ミネソタ州知事は、軍での数十年の経験を経て教師と下院議員を務めた人物である。その人生と政策立場を紹介する。
2024年8月6日、カマラ・ハリス氏は、大統領選においてミネソタ州のティム・ワルツ知事を副大統領候補にすると発表した。これはバイデン大統領が選挙から撤退し、ハリス氏が選挙戦を開始してからわずか2週間余りのことだ。
ハリス氏はX(旧ツイッター)に「知事、コーチ、教師、そしてベテランとして、ワルツ氏は自分のような働く家庭のために尽力してきた。彼をチームに迎えられて素晴らしい」と投稿した。
民主党から正式に指名されれば、ワルツ氏はトランプ前大統領の副大統領候補であるJ.D.ヴァンス上院議員(オハイオ州)と対決することになる。ここでは、民主党の副大統領候補のワルツ氏について知っておくべき32のポイントを紹介する。
1. 年齢、60歳
ワルツ氏は1964年にネブラスカ州ウェストポイントで生まれた。父親のジム・ワルツ氏は1983年に亡くなっている。
2. 妻のグウェンさんと二人の子供がいる
ワルツ夫婦は1994年に結婚しており、娘のホープさんと息子のガスさんがいる。
3. ルーテル教徒
当選すれば、ワルツ氏は元副大統領ヒューバート・ハンフリー氏以来、ホワイトハウスに入る2人目のルーテル教徒となる。アメリカにはルター派の大統領はいまだかつていない。
4. チャドロン州立大学とミネソタ州立大学を卒業
ワルツ氏は学部で社会科学教育を専攻し、大学院で教育リーダーシップの修士号を取得している。
5. 陸軍州兵として24年間勤務
指揮軍曹の階級にまで昇進し、2005年に第1-125野戦砲兵大隊を退役した。イラク派遣前に州兵を退役している。
6. 教員を務めた
ワルツ氏はミネソタ州マンケートのマンケート・ウェスト高校で20年間教鞭をとった。
7. フットボールのコーチを務めた
マンケート・ウェスト高校でフットボールのコーチを務め、チームを初の州チャンピオンシップに導いた。
8. 中国で短期間教えた経験がある
1989年から1990年にかけて、ハーバード大学の依頼で中国で教鞭をとった。彼のグループは中国(共産党)政府に認可された最初のアメリカ人教師の一つだった。
9. 2004年のジョン・ケリー大統領選挙運動にボランティアとして参加
ワルツ氏は選挙活動の郡コーディネーターを務めたほか、「ベッツ・フォー・ケリー」グループの地区コーディネーターも務めた。
10. ハリス氏と同じく進歩主義者である
ワルツ氏は中絶アクセスを保障する立法、労働組合や組織労働の支援、厳しい銃規制法を支持している。最近のハリス選挙資金調達の電話会議では、「進歩的な価値観から決して遠ざかってはいけない。ある人の社会主義は別の人の隣人愛なのだ」と語った。同氏の知事在任中、ミネソタ州は不法移民に運転免許証を発行した。
ワルツ知事は、他の州から渡航する未成年者を含む未成年者に対する性別適合手術と治療を保護するための行政命令を制定した。
11. 2006年に下院議員に当選
ワルツ氏は共和党寄りのミネソタ州第1選挙区で現職の共和党下院議員ギル・ガットクネヒト氏を破り、国会議員に当選した。2017年1月から2019年1月まで下院退役軍人委員会の筆頭議員を務めた。ジョージタウン大学によると、114回議会で第7位の超党派代表と評価された。同氏は議会に仕える最高位の下士官だった。
12.銃所持に対する立場を転換
彼は議会で銃の所持を支持していたが、2018年の知事選出馬時に立場を変え、ミネソタ州でアサルトウェポン(突撃銃)の禁止を支持すると述べた。2023年には、本人または他人に危険を及ぼすとみなされた人物の銃器を当局が没収できるようにする、通称「レッドフラッグ(危険信号)法」と呼ばれる法案に署名し、法律として成立させた。
13. STOCK法案を議会に提案
議会におけるインサイダー取引と不道徳な贈答品受け取りを制限することを目的とした「議員の知識を利用した株式売買禁止法(STOCK法)」を提案した。ジョセフ・リーバーマン上院議員が提案した上院版が2012年に法律となった。
14. 軍人納税者支援法を提案
この法案は、退役軍人や軍人に対して「アウトリーチ(さまざまな形で、必要な人に必要なサービスと情報を 届けること)、教育、支援」を提供することを目指したものである。
15. 2018年学生差別禁止法を共同提案
2018年学生差別禁止法は「この法案は、連邦援助を受けているプログラムの下で、公立学校の生徒またはその関係者の性的指向や性自認、あるいはその疑いを理由に差別することを禁止する」と述べている。また、連邦政府の省庁や機関が、この法律に違反していることが判明した受給者や機関への資金援助を取り消すことも許可する。
16. 1989年の天安門事件を非難
1989~90年にかけて中国で短期間教鞭をとっていたワルツ氏は、天安門事件の際に中国に滞在していた。2014年に議会で記者に対して、「事件前の抗議は世界中に自由が広がっているように感じられ、とても楽観的な気持ちだった」と述べた。
「6月4日に目覚めて、考えられないことが起こったことを知ったのを覚えている」。
