資金難で当局が30年前の税金を追徴、民間企業が困窮

2024/06/20
更新: 2024/06/20

中国の不動産市場が縮小傾向にあり、経済回復も難しい状況の中、地方政府は財政的な困難に瀕しており、別の資金源を模索している。

最近、いくつかの企業が税金の追徴を命じられているとの報道がある。地方政府は、企業に対して数十年前の未払い税金を求め、「30年遡っての調査」を実施している。専門家たちは、このような税金の追徴が民間企業に、深刻な影響を及ぼし、企業の倒産に繋がる恐れがあると、警鐘を鳴らしている。

中国国内では、最近になっていくつかの企業が、税金の追徴を命じられる事態が起きており、「30年遡っての調査」が行われている。一部の上場企業は、税金追徴の通知を公表し、これが業績に悪影響を及ぼす可能性があると予測されている。

地方税務局の職員である李さんは、「年数が経つほど、追徴税金の額も増える。現在、税収が不足しており、短期間での納税だけでは足りない状況である。税務局は企業について詳しく把握しており、過去にさかのぼって調査すればするほど、見落とされていた未納税が、多く見つかる可能性がある」と語っている。

中国の老舗企業、維維株式会社は6月13日に発表した。その元子会社である湖北枝江酒業が1994年から2009年までの消費税を期限内に申告していなかったため、8500万元(約18億5千万円)以上の税金の支払いを、命じられたということだ。

寧波博匯化工科技株式会社は、最近生産を停止する予定と発表した。これは、地方税務当局から5億元(約109億円)の税金を追徴されたことが原因だ。その結果、6月14日に博匯株式会社の株価は約20%の大幅な下落を記録した。

米国の経済学者デイビッド・ウォン氏は、「問題の根本は、過大な公共支出と収入の不足にある。特に地方政府の財政赤字が深刻で、罰金の増加、税務調査の強化、各種料金の徴収強化、新たな税収の割り当てなどが経済活動の停滞を示している」と述べている。

報道によると、維維株式会社のみならず、華林証券、博匯、藏格鉱業、北大医薬なども同じような告知を行っているとのことだ。一般的な見方としては、この種の調査が続けられる場合、沢山の企業が、やむを得ず破産を申し立て、新会社を設立すると考えられている。

李さんは次のように語っている。「企業はこのような圧力を受けており、それに応じるしかない。なぜなら、中国の法律体系の下では、解釈の権限が企業にはなく、税務当局の解釈と実施に従うしかないからだ」と。

李さんは、記者に対し、以前に多くの脱税が地方政府の後押しを受けて行われていたと明かした。

李さんはさらに、「税金の徴収には長年の腐敗が根付いている。企業は税の負担が重く、税務局の担当者と良好な関係を維持するために、接待や贈答を行うことがある。しかし、現在、経済が厳しい状況にあり、土地の売買による財政収入の時代も終わりを告げている。これは、地方政府が資金不足に直面し、税務局が企業からの税金徴収を強化するよう圧力をかけていることを意味している」と述べている。

デイビッド・ウォン氏は以下のように指摘している。「企業経営への信頼度、特に国際合弁事業や外国資本との連携において、関係者は一層の懸念を抱いている。これまで法律に則り税金を納めてきたと信じていた中国と外国企業だが、このような事態が常態化すれば、中国の企業界全体にとって大きな打撃となるだろう。市民も自分たちの所得税やその他の税金が、滞納されていないかと心配している。結局、これは経済活動に対しても深刻な影響を及ぼすことになる」

ネットユーザーたちも疑問を呈している。果たしてこれまで続けられてきたのは、脱税なのか、それとも新しく導入された税金なのか? もし繰り返されている脱税が問題なら、その背後にはどのような理由があるのだろうか? 内部の職員が不正に利益を得ているのではないかという疑念もある。単に不足分を補うだけでは問題の解決には至らない。新しく設けられた税金であれば、追徴課税は適切ではないと考える声もある。

デイビッド・ウォン氏によると、「税法の解釈は企業側ではなく、税務当局とその関連部門が法律に基づいて権限を持っているため、企業は自らの行動が税法に完全に準拠しているか、また問題がある場所を把握する手段を持っていない。このため、企業は絶えず大きな不安を抱え、経営者はいつ税金の追徴を受けるかという恐怖に怯えている」と述べた。

李さんは次のように語っている。「企業は税の負担が過重であると感じ、節税を図っているが、実際にはさらなるプレッシャーを感じている。例えば、企業から利益を引き出そうとする貪欲な官僚や、恐喝を行う者もいる。企業はこれに対抗することができず、対抗しようものなら事業の継続が困難になる。そのため、既存の負担に加えて税金を完全に納める必要がある場合、生き残ることは非常に困難だ」と指摘している。

20年にわたり政治経済のトレンドを研究している専門家は、これが土地財政時代後の新しい常態であると述べている。地方財政は資金不足に直面しているが、生活は続けなければならず、土地財政が圧迫されると、多方面に影響が出てくるとのことだ。