なぜ中国共産党が法輪功を続けて弾圧するのか?

2024/08/03
更新: 2024/08/03

1999年7月、当時の中国共産党(中共)党首、江沢民が法輪功に対する弾圧を開始し、この弾圧は25年以上も続いている。

中共が法輪功に対してなぜ弾圧を行うのか、江沢民はすでに亡くなっているにも関わらず、なぜ弾圧が終わらないのか?

本記事では、専門家や学者のインタビューと様々な資料をもとに、弾圧の背後にある理由を6つのポイントをあげ解明する。
 

一、法輪功の普及と学習者の急激な増加

1998年4月から5月にかけて、長春で行われた法輪功学習者の練習風景(写真提供 明慧網)
中国共産党による弾圧が始まる前の、北京での法輪功学習者の練習風景(明慧網)

1992年、法輪功はその創始者である李洪志氏によって中国の長春で伝え出された。

法輪功は、宇宙の最高特性とされる「真・善・忍」に基づく佛家修煉法であり、5つのシンプルで覚えやすい動作を含み、その顕著な健康への効果と道徳的な向上を促す力により、中国大陸で急激に広まった。

1993年の12月、北京で行われた東方健康博覧会において、法輪功創設者である李洪志氏は「辺縁科学進歩賞」など複数の賞を受賞し、「特別金賞」や「受群衆歓迎気功師(最も歓迎される気功師)」としての称号を得て、最も多くの賞を受賞した気功師となった。

法輪功はあっという間に社会や中国全土に広がり、工員、農業従事者、大学の教授、文化界の著名人、政府高官、軍のリーダー、警察官に至るまで、さらには中共の最高指導部の家族を含む幅広い人々が学び、実践していた。

中共政府の公式な調査結果によると、1999年以前には、中国で法輪功学習者の人数は7千万人から1億人に達しており、これは当時の共産党の党員数6300万人を超える規模であった。

1998年11月24日、上海のテレビ局が報じたところによると、法輪功はヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アジアの4大陸で広まり、多くの人々に受け入れられている。報道によると、世界中で約1億人が法輪功を実践している。

アメリカの有名なシンクタンク、ハドソン研究所の中国センターのディレクターであり、アメリカ海軍学院の東アジアと軍事史の教授であるマイルズ・ユー(余茂春)氏は、法輪功が広く受け入れられていることが中共の全体主義的な神経を逆なでし、その影響力は中共の権威を脅かすものと見なされたため、1999年には法輪功に対する厳しい取り締まりが始まったと述べている。

二、法輪功は中国共産党の支配を受けない

1992~1994年にかけて、法輪功の創始者である李洪志氏が中国各地をめぐり教えを広めたのはわずか2年間であった。その後、法輪功は口コミや公園など公共の場で、地元のボランティアによる指導で、人から人への方法で迅速に広がった。

法輪功は1985年に設立された、中国国内での気功の普及と研究を目的とする中国気功科学研究会という団体に所属していたが、1996年、法輪功は中国気功科学研究会から離脱した。

アメリカ合衆国首都ワシントンD.C.に拠点を置く著名な研究機関「フリーダムハウス」は、報告書『法輪功 中国における宗教の自由』において、「1990年代の中頃、中共は気功団体への管理を強めようとした。1996年には、法輪功と連絡している国営気功協会が、学習者の中に共産党の支部を設け、法輪功の教えを商業化しようと試みた。これに対し、李洪志氏は協会から独立する道を選び、法輪功は会員制度を持たず、あくまでも個人の修煉とし、その教えを無料で広める意向を示した。法輪功は、中国で様々な練習グループやボランティアを通じて、民間に拡がりを見せている」と報告している。

法輪功学習者のコミュニティーの発言を代弁している法輪大法情報センターも同様の見解を述べている。

しかし、中共の一党独裁体制では、政治的な団体、宗教団体、その他の独立した社会的団体は、共産党の支配を受け入れなければ敵視されることになる。

三、江沢民の嫉妬と政治的動機

中共の最高指導部である政治局常務委員の7人中、6人が反対するなかで、江沢民は独断で法輪功消滅運動を立案し、推進し、実施した。江がこの行動に出た理由は、自身の権力を固め、5年あまりで急速に人数を増やした法輪功に対して個人的な嫉妬を覚えたからだとしている。

