社会問題 4億人の人口減少はどうして? 天意なのか?

中国人口危機が深刻化、各地で「人材獲得競争」が加速

2024/05/23
更新: 2024/05/23

中国では、人口減少の問題がさらに深刻化しており、各地で新しい住民を呼び込むための様々な策が講じられている。例えば、多くの大都市では、個人がその地域でアパートを借りて住むだけで、その人とその家族が住民登録をすることができるようになっている。しかし、専門家は、中国共産党のこのような施策が問題の本質的な解決にはならず、かえって中小都市の人口減少を加速させる可能性があると警鐘を鳴らしている。

5月13日、遼寧省の省都瀋陽市は「外来人口の住民登録促進新政策」を発表した。この政策には10の新措置が含まれ、ポイント制の住民登録枠組みを廃止し、学歴に基づく住民登録対象を拡大している。さらに、家族の定義を直系親族だけでなく、祖父母、娘婿、息子の妻、兄弟姉妹、孫にまで広げ、多くの親族が住民登録を行えるようになっている。

瀋陽市の新政策により、働く人々、学生、退役軍人及びその家族も住民登録が可能になった。賃貸住宅に住む人々も、自分と家族の住民登録ができるようになった。瀋陽市は、人材の有無にかかわらず新住民を歓迎している。

しかし、人口問題は中国全土で共通の課題であり、他の都市も人口増加を促す様々な政策を実施している。これらの取り組みは、各地が人材を争っているかのようである。

昨年12月、湖北省武漢市は住宅購入を条件とする住民登録要件を撤廃した。

昨年11月、江蘇省南京市では賃貸住宅を住民登録ポイント制度に含める提案が検討された。蘇州市では、公営住宅や賃貸住宅に住むことで住民登録が可能となり、住宅がなくても移住できる方針が検討されている。浙江省寧波市では、3年間の居住で住民登録が可能な制度が始まっている。山東省青島市では、賃貸住宅を借りることで、本人とその近親者が住民登録できると発表された。

昨年7月、広東省広州市は7つの地区で住民登録政策の緩和を検討していたことが報じられた。また、昨年1月、河南省鄭州市は賃貸住宅を借りた個人の家族全員が住民登録できる新制度を導入した。

これらの措置は、中国共産党が政権を握って以来厳格に運用されてきた戸籍制度による人口の流動制限を、実質的に廃止するものである。

住民登録政策を活用して外部からの人口を呼び込むことに加え、各都市ではさまざまな施策が実施されている。

2024年には、山東省、安徽省、内蒙古の公務員試験が前倒しで行われる予定である。

人材を引きつける取り組みは、以前は卒業シーズンに集中していたが、現在は年間を通じて都市の重要な活動となっている。

中国では、共産党政府が2021年に「三人っ子政策」を導入して以来、各地で子どもを持つことを奨励する政策が次々と導入されている。

中国共産党、戸籍制度の廃止に追い込まれる

1950年、中国共産党は政権を掌握した翌年に厳格な戸籍制度を導入した。この制度は「農業戸口」と「非農業戸口」に人口を分類し、農民と都市住民を区別した。この分類は一生変更不可能で、子孫にも受け継がれ、国民の自由な移動を大幅に制限した。

この制度は、1954年に制定された憲法で保証された「移動と居住の自由」を事実上無効にした。

「農業戸口」に分類された人々は、農業労働者(農民) から工場労働者(工人)への転職が非常に困難であった。都市戸口を持つ人々も自由に移動できず、小規模な都市から北京や上海への移住もほぼ不可能であった。

「農民」と「都市住民」というカテゴリーは、実質的な階級差を生み出している。都市の戸籍を持つ人々は、社会保障、教育、医療、就職の面で優遇され、経済的、社会的にも高い地位を占めることが多い。

中国共産党は戸籍制度の廃止に抵抗しているが、経済成長と人口減少を背景に、戸籍制度の運用が徐々に柔軟になっている。

東北三省の中で、吉林省は2021年12月に全都市で住民登録の制限を撤廃し、東北地方で初めて「ノーゲート」の住民登録制度を導入した。黒竜江省も2023年6月には、全市区(町)で住民登録の制限を撤廃し、省都ハルビンの主要な4区も人口制限の方針を「ノーゲート」に変更した。遼寧省も現在、同様の措置を進めている。

中国公安部のデータによると、2022年には約1億4千万人の農村戸籍の人々が都市への住民登録を行った。その年、市区常住人口が300万人以下の都市では、住民登録の制限が全面的に解除された。一方、市区常住人口が300万人を超える都市は中国に27都市しかなく、そのほとんどが直轄市や省都であることが分かっている。

中国の公安部は、今年1月の報道によれば、東部の一部の超大都市と中西部の一部の省都を除く他の都市で、住民登録の制限を撤廃するか、または緩和する措置を取っていると発表した。

中国共産党、人口危機の実態を隠蔽

4月に政府が公表した2023年の人口統計データによると、中国の85%以上の省で自然増加率がマイナスとなっている。特に、遼寧省と吉林省ではマイナスの増加率が千分の五を超え、中国全土で最も高い数値である。黒竜江省の人口データはまだ公開されていない。

