なぜドイツ製品は売れなくなってきているのか 「中国の罠」にはまったドイツ機械製造業

2024/08/07
更新: 2024/08/07

ドイツの機械製品は世界中で人気があるが、現在中国からの挑戦に直面している。中国企業が政府からの補助金を受け国際市場に進出し、ドイツの機械製造業を脅かしている。

「中国製」はかつて安価で品質が劣るというイメージだったが、今や状況は変わってきている。中国の機械製品は国際市場で頭角を現し始め、「ドイツ製」と競争するようになっている。

ドイツ機械製造業協会(VDMA)は、中国問題研究所に委託して500社のドイツ企業を調査した。その結果、今後5年間で61%の企業が中程度の競争力を維持できるか、さらに悪化すると予測している。現在の割合は37%である。

VDMAのカール・ホイスゲン会長は地元メディアに対し、中国の機械製造業は優遇価格、先進技術、高品質を特徴とする「グローバル化」の波に乗っていると説明した。こうした製品が国際市場に静かに進出しているのだ。

例えば、高層ビルの窓清掃用の作業車では、中国湖南省の製品が国際市場で成功を収めている。価格がドイツ製品よりも安いからだ。

ドイツの「ヴィルトシャフツヴォッヘ(WirtschaftsWoche)」誌によると、プラスチック機械のメーカーは注文が30%減少している。

たとえば、シュヴァルツヴァルトで 1世紀にわたって生産を続けてきた南ドイツのメーカーは、現在では中国かアメリカに拠​​点を移さざるを得ない。自動車製造業に関しては言うまでもなく、特にEVでは、現在のヨーロッパ市場で販売されているEVのうち4台に1台が中国製だ。

ホイスゲン氏は、中国の機械製造業がここまで発展したのは、中央から地方までの政府補助金の大きな支援があったからだと述べている。

VDMAによると、2022年まで、中国の各機械企業は約1570万ユーロの直接補助金を受け取っていた。

これには間接的な補助金も含まれる。間接補助金には、安価な土地や電力の提供、企業が容易に融資を受けられるようにする措置が含まれる。また、中国共産党政府は国際市場への進出を無リスクで支援するため、国際展示会への参加費用や外国特許の登録費用なども負担している。

ドイツ業界、政府に国際競争力の向上を要請

VDMAの調査によると、会員の約半数が中国戦略を再考する必要があると回答した。数年前、多くの機械製造企業が中国に移転し、中国向けの生産を行っていたが、今では中国製の安価な製品が人気を集め、ドイツ製品は売れなくなっている。

現在の中国のビジネス環境や地政学的な状況は楽観的ではなく、中国国内のサプライヤーの方が魅力的である。「ドイツ製」の製品はかつてのように評価されなくなっている。

ドイツ機械製造業界は政府に対し、ドイツ企業の国際競争力を向上させるための措置を求めている。

ドイツ機械製造業にとって、中国は2番目に重要な輸出市場であり、外国投資の主要な目的地でもある。同時に、中国はドイツの主要な機械供給国でもある。この関係は中短期的には変わらない。したがって、製造業界は技術のリーダーシップ、サービス、製品寿命、信頼性などに注力し、自らの国際競争力を高める必要があると呼びかけている。

VDMAはまた、中国の競争相手による市場の歪みに対抗するため、反ダンピング政策や反補助金政策を採用するなど、政治的措置を講じるよう政府に求めている。

中国のEVが欧州市場に与える影響を考慮して、欧州連合は中国製EVに対する懲罰関税の導入を開始している。

 

余平
ドイツ語大紀元記者。
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