25日、香港城市大学建築および土木工程系の李衍樺教授(59歳)が列車に飛び込み自殺した。現場で遺書が見つかっている。
李教授が生前SNSに「民主化デモ(反送中)以来、一日たりとも楽しい日はなかった」「香港の未来に全く期待を持てない」とするメッセージを残していたとされ、SNSでその死に関して嘆きの声が広がっている。
香港紙によれば、「同教授はうつ病を患っており、治療を受けていた」という。
堕ちた「自由の地」
香港は「デモの都」とも呼ばれ、香港市民は何か不満があれば街頭に出て、言いたいことを主張することができた。中国ではタブー視されている1989年の「天安門事件」や「文化大革命」についても香港の学校では自由に伝えることができた。
2019年、容疑者の身柄を中国本土にも引き渡せるようにする動きに対する抗議活動(逃亡犯条例改正反対運動・反送中)には住民のおよそ4人に1人にあたる約200万人が参加した。
しかし、状況は2020年に反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」(=国安法)の成立により、一変した。中国政府や香港政府に対する反対の声が厳しく抑え込まれ、街頭からデモや抗議が消えた。
香港における民主派の排除を狙う中共政府は、中共にとっての「愛国者」による香港統治をいっそう進めた。政府に批判的な立場の民主派の団体は、相次いで解散に追い込まれ、香港の民主派議員全員が辞任した。
「反乱の温床」と見なされた香港の教育現場においても、中国式の「愛国教育」も近年急速に進められ、教師は「国安法」への忠誠を求められている。
中学や高校の新版教科書は「香港は英国の植民地ではなかった」といったような、中共政府の意向に完全に沿った記述に変えられ、「(中共に)塗り替えられた歴史を生徒に教える」ことを教師は余儀なくされている。
そのため、「ウソを教えるくらいなら、いっそ教壇から降りる」と教育への情熱を持ちながら、涙をしぼって辞職する香港人教師も少なくない。
「国安法」施行から4年経ったいま、香港における反政府的な言動の取締りは一層厳しくなっており、かつての香港の自由は完全に窒息状態にあるのだ。
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