2024年版『防衛白書』発表 台中緊張で日本の防衛力強化の必要性強調

2024/07/13
更新: 2024/07/13

米中間の「戦略競争」と称される覇権争いが激化している中、世界の火薬庫とも称される台湾海峡は、常に武力衝突の脅威が存在する場所だ。7月12日に発表された年度版『日本防衛白書』は、中国が台湾周辺での軍事演習を増やしていることについて初めて警告を発している。また、中国とロシアが日本周辺で行っている共同軍事活動について「深刻な懸念」を表明し、北朝鮮の脅威がこれまでになく大きくなっていることも指摘している。

2024年版『防衛白書』は、防衛省がその防衛活動と安全保障上の課題を総括し、台湾周辺の緊張、米中競争の激化、ロシア・北朝鮮の軍事関係の深化などについての立場を概説し、「(中国の)軍事活動の増加により、中国と台湾の間の緊張が高まる可能性を排除できない」と述べている。

台湾の新総統・頼清徳氏が5月に就任した後、台湾周辺で中国が大規模な演習を行ったことが国際社会の懸念を引き起こしている。アメリカの高官は以前、これらの演習が台湾侵攻の準備として重要であると指摘している。今週、台湾は中国が太平洋近海で航空母艦「山東」を用いた「海空連合訓練」について注視している。

日本は台湾での紛争が自国領土にも波及することを懸念している。中山泰秀元防衛副大臣はエポックタイムズの取材で、故・安倍晋三元首相が「台湾有事は日本有事」と指摘したことについて、日本が消費するエネルギーや食糧資源の多くが台湾周辺海域を通って運ばれているため、そのルートが中共軍に封鎖されると、日本のコスト負担が急激に高まる。日本と台湾は一心同体であると述べた。このような状況において、日本と同盟国が連携して防御を強化する必要性が強調されている。

現在、日本はオーストラリアや韓国など、地域内で理念を共有する国々と緊密な防衛関係を築いている。7月8日にはフィリピンと重要な防衛協定を締結し、両国が相互の領土に軍隊を配置することが可能になった。日比両国は米国の長期的な同盟国であり、米国はアジアでの防衛関係を強化し、中国の軍事力と影響力の増大に対抗している。

『防衛白書』はさらに、中国が定期的に艦艇を東シナ海の係争地域に派遣していること、そして台湾周辺の軍事活動が増加し、この地域の新たな常態になる可能性があることを指摘している。また、「国際社会は第二次世界大戦以来最大の試練に直面しており、国家間の競争、特に米中間の競争はさらに激化するだろう」とも述べている。

防衛白書の評価報告はまた、中国が2030年までに核兵器の保有数を2倍にし、1000以上にする計画を強調している。日本が警告を発する前に、今週ワシントンで行われたNATO首脳会議の宣言は、中国がロシアのウクライナ戦争の「決定的な推進者」であり、中国が欧州の安全保障に対して継続的な体系的挑戦をもたらしていると述べた。この発言は北京の強い反発を招いた。

日本は2027年までに防衛費を倍増し、NATOが規定する国内総生産(GDP)の2%に引き上げる計画であるが、円安によりその購買力が弱まる可能性がある。中国の官僚は以前、米国がアジア版のNATOを創設しようとしていると非難している。

中山泰秀元防衛副大臣は、日本の防衛予算約5兆3千億円のうち、約50%が防衛省・自衛隊の人件費に充てられており、装備品の調達などに使える予算は残りの50%から捻出されると述べた。他国と比較すると、これは世界第12位の軍事力を持つ韓国と同程度の予算規模である。

防衛予算の規模を考える際、GDP比で何%かがよく議論される。日本の防衛予算は現在GDP比1%であり、5年後までに2%に増加する予定である。中山氏は、防衛予算が2%に増加すれば、防衛力がさらに充実するであろうと述べた。

白書はまた、北朝鮮が監視衛星と新型のより高度なミサイルを用いて核打撃能力を強化しようとしていること、その一部のミサイルが米国を攻撃できる射程を持っていることも指摘している。さらに、ロシアが中国や北朝鮮との軍事関係を深めていることも大きな懸念として挙げている。

北朝鮮はすでにロシアのウクライナ戦争の部隊に砲弾やその他の弾薬を提供し始めている。先月、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記は包括的な戦略的パートナーシップ協定に署名し、その中には共同防衛の約束も含まれている。この協定に基づき、モスクワは平壌に軍事援助を提供することができる。

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!
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