ヒトの精巣からマイクロプラスチック検出…生殖機能への影響懸念=米研究

2024/05/21
更新: 2024/05/21

米国ニューメキシコ大学の研究チームは、人間23例と犬47例の精巣組織を分析し、全てのサンプルから12種類のマイクロプラスチックを検出したと発表した。検出されたマイクロプラスチックの中で、ヒトの精巣から最も多く確認されたのが、レジ袋やペットボトルに使用されているポリエチレン(PE)だという。

ユー教授は、既存研究の重金属、農薬、内分泌かく乱化学物質が近年の精子数と質の低下に関与していると指摘のほか、マイクロプラスチックの影響も検討する必要性を感じたという。

プラスチックと精子数の減少との関連性を分析した研究チームは、ニューメキシコ州の検視局から匿名の人間の組織を、同州アルバカーキ市の動物保護施設と避妊・去勢手術を行う動物病院から犬の組織を入手。化学処理で脂肪とタンパク質を溶解し、超遠心分離機で処理することで、プラスチックを取り出した。これを600℃に加熱し、質量分析計で各種プラスチックの燃焼ガスを分析した。

その結果、細胞1グラムあたりのマイクロプラスチックの平均的な量は人間で329.44マイクログラム(100万分の1グラム)、犬で122.63マイクログラムだった。

人間と犬の両方で最も多く検出されたポリマーはポリエチレン(PE)で、レジ袋やペットボトルに使用されている。犬ではポリ塩化ビニル(PVC)が2番目に多く、建材、配管、電線被覆、玩具、医療用具など様々な用途で使われている。

犬のサンプルでは精子数の計測が可能で、PVC濃度が高いほど精子数が少ないことが分かった。一方、PEには相関が見られなかった。

ユー教授は「プラスチックの種類によって潜在的な機能との相関関係が異なる。PVCは精子形成を阻害し、内分泌かく乱物質を放出する可能性がある」と説明する。人間との比較に犬を選んだ理由として、共通の環境で生活し、生物学的特性にも類似点があることを挙げた。

マイクロプラスチックは紫外線による劣化や埋立地からの飛散によって生じ、大気中や水系に広がっている。一部は非常に小さくナノメートル(10億分の1メートル)単位で、環境中に遍在している。

検体提供者の平均年齢は35歳で、数十年前からプラスチックに曝露されてきたが、現在はさらに使用量が増加しているため、若年層への影響が懸念されるという。

今回の発見は、マイクロプラスチックが精巣での精子生成にどのように影響するかを理解するための追加研究の必要性を示している。ユー教授は「不明な点が多い。マイクロプラスチックが生殖機能低下の一因となっている可能性について、長期的な影響を真剣に見極める必要がある」と述べた。

その上で、人々にパニックを引き起こすつもりはないと強調する。「科学的にデータを提供し、多くのマイクロプラスチックが存在することを認識してもらいたい。暴露を避け、ライフスタイルや行動を変えることで、私たち自身が選択できる」と訴えた。

この研究は科学誌「トキシコロジカル・サイエンシズ」に15日掲載された。

大紀元日本 STAFF