オースティン国防長官、イスラエルへの一部兵器供給の遅れを確認

2024/05/13
更新: 2024/05/13

 

バイデン政権は、イスラエルへの一部の軍需品の納入を遅らせている。ロイド・オースティン米国防長官は5月8日、上院歳出委員会の公聴会で、イスラエルによるガザ南部ラファ包囲の可能性を考慮し、国防総省がイスラエルへの武器輸送計画を一部見直していると発言した。

オースティン氏は、関連する輸送を完全に停止する決定は、下していないと明言した。「ラファの情勢の進展を踏まえ、最近の安全保障支援物資の一部を見直している」と述べ、「評価中で、最終決定はしていない。慎重に検討していることがいくつかある」と発言した。

ラファには現在、約150万人が住んでおり、そのほとんどは、最初のイスラエル軍の攻撃によって北部の家を追われた人々である。 バイデン政権は、この地域で大規模なイスラエル軍の作戦が実施されれば、何万人もの民間人が犠牲になると懸念している。

それゆえに、オースティン氏は週明けにイスラエルの国防大臣ガラント氏と会談し、イスラエルにガザの戦地から軍民を後退させ、包囲された土地に人道援助をさらに送り込むことをアメリカ政府は望んでいると改めて伝えたという。

オースティン氏は5月8日、上院議員に対して、「精密誘導弾」はイスラエルがラファで限定的な作戦を行うのに役立つが、出荷が遅れたのは「重量弾」であるとし、それを適用すれば過大な「巻き添え被害」を引き起こす可能性があると指摘した。

また、オースティン氏は「重要なのは、目の前の任務に適している武器を持つことだ」と強調し、「小口径爆弾は建築物が密集している状況では非常に役に立つが、2千ポンドの爆弾は、巻き添えで多大な損害を引き起こす可能性があるため、それほど役に立たないかもしれない」と発言した。

「繰り返しになるが、我々はまだ(出荷を)止める決断はしていない。 評価中だ」と再び強調した。

ガラント氏は、一部の兵器輸送の遅れは「破滅的」であるとし、人口密集地でのイスラエルの大型爆弾の使用を、第二次世界大戦中にアメリカが日本に対して行った核兵器の使用と比較し、どちらも正当なものだと発言した。

また、ガラント氏は「これは忌まわしい。馬鹿げている。イスラエルに必要なものを与え、絶対に負けられない戦争を戦わせるべきだ」と述べた。

イスラエルによるガザでの戦争は、ハマスのテロリストによる1200人以上を殺害した攻撃(2023年10月7日)から7か月目に突入した。地元の保健当局やイスラエル軍の発表によると、イスラエルの侵攻によってパレスチナ人約3万3千人が死亡した。

イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、イスラエルが「ガザ地区全域を占領する」ことを意図しており、ハマスの排除という目標が達成されたと確信しない限り、同地区のいかなる復興も許可しないと表明した。

米国はイスラエルにとって最大の同盟国であり、主要な武器供給国だ。しかしながら、バイデン政権は、人道支援要員やジャーナリスト、民間人の殺害を含むイスラエルのガザでの行動に対する明白な支持を巡り、全国的な抗議の波に直面している。

オースティン氏は、ガザにおけるイスラエルの現在の戦略が、たださらなるテロリストを生み出すだけであると述べ、これは20年にわたる中東での戦争におけるアメリカの苦い経験から得られた教訓であると指摘した。

オースティン氏は、「ハマスとパレスチナ人は同一ではない。私たちが学び取ったのは、国民を守り、戦場の民間人を守ることが重要であり、それがなければテロリストが増えてしまうのだ」と述べた。「民間人の保護は道義的な責任だけでなく、戦略的な責任でもある。この2つは互いに排他的なものではない。両方を同時に行うことは可能なのだ」と追加した。

爆弾の実用性を評価する必要があり、一部の爆弾の輸送が一時的に延期されているが、オースティン氏は、過去最大の安全保障補強法案が先月署名され、160億ドル(約2兆4938億円)以上の戦争援助がイスラエルに提供されることになると指摘した。

オースティン氏は、米国の「イスラエルへのコミットメントが強い」と述べ、また「ハマスには敗北させねばならないが、その戦略はより市民の命を守るものでなければならない」と語った。

「10月7日以来、われわれはシリアに数十億ドル相当の安全保障援助を提供し続けている」とオースティン氏は語った。

「私たちは、戦場の民間人を保護するために、イスラエルがより多くのことを行うべきであり、地上での戦闘作戦を行う前に、民間人を戦場から避難させる計画を確認したい」と明確に述べた。

同様に、米国務省のマシュー・ミラー報道官は、これ以上の犠牲者を出さないために、最近の援助物資の輸送を「いくつか中断」し、「他の援助も見直している」と述べた。

「ラファでの軍事行動の可能性を深く懸念している。 このような狭い地域に多くの人々が詰め込まれている事実を考慮すると、また、過去のイスラエルの軍事行動が民間人に与えた影響を考慮すると、私たちはこれが現地の民間人に与える影響を懸念している」と述べた。

しかし、委員会の共和党議員の多くは、特定の兵器に関する政権の見直しに失望していた。スーザン・コリンズ上院議員(共和党、メイン州選出)は、5月8日の公聴会でオースティン氏に対し、武器供与の遅延はイスラエルへの支援不足に相当すると述べた。

彼女は、「ほとんどの議員はこの決定に異議を唱えるでしょう」と述べた。

 

エポックタイムズ特派員。専門は安全保障と軍事。ノリッジ大学で軍事史の修士号を取得。
関連特集: 中東・アフリカ