Temuのデータ収集疑惑と中国共産党の影響 米国21州の司法長官が対応を求める

2024/08/17
更新: 2024/08/18

アメリカの21の州の司法長官は、中国通販大手Temuが不正にデータを収集し、中国共産党と疑わしいつながりを持つ可能性があるとして、同社に対し詳細な説明を求める書簡を送付した。この問題は、消費者データのプライバシー保護と強制労働防止法違反の可能性に焦点を当てており、各州の法的対応が注目されている。

中国の通販サイト大手であるTemuは、ユーザー情報の不正収集、「ウイグル人強制労働防止法」(UFLPA)違反や、中国共産党とのつながりが疑われており、さまざまな問題で物議を醸している。8月15日に、アメリカの21州の司法長官はTemuに対し、これらの疑惑についての説明を求める共同書簡を送付した。

この取り組みを率いたモンタナ州のオースティン・クヌッセン司法長官は、「Temuのビジネス活動と中国共産党との間の明らかなつながりに、深刻な懸念を持っている」と述べている。

クヌッセン氏は「司法長官としての私の使命は、モンタナ州民を悪意ある者から保護し、彼らが消費者のプライバシーに関わるデータを不正に取得したり、消費者保護法の順守の追及である」「その企業からの回答を待っており、彼らのビジネスがモンタナ州の法律に準拠しているか、また中国共産党とのデータ共有がないかを確認したい」と述べた。

Temuと中国共産党との関連性についての疑惑

Temuの共同創業者である孫勤氏と、親会社の会長である陳磊氏宛てに送られた書簡において、司法長官はTemuのビジネスプラクティスに対する懸念を示している。

その書簡には、アメリカ連邦議会下院が設置した「アメリカと中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」が昨年、Temuがアメリカで禁止している新疆ウイグル自治区の強制労働製品を取り扱っている可能性を指摘したことが記されており、注目を集めている。

Temuは委員会に対して、「新疆産の商品を販売しないという方針は持っていない」と認めた。

長い間、中国共産党は新疆地区での重大な人権侵害の疑いに直面している。多くの人権団体や専門家たちは、中国共産党が現地のウイグル人に対して強制労働や民族浄化を行っているとの見解を示している。

また書簡では、モンタナ州はTemuとPinduoduo(拼多多)が行うデータ収集についても懸念を持たれており、Temuが他の中共支配下の企業と同じように、モンタナ州の消費者データを収集し、必要に応じて中国共産党に提供する義務があるのではないかと述べている。

収集された証拠をもとに、中国特別委員会はTemuのコンプライアンス体制が不十分であり、実質的にTemuを通じて強制労働に関連する商品が定期的にアメリカへと流入していることを認め、これがUFLPA(米国強制労働防止法)に反していると判断した。

また州の司法長官は、Temuの行動が今年の10月1日に施行されるモンタナ消費者データプライバシー法」に違反している可能性を指摘した。

各州の司法長官は、Temuに対して、今後30日以内にアメリカの消費者データを収集しているかどうか、そして収集している場合はどの種類のデータか(消費者の好み、生物学的特徴、政治的傾向、健康記録、人種、宗教、性別など)、収集の目的、保存方法、第三者のアクセス防止策について説明する事を求め、またアカウント閉鎖後に保持されるデータに関する情報も要求している。

その他、Temuは中国共産党の官僚や関連企業からアメリカ市民のデータ提供を求められたり、情報を提供したことがあるかどうかについても説明するよう求めた。

加えてTemuはプラットフォームで販売されている製品が強制労働に関連していないことをどのように保証しているのかについても説明する必要がある。

報告によれば、親会社のPinduoduo(拼多多)の経営陣には元中国共産党の官僚が何人かおり、司法長官はこれらの人物はTemuが保持するアメリカ消費者データへアクセスできるのではないかと懸念している。

以前、拼多多のアプリに悪意のあるソフトウェアが含まれているとの報告があり、2023年にはGoogle Playからそのアプリを削除した。司法長官は、Temuのアプリが同じ開発者によって作られているかどうか、またアメリカのユーザーを監視するような悪意のあるソフトウェアを防ぐ対策について説明を求めている。

アラバマ州、アラスカ州、フロリダ州など21の州の司法長官たちが、この問題に関する書簡に署名している。

先月、アーカンソー州もTemuに対して法的措置を取った。州の司法長官ティム・グリフィン氏は、アメリカの消費者に対してTemuアプリの使用に警戒を呼びかけ、「その実態はデータの窃取である」と述べている。

その際、グリフィン氏はフォックスビジネスチャンネルにおいて、「Temuはアマゾンやウォルマートといった一般的なオンラインマーケットプレイスとは異なり、商品販売を通じてデータを不正に取得する企業である」と述べ「利用者のスマートフォンやデバイスに潜入し、個人情報を収集している」と警鐘を鳴らした。

また、Temuには関税回避や環境持続性に対する疑問が持ち上がっており、現在はヨーロッパやアメリカをはじめとする多くの国々が注目している状況だ。

陳霆
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