海外銀行と電話したらアカウント凍結? 反詐欺の名の下で市民を監視=中国

2024/04/08
更新: 2024/04/08

4月4日、中国・浙江省の市民が、中国の携帯番号で海外の銀行と仕事の話をしていたところ、中国共産党公安部の反詐欺システムを誤って作動させ、警察からの嫌がらせを受けた。さらに、その人の全ての銀行カードやアリペイは凍結された。

2021年には、中国公安部はスマホ用の反詐欺アプリを導入した。中国では、反詐欺の名目で、携帯電話の回線停止が多発した。複数の人権団体が2月、反詐欺アプリは広範な監視ネットワークの一環だと指摘した。

4月6日には、浙江省の市民、「美食美景benny」という微博ユーザーが、4月4日午後、自宅でシンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行に連絡していたところ、1時間後に公安部の反詐欺専用ホットライン「96110」から連絡があったと投稿した。

その電話には応答しなかったが、その後、友人がWeChatで「警察があなたを探しており、電話に出ない場合は他の友人にも連絡すると言っている」というメッセージを送ってきた。

そのネットユーザーは「その後、96110から再度連絡があり、相手は反詐欺センターの寧波南門派出所の人間だと名乗ったが、警察の番号を告げず、非常に無礼な態度で、なぜ電話に出なかったのか、なぜ海外に電話をしたのかを問い詰めた。そして、家の住所を特定し、派出所の警官が自宅に行くと脅した」と投稿した。

シンガポールへの電話は、仕事上のものだったことを警察に説明し、また、「どうして私の連絡先リストにアクセスして友人に連絡を取り、私の携帯を追跡し、脅迫する権限があるのか」と警察に問いただした。警察は「電話詐欺の被害者がいるから」と主張し、「全てはあなたたちの利益のため」と言い残して電話を切った。

その後、その市民が住む地域の警察署から再度電話をかけてきて、彼に連絡を取った。彼が警察の識別番号を尋ねると、相手は補警(正規の警察官ではないが、警察官に準じる立場で公務を執行する人)であり、地元の警察署から連絡するよう指示されたと答えた後、電話を切った。

予想外にも、その夜、この市民が外出して買い物をしたところ、自分の名前で登録されている全ての銀行カードとアリペイが凍結されていた。
 

反詐欺アプリは監視網の一環

多くのネットユーザーは同じような体験を共有している。中国本土での詐欺対策は、行き過ぎているとの声が上がっている。

一部のネットユーザーは、すべての個人情報を警察が把握し、アクセスできるのは恐ろしいとコメントした。
 

2020年には、多くの中国外貿関係者から、銀行口座が他の省の公安によって理由もなく凍結された。解凍するための手続きは煩雑で、罰金を支払うよう求められたと不満の声が上がっている。

ある外貿関係者は、口座が7回も凍結され、4回も他の省の公安に呼び出されて、「電信詐欺や賭博」という名目で口座を凍結したと告げられた。

2021年には、中国公安部がスマホ用の反詐欺アプリを導入し、市民にそのインストールを強制した。

チベット人研究者のネットワーク「ターコイズ・ルーフ(Turquoise Roof)」と人権団体「チベット・ウォッチ」は、今年2月にこの反詐欺アプリが、実際には広範な監視ネットワークの一環だとする調査報告を発表した。

その調査では、アプリがユーザーの受信メッセージを監視し、通話履歴やインターネットの閲覧履歴にアクセスでき、さらにはユーザーが入力する数字や写真を撮影し、周囲の視覚情報を収集する能力があると明らかにした。

また、報告書は、顔認証機能が大量のデータを収集し、チベット人を含む中国国民の監視と追跡を強化するために使われていると指摘している。

李浄