江沢民は1989年の六四天安門事件の後、権力の座についたが、外部からも彼自身からも、自分が一時的なリーダーであると見なされていると言っている。江沢民は自分の立場の不安定さを「深淵の縁に立つような、薄氷を踏むような」と表現した。

外国訪問中、他国の指導者たちの前での不適切な行動が原因で、江沢民はしばしば笑いの対象となった。

江沢民が、スペイン訪問時には、注目を集めている最中に、突然スペイン国王の前で堂々と櫛を取り出し、髪を整え始めるという一幕があった(AFP)

1996年、江沢民はスペイン訪問の際、突如として櫛を取り出し、スペインのカルロス国王の前で自らの髪をとかし始めた。スペイン最大級の新聞「エル・パイス」はこの一コマを一面トップで掲載し、「カルロス国王が見守る中、江沢民が髪をとかす」との見出しで報じた。1997年10月には、アメリカ訪問中、ハワイでのランチョンで江沢民がフラダンスを披露した。この一連のことで江沢民は「芸人」という異名を持つようになった。

江沢民は党内での地位が不安定であり、公のイメージも決して良いとは言えなかった。一方で、法輪功が急激に拡大し、広範な賞賛を集めていたため、江沢民の個人的な嫉妬心はかき立てられていた。

1998年5月、中国国家体育総局が法輪功に関する調査を実施し、その健康促進効果は非常に高いことを示す97.9%という健康有効率が明らかになった。

1998年の後半に、すでに引退していた元全国人民代表大会委員長の喬石氏は、他の高官たちと共に法輪功に関する徹底的な調査と研究を行い、「法輪功は国と民にとって多くの利益があり、害は一つもない」と結論付け、その年の終わりに、江沢民をリーダーとする政治局に報告書を提出した。

報告書には、「民の心を得る者は天下を得る、民の心を失う者は天下を失う」という古い格言も引用されていた。江沢民は報告書に強い不満を示し「理解不能で難解だ」と批判した。

中国国民から大きな支持を得る一方で、一部の政府機関で法輪功を抑圧する動きも現れていた。

1999年4月25日、約1万人の法輪功学習者は、不当に逮捕されたり暴行を受けたりした学習者の釈放を求めて、共産党の権力中枢、北京の中南海近辺にある陳情オフィスに集まった。当時、問題を巧みに解決した朱鎔基首相は、その後、政治局常務委員会で江沢民から激しい叱責を受けた。「愚かな行為だ! 国を滅ぼしかねない!」と厳しく非難した。

「ワシントン・ポスト」紙は、「法輪功への弾圧は、中共の指導部が自らの権力を誇示し、強化するためのものであった……党内の情報によると、政治局の常務委員会が一致して弾圧を承認したわけではなく、江沢民が独断で法輪功を消滅する決定を下した」と報じている。

2001年2月、CNNのシニア中国問題アナリスト、ウィリー・ラム氏は、江沢民が大衆運動を通じて自身への忠誠心を高めようとしていると指摘する記事を書いた。

四、法輪功の「真・善・忍」の原則は、共産主義や無神論のイデオロギーとは相容れない

中共は1949年に政権を握って以来、特に文化大革命の期間に、共産主義の理念を国民に押し付け、無神論、唯物主義、闘争の思想を用いて中国の伝統文化を置き換え、「天との闘い、地との闘い、人との闘いは無限の楽しみ」というスローガンを広めた。

それとは対照的に、法輪功は中国古来の知恵や五千年にわたる中華文明の神への信仰、伝統的価値観を復興させた。法輪功が重んじる「真・善・忍」の原則は、欺瞞と闘争を基盤とする共産主義文化とは本質的に異なるものである。