東北三省の人口は昨年も減少し、一昨年のデータによると、過去10年で1101万人が減少し、10%以上の減少が確認された。

中国共産党が統計データを改ざんし、実際の人口減少を隠しているため、この問題を外部から正確に理解するのは困難である。

独立系コラムニスト諸葛明陽氏は、大紀元紙に寄稿した分析で、「中国国家統計局が今年1月に発表したデータによると、2023年末の中国の人口は約14億1千万人です。しかし、2019年にはすでに中国の人口が14億人を超えていると公式に発表されています。人口が減少しているにもかかわらず、総人口が変わらないのはなぜでしょうか? 顕著な人口不足がない場合、なぜ各地でこれまでにない激しい人材争奪戦が行われているのでしょうか? 答えは一つです。それは、過去3年間のパンデミックが多くの命を奪ったからです」

中国共産党は、パンデミックによる死者数を隠蔽し、証拠を消去する努力をしている。

民政部は通常、前四半期の結婚、離婚、火葬された遺体のデータを3か月以内に公表しているが、2022年第4四半期のデータは2023年6月まで公開されず、火葬のデータは含まれていなかった。その後の報告でも、火葬データは提供されていない。

スマートフォンの「健康コード」を利用することで、中国の実際の人口統計が明らかになる可能性がある。パンデミック中のロックダウンでは、移動に健康コードが必須で、全員が使用することが求められていた。これには高齢者や子どもも含まれ、家族が代理で申請することが一般的であった。しかし、パンデミックの規制緩和後、健康コードの必要性はなくなり、医療機関には関連データの削除が指示されていた。

法輪功創設者の李洪志氏は昨年1月、中国共産党がパンデミックを3年以上隠していたと指摘し、中国では既に4億人が死亡し、流行が収束するまでには合計5億人が亡くなると予測している。

上海公安局のデータベースからの情報漏洩により、2022年半ばの中国の人口が約10億人であることが示されている。この事件は2022年7月に発生し、データベースには約9.7億件の個人情報が含まれていたとされている。専門家たちは、これが中国の総人口数を示していると考えている。

また、「食塩データの漏洩が示す中国人口の大幅減少」と題された8千字の論文が大紀元に掲載されており、中国人の年間食塩消費量を基にした分析から、2015年から2022年にかけての中国の実際の人口が公式発表された数値よりも平均で約30.79%減少していると推測されている。

諸葛明陽氏は以下の通り述べている。「多くの人々が李洪志氏の発言に疑念を抱いているかもしれませんが、中国共産党はそれを信じているようです。共産党は外部からの真実の暴露を一律に「噂」として退けがちですが、『九評共産党』発表後の沈黙と同じく、今回も李氏の主張を否定していません。これは、共産党が事実を知りながら、公表できない状況にあることを示しています。否定すれば、人々の関心を引き、さらなる追及を招くため、共産党は不利な立場に立たされるでしょう」

死亡者の増加と併せて、出生率が歴史的低水準を更新し続け、高齢化が進行していることも、中国共産党が直面する大きな課題である。中国民政部が昨年10月に発表したデータによると、2022年末の60歳以上の高齢者人口は2億8千万人で、全人口の約19.8%を占めている。

中国中央財政経済大学の昨年12月の報告によると、中国の労働年齢層の平均年齢は1985年の32.25歳から2021年には39.42歳に上昇し、中国の人口による経済的利益は終わりを迎えたとされている。

分析:「人材獲得競争」の効果には限界がある

中国共産党の政策が経済危機を救済できるかどうかについて、元北京の弁護士である賴建平氏は、これらの政策では経済を立て直すことはできず、むしろ中小規模の都市の衰退を招いていると指摘している。

賴氏は大紀元紙に対して、中国経済の急速な減速の主な原因は政治的な問題にあると述べ、後退する独裁政治が国内外の政策に大きな影響を与え、外国企業や民間セクターに不安を与えており、それが国際的な産業の移転、対外貿易の減少、国内投資の後退、不動産市場の縮小、消費の停滞、高い失業率を引き起こし、結果として経済全体にデフレーションをもたらしていると指摘している。

賴氏は、現在の状況では過度な都市化は進まず、逆に多くの人々が都市から田舎へ戻る傾向にあると指摘している。人口減少と経済停滞により、投資用不動産や銀行資産が市場に溢れ、不動産市場は供給過多である。そのため、どんな政策を導入しても、大量の実需を生み出すのは困難で、不動産市場の低迷を根本から変えることは不可能であると述べている。

また、彼は住民登録制度の廃止を含む様々な政策が、最終的にはいくつかの構造的変化をもたらすだけで、例えば、ある地域から別の地域への住宅売買や、中小都市から大都市への人口移動は、実質的には都市間の人口のやり取りであり、ゼロサムゲーム*である。このような政策は中国経済の立て直しにはつながらず、一時的な解決策にすぎず、結果として中小都市の過疎化を進めることになるであろう。

*「ゼロサムゲーム」とはゲーム理論のひとつで、参加者全員の合計得点が常にゼロとなる得点方式のゲームやその状況のこと。ゼロサムゲームでは一方が得点すると他方が失点することで、全体の持ち点の和は必ずゼロになる。

易凡
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