TikTokアルゴリズム 中共政権への批判を積極的に抑制

2024/08/13
更新: 2024/08/13

新たな調査によると、中国発の動画アプリ「TikTok」は、ターゲットユーザーの意見を形成するために、アルゴリズムを使って中国の人権侵害を暴露するコンテンツを抑制しているという。

ラトガース大学と同大学のネットワーク伝染研究所(NCRI)の研究者らは、TikTokのアルゴリズムが「中国共産党(中共)に批判的なコンテンツを積極的に抑制すると同時に、親中共のプロパガンダを助長し、気を散らす無関係なコンテンツを宣伝している」ことを研究で発見した。

「このプラットフォームは、旅行インフルエンサー、辺境のライフスタイルアカウント、その他中共と関係のあるコンテンツクリエイターを利用して、民族虐殺や人権侵害などの問題についてのデリケートな議論を組織的に封じ込めている」。

近年、 TikTokはアメリカの10代の若者のに悪い影響を与え、中国にある親会社バイトダンスは中共から米国ユーザーのデータを引き渡すよう強制される可能性があることから、国家安全保障に対する脅威として、精査と非難を受けている。米国家安全保障局は以前、このアプリを中共の反米的見解によりアメリカの長期的な安全保障を脅かす中国共産党の「トロイの木馬」と呼んだことがある。また、一部の議員は、TikTokを「デジタル・フェンタニル」と表現し、その中毒性を問題視している。

今年4月、バイデン大統領は、バイトダンスにTikTokを売却させるか、さもなければ米国内での利用を禁止する超党派の法案に署名し、法律として成立させた。これに対し、バイトダンスとTikTokは、この法律が合憲であるかどうかを争う訴訟を起こしている。

また、報告書によると、心理調査の結果から、TikTokが特にヘビーユーザーに対して影響を与え、中国に対する態度を変化させる「洗脳」を行っていることが明らかになった。

研究者たちは「これらのユーザーは、言論の自由を抑制する情報環境を通じて無意識に偏ったナラティブを受け入れ、重要な国際問題に対する理解が歪んでしまう」と指摘している。

TikTokの広報担当者はこの研究結果に対し、「査読されていない欠陥のある実験であり、虚偽の結論に導くために操作されたものだ」と反論している。

「NCRIによる以前の研究は外部のアナリストによって誤りであると論破されており、この最新の論文も同様に欠陥がある」と広報担当者は付け加えた。

調査結果

調査を行うために、研究者らはTikTok、Instagram、YouTubeの3つのプラットフォームに、米国在住の16歳のユーザーを模倣した24個のアカウントを作成し、各プラットフォームのアルゴリズムが中共の人権侵害に関連する「ウイグル」「新疆」「チベット」「天安門」といったキーワードに対してどのように反応するかを検証した。

トランプ政権とバイデン政権は、中共によるウイグル族弾圧を「大量虐殺」や「人道に対する罪」としている。チベットでは、中国政権は同地域を監視国家にし、労働収容所を設置している。

1989年6月4日、中国政府は首都の天安門広場で学生デモ参加者と非武装の民間人に対し軍に発砲を命じた。数千人の目撃者がいるにもかかわらず、中共は暴力的な弾圧をしたことを否定しており、天安門事件に関する議論は中国と香港でタブーとされている。

研究者らは4つのキーワードを使った検索結果から3400本以上の動画を収集し、各動画を「親中国」「中立」「無関係」のいずれかに分類した。

報告書によると、「新疆」に関する検索結果で、TikTok上の「反中国」と見なされる動画はわずか2.3%だったのに対し、YouTubeでは21.7%、Instagramでは17.3%となった。

また、TikTokでの「天安門」の検索結果のうち26%以上が「親中国」とみなされたのに対し、YouTubeでの検索結果のうち「親中国」はわずか7.7%、Instagramでは16.3%だった。

「チベット」の検索結果では、TikTokには3つのプラットフォームの中で反中国コンテンツが最も少なく(5%)、親中国コンテンツが最も多かった(30.1%)。

報告書は「TikTokのアルゴリズムは、全体のエンゲージメントとは関係なく、特に『いいね』あたりの視聴回数で親中国コンテンツを優遇している」と指摘し、TikTok特有のバイアスが存在することを示唆している。

調査

研究者たちは、1214人のアメリカ人TikTokユーザーを対象に調査を行い、アプリの利用時間に基づく中国に対する認識を理解しようとした。

その結果、1日に3時間以上TikTokを利用するヘビーユーザーは、非ユーザーに比べて中共の人権記録に対する肯定的な見方が49%増加していることが判明した。また、1日15分から3時間利用するユーザーの場合、その増加率は36%だった。

「対照的に、YouTubeやInstagramの利用者は、中国の人権記録に対するユーザーの認識に有意な影響を与えていない」と報告書は述べている。
報告書は「これにより、TikTokのコンテンツがユーザーの心理的操作に寄与している可能性が示唆され、若年視聴者の間で中共に好意的な認識を形成するという中共の戦略目標と一致している」と指摘した。

また、ヘビーユーザーは、「天安門広場が主に観光地として知られている」という認識が48%増加していることも分かった。

研究者らは、ソーシャルメディアプラットフォームと公共が資金提供する「Civic Trust(市民信託)」の設立を提案し、ユーザーの認識を操作しているプラットフォームの特定を支援すべきだとした。

「もしソーシャルメディアのアルゴリズムが、運営の自由を与えている民主主義を根底から覆すような行為をしていることが判明した場合、それは不当かつ危険である。プラットフォームが国家によって悪用され、民主主義の制度や価値観が損なわれることないよう、説明責任と是正措置が必要だ」と報告書は述べている。

台湾在住のジャーナリスト。米国、中国、台湾のニュースを担当。台湾の国立清華大学で材料工学の修士号を取得。