<全文>女優スカーレット・ヨハンソンさん、AI音声酷似でChatGPT法的措置示唆 公開は停止

2024/05/23
更新: 2024/05/23

女優のスカーレット・ヨハンソンさんは、ChatGPTなどAIテックで知られる「OpenAI」に対し、自身の声を無断で模倣されたとして法的措置を示唆している。意見を受けて、OpenAIは22日までに、当該のAIシステム用の音声「Sky」の公開を中止した。AIを活用した著作権侵害や個人データの不正利用をめぐり、俳優とテック企業の対立が深まっている。

OpenAIは今月、最新機能を備えた「ChatGPT-4o」を発表。その合成音声「Sky」がヨハンソンさんに酷似しているとの指摘が利用者が相次いだ。20日までに、ヨハンソンさんは弁護士を通じてOpenAIに2通の書簡を送付。音声の作成プロセスの詳細開示を求めるとともに、デモ公開後に起こりうる法的請求について警告した。

ヨハンソンさんは声明のなかで、実際の声を聞き「デモを聞いて、私は非常にショックを受け、憤りを覚えた」と怒りをあらわにした。

ヨハンソンさんによれば、実際にOpenAIから声の提供を依頼されたが断った。にもかかわらず、同社CEOのサム・アルトマン氏は酷似した音声の作成を進めたと主張。リリースされたデモを聞いて「友人もメディアも見分けがつかないほど不気味に似ていた」とショックを受けたと語った。

OpenAIは指摘を受けて当該の合成音声サービスの公開を停止したが、弁護士側はひきつづき訴訟を起こす可能性を示唆している。

担当法律事務所は23日までに、米メディアに対して、ヨハンソンさんが「本当に困っている」と代弁。過去にもセレブの実際の声に似せた声を無断で広告などに使われた例で勝訴した例があると述べている。

21日までに公開されたヨハンソンさん側の声明は次の通り。

「昨年9月、OpenAIのサム・アルトマンCEOから、ChatGPT 4.0の音声を担当してほしいとオファーを受けました。テック企業とクリエイターの溝を埋め、AIと人間の関係の劇的な変化を人々が安心して受け入れられるようにするため、私の声が役立つはずだと彼は語りました。

しかし私は熟慮の末、個人的な理由からオファーを辞退しました。それから9か月後、『Sky』という新システムの音声が私にそっくりだと、友人や家族、一般の人々から指摘されました。公開されたデモを聞いて、私は非常にショックを受け、怒りを覚えました。親しい友人もメディアも見分けがつかないほど不気味に私に似た声を、アルトマン氏が追求したことに信じられない思いでした。

アルトマン氏は『her』とだけツイートし、私がAIアシスタント役を演じた映画に言及することで、わざと類似性を出したことを仄めかしていました。ChatGPT 4.0の発表2日前、アルトマン氏は私の代理人に連絡し、再考を求めてきました。しかし私が返事をする前に、システムは公開されてしまったのです。

私はこうした彼らの行動に法的措置を取ることを余儀なくされ、弁護士を通じてアルトマン氏とOpenAIに2通の書簡を送りました。彼らの行為を指摘し、『Sky』の音声をどのように作ったのか詳細な説明を求め公開をやめるよう求めました。

私たちがディープフェイクと闘い、自らの肖像や作品、アイデンティティの保護に努めているいま、こうした問題には絶対的な透明性が求められると私は考えています。企業の透明性の確保と、個人の権利を守るための適切な法整備によって、この問題が解決されることを期待しています」

いっぽうOpenAIは、スカーレットさんの声の模倣であるとの指摘を否定。ChatGPTの5つの音声は、400人以上の声優のオーディションを5か月かけて選定。キャスティング・ディレクターと連携し、多様性や信頼感、魅力などの基準を設けて生成されたという。

米国の俳優組合SAG-AFTRAは、ヨハンソンさんの意見を支持する声明を発表している。組合は、俳優の肖を無断で利用し報酬も支払わないAIサービスが急増していることから、連邦レベルでの権利保護の法律制定を訴えている。

ヨハンソンさん本人の同意なく酷似した音声を作成したOpenAIは、カリフォルニア州などの「パブリシティ権」法に抵触する恐れがある。この法律は、個人の特徴的な要素を無断で商業利用されないよう保護するもので、声も含まれる。

大紀元日本 STAFF