【プレミアム】世界を蝕み、生活を支配 中共、太陽光発電で世界覇権をどう達成するのか?

2024/07/28
更新: 2024/08/01

昨年、中国の太陽光発電産業は驚異的な成長を遂げた。1年間に設置された太陽光パネルの量は、アメリカの歴史上の総量を上回り、パネルの卸売価格もほぼ半減した。中国の完全組立済み太陽光パネルの輸出は38%増加し、主要部品の輸出量はほぼ倍増した。

この動きは、今後さらに強まると予想される。アメリカやヨーロッパが再生可能エネルギー生産を再活性化し、企業の破綻を防ごうとしている中、中国は既に大きくリードしている。

全国人民代表大会の年次会議で、習近平に次ぐ中国のナンバー2である李強首相は、中国が太陽光発電所、風力発電所、そして水力発電プロジェクトの建設を加速することを発表した。

中国経済は困難に直面しており、再生可能エネルギー(主に太陽光)への投資増加は、新興技術に対する大きな賭けの一環である。習近平指導の下、太陽光パネル、電動車両、リチウム電池といった「新三様」が、かつての「旧三様」(衣料品、家具、家電)に取って代わった。.

「新三様」産業の発展目標は、不動産業界の急激な下落を相殺することにある。中国は太陽光などの新興産業を利用して、10年以上減速している経済を再び活性化しようとしている。

太陽光発電の重視は、中国がエネルギー輸入依存を減らすために実施している20年計画の最新の一手である。

国際注文の減少により、中国の太陽光発電業界は競争が激化し、利益が減少しているため、企業はコストを削減するために大規模なレイオフを余儀なくされた  (Photo credit should read STR/AFP via Getty Images)

「中国の不公平な貿易慣行が私たちの太陽光産業にどのように影響を与えたかを忘れてはいけない。多くの若い企業が大量の補助金を受けた中国の競争相手に押しつぶされた」

中国の太陽光製品の輸出は、国際的な緊張を引き起こしている。バイデン政権は中国の過剰生産能力に対応するために、中国からの180億ドル相当の製品に関税を課している。

特にヨーロッパは警戒を強めている。10年以上前、中国が太陽光パネル製造工場に補助金を提供していた一方で、ヨーロッパの政府はどこで生産されたパネルであれ、消費者の購入に対して補助金を提供していた。この結果、消費者が中国産品を大量に購入し、ヨーロッパの太陽光産業が打撃を受けた。

破産の波が世界の太陽光産業を襲い、世界は大きく中国製品に依存することになった。

「中国の不公平な貿易慣行が私たちの太陽光産業にどのように影響を与えたかを忘れてはいけない。多くの若い企業が大量の補助金を受けた中国の競争相手に押しつぶされた」と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は昨年の「一般教書演説」で述べた。

世界最大の太陽光発電企業である隆基緑能の業績予告によると、今年上半期の純損失は48億から55億元と予想されている。7月9日時点で、上半期の業績予告を公表した上場企業の中で、太陽光産業は損失企業の数が最も多く、その中で7社は10億元以上の予想損失を報告している。

世界の太陽光産業は赤字が続いている。台湾の総合経済学者である呉嘉隆氏は、大紀元に対し、根本的な問題は中国の過剰生産と、習近平の「新三様」にあると述べた。

アメリカの経済学者である黄大衛氏も同様の見解を持っており、大紀元に対し、「中国の太陽光発電産業は政府の補助金に依存して利益を上げている。政府が支援するプロジェクトには多くの人が群がり、補助金を獲得しようとする。補助金があるため、彼らはコスト削減にあまり関心を持たない」と述べた。

中国企業は1月11日、ネバダ州ラスベガスで開催されたIT関連機器展示会で製品を展示する (Photo by BRENDAN SMIALOWSKI/AFP via Getty Images)

「中国の製造業者が太陽光パネルのコストを95%以上削減しなければ、私たちは世界中でこれほど多くの太陽光設備を見ることはなかっただろう」

中国のコスト優位性は対抗するのが難しい。欧州委員会の研究機関が今年1月に発表した報告書によると、中国企業は発電量1ワット当たり16~18.9セントのコストで太陽光パネルを生産できる。一方、ヨーロッパ企業のコストは1ワット当たり24.3~30セント、アメリカ企業のコストは約28セントである。

これらのコスト差は部分的には中国の低賃金を反映している。

中国の都市は市場価格よりもはるかに低い賃料で太陽光パネル工場に土地を提供している。国有銀行は低金利で太陽光企業に大量の融資を行っており、一部の企業は赤字を抱え、一部は既に破産している。それでも、中国企業は低コストで工場を建設し、生産設備を提供する方法を見つけている。