結局のところ、中共の指導者たちは、法輪功の厳格な道徳規範が、共産党の力による支配やマルクス・レーニン主義の戦略に対する脅威になることを危惧していた。

法輪大法情報センターの研究員であるニック・ヘイリー氏によると、法輪功が共産党の政治的な安定や支配への脅威と見なしていることから、中共は法輪功への弾圧を継続しているという。

法輪功の「真・善・忍」の教えとその教えを信奉する学習者が圧倒的に多いため、中共のイデオロギーと権威に対する挑戦とみなされ、中共政府はプロパガンダや監視、拘留、暴力を駆使して法輪功を消滅しようとしている。

ワシントンD.C.にあるハドソン研究所の宗教自由ディレクター、ニーナ・シェイ氏は、「法輪功への25年にわたる迫害」のシンポジウムで、「法輪功への迫害は中共政府の本質を示している」と指摘した。彼女によれば、中共政府の目的は毛沢東時代から変わらず、今もなお強制力によって党の支配を保持し、その実態を隠蔽しているとのことである。

米国議会および行政機関の中国委員会のスタッフディレクターであるピエロ・トッツィ氏は、中共の法輪功への迫害は、25年前も今日も変わらず、その邪悪な本質を露わにしていると述べている。

トッツィ氏はさらに、共産主義は物質主義と無神論を基盤とした思想であり、人間を尊重すべき存在とは見なさず、単なる革命の道具として扱っていると批判している。

毛沢東はかつて「政権は銃口から生まれる」と述べ、自分自身を「やりたい放題、好き勝手にやってきた男」と言っていた。これは中共の政権の本質を映し出しており、その邪悪さを示している。

五、嘘はばれ、中共の恐怖政治

中共は法輪功を迫害し始めた際に、法輪功の学習者が殺人をしたとか、自殺、死亡事件を捏造し、コントロール下にある官製メディアを使って法輪功を誹謗中傷した。

例えば2001年1月23日には、法輪功を陥れるために「天安門焼身自殺」の事件を捏造した。この事件には数多くの疑問が提起されている。

国際教育発展組織(IED)は2001年8月14日、国連の会議上で、「天安門焼身自殺事件」が、中共当局の国家恐怖主義の行為だと強烈にけん責し、声明の中で、事件全体は中国政府がプロデュースしたものであると指摘した。

中国共産党中央テレビが放送した天安門焼身自殺事件のスローモーション映像は、劉春玲が警察によって殴打され死亡したこと、そして天安門焼身自殺が中国共産党の捏造であることを証明している(明慧網)
いわゆる「焼身自殺」に参加した王進東について、中共は異なる三つのバージョンの写真を公開している(明慧網)

虚偽の事件をでっち上げると同時に、残酷な拷問や虐殺が行われているのである。

『江澤民其人』という本には、江沢民が1999年6月10日「610弁公室」という超法規的権力を背景に法輪功への迫害を専門に行う非合法な特別機関を設立し、法輪功学習者を社会的にも経済的にも破滅させ、身体的にも消滅させるよう指示したこと、そして法輪功学習者に対して「殴り殺しても正当な死と見なし、自殺として処理し、身元調査はせずに直接火葬する」という集団絶滅政策を実行したことが記されている。

中共が運営する拘置所や労働教養所、刑務所では、法輪功学習者が数百種類にも及ぶ残酷な拷問を受けている。これには、殴打、電気ショック、火傷、熱湯をかけられること、凍結、水牢、拘束衣、虎椅子、死人ベット、毒蛇に噛ませること、性的虐待、不明な薬物の投与、生体臓器の摘出などが含まれる。

明慧網が行った不完全な統計によれば、2024年7月31日までに、少なくとも5088人の法輪功学習者が迫害によって死亡したと確認しているが、実際の犠牲者数はこれよりもはるかに多いと考えられている。

2006年7月6日、国際人権弁護士のデイビッド・マタス氏と、元カナダ連邦議員でアジア太平洋局長を務めたデイビッド・キルガー氏は、「中共による法輪功学習者からの強制臓器摘出に関する調査報告」を共同発表した。この報告書では、中共が法輪功学習者から生体臓器を摘出しているという告発が裏付けられ、そのことは「この地球上、かつてない悪行」と強く非難された。

