「今年の高卒者は全員大学に縁がなかった」…中国の教育が崩壊している

2024/04/19
更新: 2024/04/22

2024年の中国では、6月7日に行われた全国統一大学入試、通称「高考」の出願者数が再び過去最高の1353万人に達した。これは前年よりも62万人増、そのうち413万人が浪人生だった。しかし、2024年の大学学部の入学者数は450万人にとどまる見込みだ。つまり、2024年に卒業する高校生の大多数が大学に進学できない可能性がある。失業率が上昇するなか、中国の若者たちはどのような未来を模索すべきなのか。

中国では6月が「高考の季節」と呼ばれ、「高考」は中国の全国統一大学入学試験だ。受験生は統一試験を受け、公開された点数に基づいて志望校を選択する。十数年にわたる過酷な学習期間を経て、自分の将来を左右する一発勝負なので、中国人の人生の成否は「高考」で決まると言う。

良い大学に入学するためには高い点数が必要であり、親は子供をできるだけ様々な塾に通わせる。有名大学に入学することはすなわちエリート層になることを意味し、貧しい家庭の子供たちは良い成績を収めることで貧困から抜け出すことができる。大学入試は唯一の人生の出口ではないが、貧しい家庭の人々にとっては唯一の出口となる。

誰もが名門大学への入学を望み、名門大学への進学競争は激しくなっている。「高考」は受験生一人が望むことだけでなく、家庭も巻き込まれ、学校の先生の評価にもつながる。

2023年よりも62万人多い1353万人に達する、その中には413万人もの浪人生も含まれる。(ネットイース(網易)のアカウント「広東教育「TV」より抜粋)

その一方で、熾烈な就活競争が大卒の価値を低下させている。 多くの大学生にとって「卒業は失業と同じ」であり、中国の若者の失業率が46.5%に達している現状を踏まえると、これは深刻な問題だ。

中共は若者の懸念を一蹴

失業率が上がるなか、習近平の呼びかけに応じ、一部の地方政府は若者に地方での就職を勧めている。 習近平は昨年12月、都市部の若者に地方で仕事を探すよう促した。

公式メディアは一連の記事を掲載し、若者が仕事に「こだわりすぎる」と批判し、プライドを捨てて肉体労働をするよう促した。共産主義青年団は4月に、公式ウェブサイト「微信(ウィーチャット)」に、大学卒業者に学生服を脱ぎ、畑で働くよう促す記事を掲載した。

中国共産党の公式メディアも、会計士の仕事に就けなかった20代の女性がゴミ収集員として働く姿などを掲載し、下級労働者を強く賞賛している。さらに、最近放送された新しいリアリティ番組では、農機具の操作を学び、農民の生活を送るようになった歌手志願者に焦点が当てられている。

多くの若者にとって、このような結果は受け入れがたいものだ。彼らの両親は、低賃金で重労働の農業や製造業の仕事から解放されるために、子供たちが成長するにつれて、多大な犠牲と努力を払ってきた。

雇用だけでなく、中国の急速な高齢化に伴い、これらの若者たちは政府から、以前の世代よりもはるかに大きな負担を強いられてている。昨年は平均2.26人の現役世代が高齢者1人を支えていたが、2042年(現在の高卒者が40歳近くになる年)には、現役世代1.25人で高齢者1人を支えなくてはならなくなると予測されている。

カナダのグローブ・アンド・メール紙によると、中国共産党政府は若者の懸念を軽視しているという。先月、習近平は中国の若者は「苦痛」を味わうべきだと述べ、田舎に行くことを促した。

政治評論家の蔡慎坤氏は、習近平の提案は中国の若者を「侮辱」していると述べた。「なぜ彼は若者に、平和で安定した生活をあきらめて苦しみを追い求めることを望むのか」

シンガポール経営大学のジョン・ドナルドソン准教授も、「学生はブルーカラーの仕事を避けるために大学に行く。 それはサクラではない」と述べた。「良い職業教育、あるいは中等教育だけで十分なのであれば、学生は大学進学という犠牲を払う必要はない」

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!
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