「私はそこに行き、中国国民の精神を見ることができて本当に光栄だ。彼らは自国を非常に誇りに思っているが、自由が輝く必要があることを理解している」。
17. 2018年の突撃銃禁止法を共同提案
この法案は、連邦法を改正し、「分隊支援火器(SAW)や大容量弾倉の輸入、販売、製造、移転、または所持を意図的に行うことを犯罪とする」ものだった。
18. 2018年のVA医療用大麻研究法を提案
この法案が成立すれば、退役軍人省が「慢性痛や心的外傷後ストレス障害などの状態と診断されたVA医療システムに登録された退役軍人に対する特定の形態の大麻および大麻投与の有効性と安全性に関する研究を実施および支援する」権限を与えられることになる。
19. 最低賃金引き上げ法案を共同提案
ロバート・スコット下院議員と共に「賃金引き上げ法案」を共同提案した。この法案は、1938年の公正労働基準法を改正し、「7年間で正規雇用者、チップを受け取る雇用者、20歳未満の新規雇用者の連邦最低賃金を引き上げる」ことを目指したものだった。
20. 2018年にミネソタ州知事に当選し、2022年に再選
ワルツ氏は2018年に、29万5千票以上、11.4ポイントの差でヘネピン郡コミッショナーのジェフ・ジョンソン氏を破り当選した。2022年には元州上院議員のスコット・ジェンセン氏を19万2千票以上、7.66ポイントの差で破り再選された。
21. 2020年の州暴動で批判を受ける
ワルツ氏は、ジョージ・フロイド氏がミネアポリスで警察に拘束され死亡した後、ミネソタ州で抗議や暴動が発生した際、批判を浴びた。同氏は州兵を動員したが、トランプ政権からの連邦政府の資金援助の申し出は断った。
22. 2016年にはヒラリー・クリントン氏、2020年にはバイデン氏を支持
2020年、ワルツ氏は「私はバイデン氏を支持して誇りに思う。彼は全てのミネソタ州民のために戦い、州を一つにまとめ、私たちの『一つのミネソタ』のビジョンを実現する助けになると信じている」と述べた。
23. 知事として法執行機関改革法案に署名
2020年、ワルツ氏はミネソタ州での警察改革を目指す法案に署名し、逮捕時の絞め技の使用を制限した。
「ジョージ・フロイドさんの死は、ミネソタ州全体の住民に意味のある警察改革の必要性をはっきりと認識させた。有色人種と先住民コミュニティによる数十年にわたる擁護活動を経て、これらの法案が超党派で可決されたことは正義への重要な一歩だ」と述べた。
24. ミネソタ州選挙人団の割り当て方法を変更する法律に署名
この協定は、州の選挙人票を全国の一般投票の勝者に割り当てるものであり、ミネソタ州での勝者に関係なく適用される。ただし、勝利に必要な270 票の選挙人票を獲得できる十分な数の州が署名しない限り発効しない。
25. ミネソタ州での有給家族休暇を拡大
ワルツ氏は、ミネソタ州民に対して年間最大20週間の有給家族休暇を提供する法案に署名した。
2023年の声明で、同氏は「有給家族休暇と医療休暇を法制化することで、ミネソタ州民が給与を諦めることなく新しい赤ちゃんや病気の家族の世話をするための休暇のどちらかを選択する必要がなくなる」と述べた。
26. コロナによるパンデミックに対し厳格な政策を実施
外出禁止令を含む政策を実施し、命令に違反する者を通報するホットラインを設置した。
27. 当選すればミネソタ州出身の3人目の副大統領となる
1人目はリンドン・ジョンソン元大統領の副大統領だったヒューバート・ハンフリー、次にカーター元大統領の副大統領だったウォルター・モンデール氏。
28. 労働組合と組織労働との密接な関係
労働団体はハリス氏にワルツ氏を選ぶよう求めた書簡で、彼が知事として働く家庭の味方であることを強調した。
29. イスラエルとハマスの戦争においてイスラエルを支持
TC Jew Folkが撮影した動画では、昨年10月7日のハマスによる攻撃直後にシナゴーグで「10月7日の朝に道徳的な明確さを見いだせなかったならば、自分がどこに立っているか再評価する必要がある」と語った。
「10月7日の朝に明らかだったのは、人間性の欠如、テロリズムそして蛮行だ。これは地政学的な議論ではない。殺人行為だ」と付け加えた。
30. 大学キャンパスでの反ユダヤ主義を非難
ワルツ氏は4月に地元テレビ局に「ユダヤ人学生が安全を感じていないと訴えているなら、それを信じる必要がある。そして私は彼らを信じる。政治的な異議申し立てや集会が行われる場を作ることは一つのことだが、脅迫は別の問題だ」と語った。
31. イスラエルとハマス間の「実効性のある停戦」を呼びかけ
3月に、同氏は「私は間違いなく停戦を求める。それは機能する停戦でなければならない」と地元ラジオ局に語った。
32. 教師組合からの支持を受ける
全国教育協会はワルツ氏を「公立学校の生徒と教育者の揺るぎない擁護者であり、働く家庭と労働組合の味方」と称賛している。
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