社会問題 「司法は死んだ」

中国軍人もまた「陳情民」

2024/08/16
更新: 2024/08/16

 

中国で腐敗が蔓延しているのは官界だけでない、軍隊も同じである。

今月12日にSNSに投稿したある動画が物議を醸している。そこに映っていたのは、軍服姿の軍人の姿だ。撮影場所は、北京にある陳情局前。そう、この軍人もまた、陳情民の1人なのだ。

「南部戦区」の所属であるこの軍人がここに並ぶのは、「その妻が1年前に官僚にレイプされたためで、この件についていろんな部門へ訴えているが、どこも受理してくれず、検察庁や裁判所からも相手にされないのだ」という。

軍人だけでなく、公安であっても「社会主義の邪鉄拳」は避けられないようだ。

 

 

先月下旬、浙江省紹興市の公安が、SNSに権利擁護をする自撮り動画を投稿している。その訴えによれば、夫妻は6年内で2回も(政府当局による)強制的な取り壊し(家屋や不動産の接収、立ち退き)に遭い、地方官僚から散々いじめを受けてきたという。自分のおじいさんは朝鮮戦争に参加した老兵だというのに。

先月、人権サイト「六四天網」は、政府による土地収奪の被害者、四川省雅安市蘆山県の100人以上の裁判官と公安の「権利擁護のための拡散依頼」を受けて発信している。

 

横行する土地収奪 奪うのは政府

中国では、地方政府による住民の土地の強制的収奪が横行し、以前から大きな社会問題になっており、今も続いている。

表面上では「都市再開発」などをうたっているが、実際には「巨額の借金の穴埋め」のために、土地を取り上げて売りさばいており、ちまたでは「儲けたいだけではないか」という非難の声もあがっている。

土地を収奪される住民に対しては、政府側が雇った取り壊し隊などが、殴打、嫌がらせ、留置など暴虐な手段をふるう手法がよく用いられ、立ち退きを拒否する住民が、焼身自殺をして抗議するケースも出た。

立ち退き被害者は、訴えようにも訴える場所がなく、泣き寝入りするしかない。地域の陳情局へ陳情する被害者もいるが、その場合、住民の話を聞いて対応するどころか、かえって現地政府の弾圧対象にされ、子孫の代まで苦しめられるという。

こうした強制的な土地収奪をめぐって、効果のない陳情をあきらめ、反逆反抗のケースも相次いでいる。6月には「強制立ち退き」被害者が地方役人を刺殺する事件も起き、先月3日も遼寧省の建設現場で「強制取り壊し隊」が市民の車によって轢かれる事件が起きているほどだ。

 

イメージ画像。取り壊される上海黄浦区老西門街区( HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)

 

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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