百家評論 多くの日本人が見るべき「気候変動」と「政治的支配」に警鐘を鳴らす映画

「気候変動」は自由と繁栄に対する攻撃 無料公開された映画『Climate: The Movie』 

2024/04/29
更新: 2024/04/29

昨年の夏、グテーレス国連事務総長が「地球は温暖化から沸騰の時代に入った」と宣言し、その立場を弁えない発言に対して、多くの批判が集まった。このように、複雑な「気候」現象が単純化され、すべてを包含するという終末論的な表現が強まっている。

ロシアのウクライナ侵攻から山火事の管理に至るまで、今日の世界が直面している多くの社会的、政治的、生態学的問題が、すぐに気候変動に結び付けられ報道される。複雑な政治的および倫理的課題が非常に狭い枠組みで捉えられると、気候変動を阻止することが現代の最高の政治的課題であるかのように捉えられ、他のすべてがこのひとつの目標に従属することになる。それが理性的な議論を拒む一方で、説得力のある感情的なマスター・ストーリーを形成している。

こうした流れに警鐘を鳴らす新たな映画が3月21日にオンラインで無料公開された。この映画『Climate: The Movie (The Cold Truth)』は、英国の映画製作者であるマーティン・ダーキン氏が脚本と監督を務めたもので、2007 年の優れたドキュメンタリー『The Great Global Warming Swindle(地球温暖化の大いなるペテン)』の続編である。

この映画は、グレタ・トゥーンベリさんの有名な発言、
‘People are dying and entire eco systems are collapsing and we are in the beginning of a mass extinction and all you can talk about is money and fairy tales of eternal economic growth – how dare you ! (人々は死に生態系全体が崩壊、大量絶滅が始まろうとしているのに、金の話と永遠の経済成長というおとぎ話しかできないとは!)で始まっている。

この映画は、最初のパートで気候変動の歴史、気温と二酸化炭素の科学と変遷、太陽や宇宙線、雲、極端な気象科学を説明している。後半では、気候変動に関するコンセンサスについて、その背景にある政治的かつ社会的な事情、それが人々の自由や行動にどのような影響を与えているのかを説明している。

この映画には、Epoch Timesでもしばしば取り上げられた著名な気候科学者や物理学者が登場し、気候変動に対する独自の見解を述べている。先生方の名前を挙げると、ウィル・ハッパー教授(プリンストン大学物理学)、ディック・リンゼン教授(元ハーバード大学/ MIT気象学)、ジョン・クラウザー博士(2022年ノーベル物理学賞受賞者)、スティーブン・クーニン教授(『Unsettled』の著者、CALTECH元学長兼副学長)、ウィリー・スーン教授(元ハーバード大学、宇宙物理学)など。

この映画では、メディアが枕詞のように言う「温暖化による」異常気象、つまりハリケーンや干ばつ、熱波や山火事などの増加について、「根拠がない」と世界の主流の研究や公式データが示していることを明らかにした。

現在、欧米を中心に展開されている「脱炭素ネットゼロ」運動の底流には、「温暖化CO2元凶論」がある。この映画では、その因果関係は真逆であって、気温が原因となってCO2レベルが上昇していることを示し、両者が異常に高く憂慮すべきだという主張に対しては、きっぱりと反対している。それどころか、地球史的にみれば、現在の気温と CO2は異常に低いことを説明している。

つまり、CO2が温暖化の原因なのだから、CO2を標的に削減活動を行えば、温暖化問題は解消するという建付けは問題だと言っているのである。

そういう中で、なぜ「脱炭素やネットゼロ」運動を一斉にやろうとしているのか?

この「Climate: The Movie」の重要な部分は、この運動の動機が科学的な理由とか、単なるビジネスチャンスや金儲けに止まらず、攻撃的な政治・社会的なアジェンダを内包していることを指摘していることだ。 つまり、この運動には、色々な価値観を許容する社会から「コンセンサス」に依拠する社会へ移行させようとするもくろみが感じられる。

では、「コンセンサス」は誰のどういう基準で図っていくのか?

この「脱炭素やネットゼロ」運動は、国連や世界経済フォーラムなどが主導して動かしている。世界の少数のトップ・エリートが、気候変動を恐怖の根源と祭り上げ、世界をひとつのアジェンダで縛りつけ、国境を越えた地球規模の枠組みを造り、基準を設定し、世界に拡散させ従わせようとする、かなり政治的なものだという。

以前より環境保護活動家たちは、地球を破壊しているのは自由市場であり、無責任な行動をする貪欲で無頓着な個人、それに迎合する資本主義企業にも原因があると主張していた。

この映画は、こういう事態を改善するためには、国民や企業に強制する必要があるため、政府が企業を規制する権限を強め、同時に個人の生活や習慣を指導し、再構築する。主に公的資金で運営されている欧米のエリートの間では、政府支出や規制の強化を支持することが、決定的なモラルバッジとなっている。

その結果、造り出されたコンセンサスの下、空想的な社会主義にも似た社会が形成されるようになった。そこでは、気候緊急事態というスローガンの下、正常な行動や社会的コミュニケーション、民主主義といった形態が基本的に排除される。その結果、言動のすべてを管理しようという権威的な検閲主義体制が生まれ、人類の生存に対する潜在的なリスクとなる。

この映画の後半部分では、欧米の少数エリートたちが目の敵にしている「脱化石燃料」に対して、アフリカの悲惨な現状を紹介している。彼らの生活は石炭などの廉価な化石燃料に依存しているため、それなしには料理することも、食べることも、水を飲むことさえ十分にはできず、農業や産業を興したり経済成長したりすることなどできない。

欧米諸国は、そういう経験をして現在の資産をもつようになったにもかかわらず、それをアフリカには、許さないと言うのは身勝手で理不尽な話である。アフリカの人たちは、日々の生活のために、手頃なエネルギー源を望んでいるのだ。

この映画は、結局、欧米の多くの人々にとっても、気候変動主義というものが薄れつつあると説明する。彼らは、愚かな主張の数々が次々と失敗するのを目の当たりにし、自制を要求する持続可能性という政策そのものが、明らかに日常的なニーズとは異なるものだと感じたのである。

そして、以下のようなまとめで終わっている。

「脱炭素やネットゼロ」運動は、私たちの自由と繁栄に対する攻撃である。私利私欲と俗物根性に突き動かされ、寄生虫のような公的資金で運営され、金と権力を貪る体制によって推進されてきた。造り上げられた恐怖は、もはや疑念を生む事態になっている。

Climate: The Movie (日本語字幕)  スクリーンショット:クリンテル財団Youtubeチャンネル

この映画の最新情報については、@ClimateTheMovie と @ClintelOrg から入手されたし。

【Clintel】クリンテルは、気候変動と気候政策について人々に情報を提供する独立財団、地球物理学のグウス・ベルクハウト名誉教授と科学ジャーナリストのマルセル・クロク氏によって2019年に設立された。https://clintel.org/

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
技術士事務所代表、大阪大学大学院修了、化学工学修士、千代田化工建設に入社、MIT留学。環境やエネルギー設備の技術開発、技術協力に携わる。AMJなどでリスクマネジメント担当、2009年以降は石炭ガス化、水素、炭素関連の内外調査を行う。技術士(環境)。共著に『PRTR推進実務マニュアル』(通産資料調査会発行,2001年)、論文に『地球温暖化と我が国におけるカーボンリサイクルの動き』(月間『技術士』2020年)等。