2016年6月、この報告書は更新され、中国では年間6~10万件にも上る臓器移植が行われており、その多くが法輪功学習者から摘出された臓器であることが示唆された。

中共の誹謗、拷問、そして殺害に直面しながら、法輪功創始者の李洪志氏は、学習者たちに「真実を伝える」ことを教えた。

法輪大法情報センターの研究員であるニック・ヘイリー氏は、大紀元新聞のインタビューで、「法輪功の学習者たちは中国で民衆の間に根を下ろし、真実を伝えることで、学習者たちが受けている迫害を世に知らしめ、中共による法輪功に対する虚偽の情報を正し、その迫害に立ち向かっている」と述べている。

邪悪は暴露されることを恐れている。ヘイリー氏は次のように述べている。「中共は、法輪功学習者たちが真実を伝えることによって、中国の人々が共産党への信頼を失い、結果として政権が崩壊する可能性を危惧している」

2024年7月、法輪大法情報センターはアメリカの雑誌「ザ・ディプロマット」(The Diplomat)に寄稿し、「法輪功消滅運動は、中共が国内外の中国人社会を支配し、政治的権力を保持し、自らのイデオロギーを最優先させるための中心的な戦略である」と指摘した。

米議会・中国問題委員会(CECC)の幕僚長ピエロ・トッツィ氏は、大紀元のインタビューで、中共が法輪功に対して行っている迫害は、「共産主義政権が本質的に持つ道徳的な邪悪に根ざしている」と述べた。「これは共産党が権力を握るため、そして権力を保持し人々から利益を搾取するための行為である」

六、虐殺無数、やめるにやめられない

2022年11月30日に江沢民は死去したが、中共による法輪功への迫害は依然として続いている。

2024年7月17日、法輪大法情報センター副主任の劉寧平博士はハドソン研究所で開催されたセミナーで、「法輪功を25年間迫害し続けている。法輪功は依然として中共が国の政治的安定を保つ上で最も標的にしている対象である」と述べた。

2019~2023年にかけて、中国の12省市から出された指令、報告書、開発計画を見ると、法輪功に対する取り締まりが「国家安全」「政治安全」「国家政治安全」に直結していることは明らかである。

劉博士は、2020年に公安部の趙克志部長が法輪功に対する厳格な取り締まりを全ての法的手段とツールを用いて実施すると宣言したこと、そして2021年に公安部がそのことについてプレスリリースを発表したことを指摘した。彼はまた、「法輪功の問題は、ウイグル族やチベットの問題、反腐敗、反テロ活動などの課題よりも優先されている」と言及している。

2024年の前半だけで、法輪功学習者69名が迫害で死亡し、447名が不当に有罪判決を受け、1470名が不当に拘束されている。

法輪大法情報センターの研究員であるヘイリー氏は、江沢民の死去後も、中共が法輪功に対する迫害を保っていると指摘した。「江沢民によって確立された迫害の政策と体制は、中共の支配構造に深く根ざしており、現在の指導部もこれを継承し、権力を保持し続けるために、反対意見や脅威を抑圧することに執着している」と大紀元新聞に語った。

人権弁護士デイビッド・マタス氏は、共産党が法輪功への迫害を停止することは、自己否定に等しいと述べている。

「今、共産党内で、法輪功弾圧の決定に関する議論はもうしなくなったが、法輪功に対する弾圧は江沢民の時代を超えて続いている。江沢民が生きていた時には、多くの党員が迫害に加担させられた。今や、共産党は法輪功への迫害によって重大な罪を背負っており、迫害を止めることは共産党の崩壊を意味すると考えられている」とマタス氏は述べている。

さらにマタス氏は、「中共にとって、法輪功への迫害は取り返しのつかない行為であり、迫害を撤回することは、大規模な虐殺の誤りを認めることを意味し、そのような認識をすれば、共産党の存続は不可能になる」と強調している。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
夏荔
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