数十年来、中国の市や省の指導者たちは地元の太陽光産業の設立を追求してきた。これらの産業は地元の人々を雇用し、雇用された人々は税金を納める。

米国ウィチタ州立大学のウシャ・ヘイリー氏は、大紀元に対し、政府の支援は多岐にわたり、無料の土地、電力、無利息の融資、最先端技術の提供が含まれると述べた。彼女はこれらの支援が太陽光企業のコストの約35%を占めると見積もっており、場合によっては65%に達することもあるという。

中国の低電力料金も大きな役割を果たしている。

太陽光パネルの主原料である多結晶シリコンの生産には大量の電力が必要だ。太陽光パネルは通常、製造に要する電力量を相殺するために少なくとも7か月間の発電を要する。

2022年、中国の年間平均電力料金は1キロワット時あたり約0.5~0.62元(11円~13円)で、工業用電力料金は0.8~1.8元(17円~38円)だった。一部のヨーロッパ諸国と比べると、中国の電力料金はその8分の1に過ぎない。

中国の電力の3分の2は石炭から得られており、石炭発電のコストは低い。しかし、中国企業は中国西部の砂漠に太陽光発電所を設置し、さらに電力コストを削減している。砂漠の国有地は基本的に無料だ。企業は太陽光発電で発電した電力を使ってさらに多結晶シリコンを生産している。

対照的に、ヨーロッパの電力コストは高く、特にロシア・ウクライナ戦争が勃発し、ヨーロッパがロシアからの天然ガス購入を停止した後はさらに高騰している。ヨーロッパでは太陽光発電所の建設用地の価格も高い。

アメリカ南西部では環境への配慮から太陽光発電所の建設速度が遅くなっており、土地の他の用途への指定も再生可能エネルギーの送電線建設を阻んでいる。

中国の石炭消費量は温室効果ガス排出量を増加させているが、太陽光パネルのコスト削減への先駆的な取り組みは温室効果ガスの排出量の増加を鈍化させている。

「中国の製造業者が太陽光パネルのコストを95%以上削減しなければ、私たちは世界中でこれほど多くの太陽光設備を見ることはなかっただろう」と、コロンビア大学グローバル・エネルギーポリシーセンターの研究員である涂建軍氏は述べている。

2018年以来、世界の太陽光パネルの年間設置量はほぼ4倍に増加した。

キャノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹は、中国製太陽光パネルを使用することは「本末転倒だ」と述べた(Wenliang Wang/大紀元)

中国企業はますます太陽光パネル製造の初期の高付加価値工程を中国で行い、最終組立を海外の工場で行っている。

一部の多結晶シリコン生産用発電の新しい太陽光発電所は、中国西部の青海省や雲南省に位置している。しかし、多結晶シリコンの主要生産地は新疆ウイグル自治区である。アメリカは新疆での強制労働を理由に、同地区で生産された材料や部品を使用した製品の輸入を禁止している。欧州連合も同様の措置を検討している。

中国企業はますます太陽光パネル製造の初期の高付加価値工程を中国で行い、最終組立を海外の工場で行っている。これにより、製品が貿易障壁を避けることができる。中国の主要な太陽光パネル製造企業のいくつかは、アメリカに最終組立工場を設立し、インフレ削減法案の補助金を利用している。

一方、日本は中国製の太陽光パネルを積極的に導入しており、最近明らかになったデータによると、日本の太陽光発電産業の製品の約3分の2が中国からのものである。その安全性には広く疑問が呈されている。

東京都議会では太陽光パネルの設置を義務付ける条例改正案が可決となった(Wenliang Wang/大紀元)

中国は世界中の太陽光パネル製造設備のほぼ全てを生産しており、太陽光パネルに必要な全ての部品、例えばウエハーや特殊ガラスを供給している。

「この分野の専門技術はすべて中国にある」と、オレゴン州ユージーン市のGrape Solar社のCEOである袁海洋氏は述べており、彼の会社はアメリカで組立事業を展開している中国の太陽光企業と協力している。

これらの専門技術はかつてアメリカにあったが、今やそれらは中国に移ってしまった。

桜美林大学地政学教授の菅沼雲龍氏は、中国が太陽光産業をこれほど大規模に発展させたのは、高い技術含量の製品を生産できないためだと指摘している。

「航空機エンジンの技術をアメリカから盗まなければならない状況で、唯一の方法は、大量の技術含量の低い製品を生産し、世界市場を席巻することである」

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!
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