中国本土における人権侵害問題に20年以上にわたり取り組んできた中津川博郷(ひろさと)元衆院議員。法輪功学習者に対する迫害や臓器狩り、ウイグル人への抑圧など、中国共産党の人権侵害を見過ごせないと訴え続けてきた。選挙の得票には結びつきにくいとされる海外の人権問題にも関わり続け、自らを「変なおじさん」と自嘲しつつも、普遍的価値を守るため取り組む覚悟をみせる。一人の政治家、一人の日本人としての強い使命感を聞いた。
――長年にわたり、中国の人権問題に取り組んできた信念とは。
2002年、当時国会議員だった私は議員会館前で法輪功学習者の訴えを聞いた。当時、中国で不当に拘束された金子容子さんを救出するため、学習者たちはビラを配っていた。ほとんどの議員が関心を示さない中、私は事態の深刻さを感じ、調査を始めた。
日本人男性の妻である金子容子さんは2002年5月、中国東北部の瀋陽を訪れた際、法輪功を修煉していることを理由に拘束された。日本当局や議会の働きにより、翌年11月に解放され、帰国した。しかし、拘束中に受けた拷問や虐待により視力を失った。
この事件を契機に、法輪功迫害について知ることとなった。3年後、中国共産党による臓器狩り問題が公にされると、私も取り組んだ。調査団のデービッド・マタス弁護士やデービッド・キルガー元アジア太平洋担当相の訪日時には議論を交わした。両氏のノーベル平和賞候補を友人として誇りに思う。
――法輪功学習者の置かれた状況を知って、具体的にどのような活動を行なったか。
彼らが臓器を強制的に摘出されるなど、非人道的な扱いを受けているという事実を知り、衝撃を受けた。「嘘だろう」と思いながらも、中国で起きている残虐行為の数々を目の当たりにして見過ごせなくなった。
拘束された人々から強引に臓器を取り出し、それを欲しがる日本人に提供するなんて信じられないことだ。しかし、次々と証拠が提示されると、この問題は確かであることがはっきりした。
――中国など海外への臓器移植あっせんを行ったとしてNPO法人理事が逮捕、起訴された。昨年、厚生労働省は中国への渡航移植を受け、日本で治療中の患者は175人だと発表した。
実際はもっと多いのではないか。患者を受け入れる病院側も臓器狩り問題をどうとられているのか。臓器狩りをめぐっては、日本も医療技術協力や中国人医師への指導などで関わりがある。日本の医療界も全く関係ないとは言えない。
中国への配慮から人権無視
――日本の政治家が法輪功問題を見て見ぬふりする理由とは。
多くの政治家は中国(共産党)への配慮からこの問題に背を向けている。利権や外交関係を優先し、人権という普遍的価値を軽んじる姿勢には、危機感を抱かざるを得ない。
自民党ではこの問題に取り組むことはできない。では他の政党ならいいのかと言えば、これも難しい。個人の政治的信条、志と良心と勇気を持つ人しか取り組めない問題なのだ。
――近年、中国共産党は迫害の対象を法輪功学習者以外にも広げている。
民族や宗教に対する抑圧は、やがて自由と民主主義の危機につながる。日本が真の意味で人権先進国であるためには、こうした問題に毅然とした態度で臨まなくてはならない。
法輪功学習者だけではなく、今日ではウイグル人も被害者になっている。日本は必ず臓器狩りを阻止しなければならない。
――問題解決のためには必要な取り組みとは。
利害関係に囚われず、信念を貫く勇気がある政治家を増やすことだ。「変わり者」と言われようと、人権という人類普遍の価値を守るために立ち上がる政治家が求められている。私も微力ながら、声を上げ続ける決意だ。
命をかけても日本を守る、人権と自由と民主主義を守る勇気を持った政治家が誕生しないとダメだ。
――外国人土地問題やスパイ防止法についても積極的に発言している。
中国資本による土地買収は安全保障上の脅威であり、規制が必要だ。今、外国人がどんどん日本の物件を買っている。法律を作って対処すべきだ。
スパイ防止法がないため、北朝鮮による拉致問題や中国の臓器狩り問題の解決が遅れている。スパイ防止法があれば、拉致問題もここまでひどくなることはなかった。臓器狩り問題もスパイ防止法で対処することが可能ではないか。こうした法整備が急務だ。
――読者へのメッセージをお願いしたい。
中国人権問題は票につながらないかもしれない。議員や友人からは、外国の問題だから「何をやっているのか」と言われたこともある。確かに、自分は「変なおじさん」かもしれない。しかし、臓器狩りは見過ごすことのできない人道犯罪だ。正義感を持った政治家が当選しないと、解決に至らない問題だ。このような大きな問題に取り組むことこそ、政治家の使命だと信じている。
(了)
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