なぜ日本に広がるSDGs… 歌うたう子供「毛沢東の革命ソングのよう」専門家は危惧

2024/10/24
更新: 2024/10/25

2024年5月4日に掲載した記事を再掲載

「今の日本の環境教育は、ただCO2を減らせと子供たちに叫ばせるだけの洗脳だ」。SDGsや環境保護が声高に叫ばれるなか、エネルギー政策の専門家である杉山大志氏は現在の環境教育に手厳しい評価を下した。共産主義者のレーニンが唱えた革命理論に触れ、将来を担う世代の判断力低下を懸念した。

日本ではSDGsへの関心が異常に高い。しかし、「SDGsを推進しているのは、先進国の中でも真面目に日本だけだ」と杉山氏は指摘する。日本企業は当初、SDGsにはCO2削減だけではなく、「貧困をなくす」「安全な水を提供する」といった良心的な項目が盛り込まれていることから、好意的だったという。「日本人の真面目さからくる共感だろう」と杉山氏は分析する。

ところが、いつの間にかCO2排出ゼロへの偏重が鮮明になった。「CO2ばかりに執着したら、SDGsの17の目標のうち16は達成できない。国の経済が崩壊すれば、水も医療も失われる」と杉山氏は危惧する。「SDGsを全部達成するためには、CO2をゼロにしなければならないというめちゃくちゃなことを教え込んでいる」と嘆く。

杉山氏は「SDGsの本質は脱炭素の強制であり、CO2以外の目標は免罪符のようなもの」と指摘する。原発事故後の風潮に乗じ、反原発運動から脱炭素シフトへと軸足を移した環境活動家たちの思想が一部反映されているのではないかと警鐘を鳴らした。

「SDGsの歌」を歌わされる子供たちの姿は、「毛沢東時代に革命の歌を歌わされた子供たちと変わらない」と杉山氏は警鐘を鳴らす。本来、環境教育とはデータを分析し因果関係を見抜く力を養うものでなくてはならない、というのだ。

杉山氏はかねてから、欧米や日本の環境活動家らが「最上級の言葉を使って、中国の環境対策を称賛」してきたことに着目し、環境活動家らが中国共産党の「使える愚か者(Useful Idiots)」になっているのではないかと指摘してきた。「子供たちには、自分でデータを見て理解する能力をつけさせるべきだ」とし、「気候変動もエネルギーのあり方も、小中学生の計算能力で十分合理性を判断できる」と杉山氏は強調した。

環境教育の歪みは、日本の教育界の左傾傾向とも無関係ではないという。「日本の教育機関は元々左寄りの人が多い。彼らは資本主義へのアンチテーゼとしての環境問題が大好きだ」と杉山氏は指摘する。彼らにとって、環境問題は「左翼思想の受け皿」なのかもしれない。

杉山氏は、日本のエネルギー政策が直面する危機の打開策として、「エネルギードミナンス計画」を提唱している。ここには、再エネ賦課金の廃止や、拙速な太陽光発電の大量導入やEV推進の停止、原子力を最大限活用などを盛り込んでいる。

「今の日本のエネルギー政策は、CO2さえ減ればそれでいいという単純な発想だ。しかし、このままでは産業空洞化が進み、電気料金が上がり、日本経済は崩壊しかねない」と警鐘を鳴らす。

「日本から自由と民主主義が失われることを私は一番心配している」と杉山氏。エネルギーの安定供給と経済成長を両立させ、強く豊かな日本を取り戻すことこそが急務だと語った。そのためには、CO2排出削減に偏重するのではなく、原子力や化石燃料を有効活用し、エネルギーの安全保障を高めることが不可欠だと訴えた。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。