾圧したりしている。
容疑者(加害者)3人はいずれも14歳以下である。
「まだ中学生の子供が、どうして同級生を殺害するような悪魔になってしまったのか?」人々はやるせない嘆きとともに、幼いとはいえ「犯人」である3人への厳罰を求めている。
「いま、中国全土があの3人の悪魔に対する処置を注視している」と言っても過言ではないほど、事件への注目は非常に高い。
事件の注目と共に、SNS上には「未成年だから何をしてもいいのか?」といった趣旨の動画が数多く作成され、拡散されている。
なかには、小さな子供同士のいじめを映したショート動画を投稿し、「私たちは未成年だから、あなたを殺しても問題ない」といじめる側が揚言するものも登場している。
そんななか、時事評論家の姜光宇氏は先月19日、現在全中国を震撼させている「中学生殺人事件」についての投稿を自身のSNSに転載した。
そこには、学校に通っている子供をもつある保護者による「厳正声明」があった。
声明内容の邦訳は以下である。
厳正声明
もしあの3人の悪魔が死刑にならなかったら、私は自分の子供にこう告げる。「恐れるな、いじめられたら相手を殺せ」と。
私は(殺された我が子の)墓の前で絶望するより、監獄へ行って我が子に面会するほうを選ぶ。
「安分守己(あんぶんしゅき、身のほどをわきまえて高望みせず、自分のなすべきことに忠実な生き方をすること)」の保護者より
2024年3月18日
事件をもとに作られたショート動画が検閲される
この事件の被害者の名と家庭背景をそのまま使って、子役使って製作されたショート動画が中国版TikTok「抖音」で封殺に遭っているようだ。動画の最後に、主人公の女性は、腐ったリンゴ(加害者3人のことを表現)を握り潰して、次のように呟いている。
「焦るな、彼らは(悪事の)報いを受けることになるから」
(中国版TikTok抖音で封殺に遭っている事件をモチーフにした動画)
「もう子供を学校に通わせない」
華人圏のネット上には、子供がいじめられ被害に遭わせたくないから学校に通わせないと声明する類の動画も拡散されている。
その声明の一部を紹介する。
「子を持つ親である私には権力もなければ、(未成年を過保護する)邪悪な法律を変える力もない。私には学校でのいじめをどうにかすることもできなければ、死者を蘇らせる手段もない。後悔したくない。我が子が元気に楽しく、無事に育ってくれればそれでいい。我が子を第二の「王子耀」にはしたくない。子供が小学校を卒業したらもう学校には行かせない。悪法が変更されない限り、あの3人が殺人の罪を自分の命で償わない限り、私はそうする」
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