独首相が中国へ突きつけた「3つのノー」 中共リスクからの脱却目指す

2024/04/16
更新: 2024/04/16

中国訪問中のドイツのショルツ首相は16日、「欧州は中国製自動車を歓迎しているが、ダンピング過剰生産、知的財産権侵害の「3つのノーを提示した」と述べた。

専門家は、世界各国は中国共産党との関係で生じるリスクから脱する戦略を考えていると指摘している。中国共産党を阻止し、対抗するためには避けられない流れになっている。

15日、ショルツ氏はドイツ企業の幹部らを率いて、同済大学を訪問し、スピーチを行った。

ロイター通信によると、ショルツ氏は同済大学で、ドイツやヨーロッパもある段階で中国車を輸入することになるだろうが、「公正な競争でなければならない」と表明している。言い換えれば、「ダンピングや過剰生産、権利の侵害があってはならない」ということだ。

台湾南華大学国際事務と経営学科の孫国祥准教授は、ショルツ氏の訪中の一つの焦点は、中国共産党が不公正な競争によって、ソーラーパネルやEVを大量に輸出しているかどうかだと語った。

孫氏は、ドイツの産業、特にEV産業がリスクに直面しているとき、ドイツと中国は非常に重要なコミュニケーションを行っているとみている。 

実際に、ドイツでは、中国との関係において意見が分かれている。 ベアボック外相は中国共産党に対して強硬路線をとっている。 一方、ショルツ氏は独中間の経済貿易関係を重視している。

脱リスク、独首相の課題

ショルツ氏の訪中は、昨年7月にドイツが中国に対し、「脱リスク」の政策と立場を明らかにした「中国戦略」報告書を発表して以来、初めての団体訪問となり、多くの注目を浴びている。

呉氏によれば、シュルツ氏の訪中は、ドイツと中国の競争・協力関係において一定のバランスを取ろうとしているようだという。

「南ドイツ新聞」紙は、「Balanceakt in Peking」と題した記事の中で、EUが中国の電気自動車に課す可能性のある懲罰的関税、ドイツ企業が中国で直面する不公平な競争環境、中国共産党(中共)のデータ収集活動、中共輸出品のダンピングなどのテーマについて、両国は早急に話し合う必要があるとしている。

そして、二国間関係における最も重要なポイントの一つは、ドイツが体制の異なる競争相手である中国共産党への依存を減らし、恐喝の被害を受けにくくすると同時に、北京を怒らせず、ドイツ企業が中国でビジネスを展開するのを邪魔しないようにするかだとしている。

昨年秋、欧州委員会は中国製EVに対する補助金調査を始めた。調査が終了後、中国のEVに懲罰的関税を課す可能性がある。

ショルツ首相の訪中前夜、ドイツ自動車工業連盟(VDA)は、中国との対話は支持するが、追加関税賦課は貿易戦争を引き起こし、ドイツの雇用を脅かす可能性があるとして、反対する姿勢を示した。

脱リスクの流れ 中共の脅威に対処

ドイツのifo経済研究所が発表した調査報告によると、家具と自動車製造の分野で、ドイツ企業が中国への依存を減らすための取り組みが目に見える成果を挙げている。

工業と貿易の分野で中国の原材料や商品に依存しているドイツ企業の割合が40%未満に下がった。特に家具製造と自動車製造の業界では、中国製の重要な原材料や中間製品に依存する企業の割合がそれぞれ29ポイント、17ポイント減少している。

一方で、ドイツの化学産業は中国への依存度を深めている。該当分野の46%の企業が中国からの供給に依存しており、これは2022年の調査時より5ポイント増加している。

台湾シンクタンク・両岸政策協会の呉瑟致研究員は「世界がリスク軽減の道を進む中でいくつかの衝撃や影響はあるが、どのようにして中国共産党のリスクを防ぐか、リスク軽減の戦略をどう進めるかについて、世界はまだ手探り状態であり、どのような手段を取るべきかはっきりしていない」と述べた。

ドイツの政治家の中には、中国から距離を置くべきだと考える声もある。

ドイツのキール世界経済研究所の最新の研究では、中共との決別はドイツ経済を約5%縮小させる可能性があるが、これは2008年の金融危機や新型コロナウイルスの流行後の経済衰退と同程度のダメージだという。つまり、非常に厳しい状況になるものの、回復不能なわけではないということだ。

同研究所のシュラリッチ所長「わが国には、そのような極端な状況に対処できるだけの柔軟性がある」と語った。

呉氏は、ショルツ首相の訪中は国益に関わる問題であり、また西側諸国が中国の問題や台湾海峡の状況、さらには中国共産党の脅威に対して一定の関心と認識を示していると述べ、 バイデン政権が築いた多国間情勢が一役買っていると考えている。

呉氏は「国際社会、特にヨーロッパ地域から見て、いかに中国共産党と対抗するのか、いかに中共の脅威に対処するかは、ヨーロッパ諸国では非常に重要で避けて通れない問題になると思っている」と語った。

程静
駱亜
中国語大紀元の記者、編集者。