米財務省は5月3日、消費者向け電気自動車(EV)税額控除に関する規則を最終決定した。中国産鉱物を使用するより多くの自動車メーカーが税額控除を申請できるようにした。
この税額控除は、2022年インフレ抑制法に基づいて成立したもので、2030年までに新車販売の半分をEVにするというバイデン政権の気候変動対策の手段のひとつである。
インフレ抑制法は米国のEV製造を強化することを目的としており、中国、ロシア、イラン、北朝鮮で製造または供給される車両による消費税控除へのアクセスを制限していた。
草案と比較して、最終ガイダンスはこれらの制限をさらに緩和し、より多くの中国製部品を使用した自動車が税額控除の対象となる。
また、グラファイトを電池用鉱物として追加し、2年間の猶予期間を設け、その間は中国から調達した電池用鉱物を使用する自動車は税制優遇を受けられるようにした。
2025年と2026年の猶予期間は、サプライチェーンが複雑なため出所の追跡が困難なバッテリー材料向けに設計されている。2年間の免除を受けるには、自動車メーカーは2027年までに中国からの調達を止める計画の概要を説明する必要がある。
米国地質調査所(United States Geological Survey)によると、EV用バッテリーの主要材料である黒鉛の世界生産の4分の3以上を中国が占めている。
エネルギー省副長官であるデイビッド・ターク氏は記者会見で、「この最終規則は、エネルギーとサプライチェーンの安全保障を強化するものだ」と述べた。さらに、この規則によって「エネルギー産業は、価値観を共有していない外国の企業などに依存するリスクの高い供給網から、エネルギー業界が脱却しやすくなる」と付け加えた。
民主党のジョー・マンチン上院議員は、インフレ抑制法の成立に不可欠な票を投じた人物である。同氏はバイデン政権の最終規則を「言語道断」「事実上中国製を支持している」と批判した。
以前から適用除外案に反対していたマンチン氏は、最終的な規制緩和は中国(共産党)やその他の外国の敵対勢力に「長期的な道筋を提供する」ものであり、「我々のサプライチェーンに残る」ものだと考えた。
バイデン政権は、この規則が「急速に成長するEV市場に明確性と確実性を提供する」と称賛した。
国際気候政策の大統領上級顧問ジョン・ポデスタ氏は財務省の報道発表で「私たちの進むべき道ははっきりしている。もっと多くのアメリカ人がEVやプラグインハイブリッド車を運転し、それらが手頃な価格でアメリカ国内で製造される未来だ」と語った。
草案と同様に、最終規則では、EVを購入するとき現金キャッシュバックや販売時の返金として、税額控除を提供することが可能だ。消費者は税金を申告するまで待つ必要がなく、すぐに税額控除を受け取ることができる。
財務省のデータによると、今年に入ってから10万台を超えるEVの購入が税額控除を享受し、その総額は7億ドル以上(約1千百億円)に上った。
自動車メーカーの業界団体である自動車革新同盟は、「EVバッテリーに使われる重要な鉱物の調達源について、一時的な柔軟性を認める」として最終規則を評価している。これにより、国内のEV製造業が成長するための時間が確保されるとしている。
一方で、全国鉱業協会は、規制緩和について異なる立場を取っている。
同協会は、最終規則が「インフレ抑制法にはない猶予期間や例外を設けており、それが事実上、アメリカの納税者の財産を中国に渡すことになる」と指摘している。
最終規則は2か月後に施行される予定。
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