中国の大学が「琉球研究センター」設立へ 習近平関心の沖縄 党機関紙が喧伝する「帰属未定論」

2024/09/13
更新: 2024/09/16

香港紙・星島日報は中国遼寧省にある大連海事大学が沖縄関連の研究を目的とした「琉球研究センター」の設立を計画していると報道した。同紙によると、今月1日に大連海事大学で、設立準備のための研究討論会を開催した。北京大学や復旦大学などの専門家20人以上が招かれた。

共産党機関紙が喧伝する沖縄の「帰属未定論」

沖縄については、習近平が昨年6月、福建省と琉球の歴史的な交流に関する発言をしたことが注目を集めた。昨年6月初旬、中国共産党(中共)の機関紙・人民日報は、習近平の中国国家博物館への訪問記録を一面で報じた。尖閣諸島について明記された明代の抄本『使琉球録』の説明を受けた際、習近平は福建省福州市の党書記を勤めた当時を懐古して「福州と琉球の交流が深いことを知っている」と語ったという。

習の発言以降、官製紙やテレビ局で、沖縄の「帰属未定論」を広げる傾向にある。深センのテレビ局が13日琉球特集を報じたり、中国共産党に近い台湾メディア「中時新聞」もまた言論人の寄稿で、「ポツダム宣言では日本の主権を四島(北海道、本州、四国、九州)と定めており沖縄は明記されていない(沖縄帰属不明論)」と主張した。

2013年にも、習近平政権発足後間もなくして人民日報は琉球王国が明清時代に中国の属国であったとし、沖縄問題は「未解決」であると断じた。

フランス国防相傘下のシンクタンク「軍事学校戦略研究所(IRSEM)」が2021年に発表した報告書は、中国共産党は沖縄と日米に対して「離間の計」を施すと記している。

引き離す狙いは何か。沖縄史に詳しい一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚理事長によれば、現行の中琉交流が目指す「平和」は米軍基地および自衛隊の排除だという。「19世紀以来、植民地支配を受ける日本から解放され、東シナ海を平和の海にして、島に一兵たりとも置かない。これが落とし所だろう」

中国共産党による影響工作は三戦(世論戦、認知戦、心理戦)と呼ばれる。防衛研究所の飯田将史氏は中国の認知領域における戦いに関するコメンタリーで、「敵の行動や決定を自身の望むように誘導したり、情報の改ざんによって混乱を招き、投降や同士討ちを引き起こし、最小コストの勝利を目指す」と中国国内の論文を引用して解説している。

狙われる国土 沖縄のっとりの危惧も

15世紀から19世紀まで続いた琉球王国の初代国王・尚円王の故郷、伊是名村では今も毎年4月に玉御殿に葬られた尚円王を供養する行事、「公事清明祭」が執り行われる。

沖縄の伝記に名を残す伊是名村だが、その歴史が揺さぶられつつある。伊是名村の有する2つの無人島、屋那覇島と具志川島は、中国を含む外資によるリゾート開発計画が報じられた。関係者は、中国共産党の政治的な狙いを疑う。

出典:国土地理院撮影の空中写真(伊是名島、屋那覇島、具志川島)
 

昨年2月初旬、中国・山東省青島出身の30代女性が沖縄県の無人島・屋那覇島を「日本の無人島を購入した」とTikTokで流した動画が波紋を広げてた。中国国内のポータルサイトが取り上げ、ネット上で「中国の領土が広がった」「軍事基地を作ろう」などの書き込みも見られた。

屋那覇島は東京都の中国コンサルティング企業がリゾート開発のために2年前に取得したと公表している。島の約半分の土地が2020年から2度に渡り競売にかけられたが取り下げられた。

実際に何度か島に上陸したという不動産業のA氏は大紀元の取材に応え、屋那覇島の購入について数年前、同社から打診されたという。A氏はリゾート開発計画にからむ中国共産党の政治的思惑を疑っていた。

「30代の女性のSNS発信を不審に思う。超富裕層をターゲットにしたビジネスは目立つようなことは避ける。『私だって島は買えてしまうのよ』という挑発とも取れるアピールだ。政治的な狙いがあるのではないか。こう騒ぐことで、日本の姿勢を試しているのではないか」

小さい島の物件も取り扱うA氏には、女性のSNS発信以降、一日3件ほど問い合わせがあるという。

「中国人が運営する東京の不動産会社からだ。彼らは中国本土の顧客向けに仲介となって日本の不動産を案内している。こうした会社は今かなり増えている」

沖縄の物件については「相当センシティブ。中国のみならず外国籍の方には売れない。売主さんも考慮して売ろうとは思わないだろう」と述べた。

A氏は2012年の尖閣諸島国有化をめぐる中共との軋轢に触れ「国は国境離島にもっと国益を見据えて厳しい管理をするべきではないか。こうした土地を外国人に買われるなど失望させられる」と語った。

屋那覇島が南に位置するのに対し、北に位置するのは具志川島。この島でも、高級リゾートを運営するソネバグループ(ソヌ・シブダサニ最高経営責任者)の開発計画が報じられている。

2022年12月、琉球新報は具志川島でのソネバによる富裕層向けリゾート開発計画について伝えた。初期に200億円を投じ、水上区画コテージ23棟に加え、陸上に低層の客室129棟を建設するという。

ソネバの沖縄リゾート開発については、すでに4年前から公表されている。開発計画にあたり、シンガポールの政府系ファンドGICと米コロラド州デンバー拠点のプライベートエクイティ・KSLキャピタルパートナーズが2億ドル(約281億9300万円)以上を投資すると、KSLが2019年に公開している。

いっぽう前出の中国人女性は、ソネバと屋那覇島の売主との契約頓挫を知って、意欲的に同島の購入に取り組んだと杭州の天目新聞の取材に語っている。

女性は以前TikTokで、法務局や競売などを映した動画を公開。そこで「ソネバ屋那覇島プロジェクト」と書かれた文書ファイルを披露している。文書には島周辺の自然環境、船着き場、水上ビラ、給水施設などの記載がみてとれる。

民間企業の屋那覇島や登記、法務局の資料などを公開する女性のTikTok投稿動画(スクリーンショット)

一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚理事長は、「尚円王の生まれ故郷である伊是名村は、琉球の信仰と歴史にとって重要だ」と語る。

ながらく中国共産党の沖縄接近に警告を発してきた仲村氏によれば、外資による「伊是名島の全体を購入する」という話も耳にしたことがあるという。

「琉球王国に縁の深い伊是名島、ひいては沖縄のっとりも考えられる。歴史戦で攻めるのであれば、『戦わずして勝つ』つまり歴史を変えて未来をコントロールしようとしているのではないか」

このほか2018年3月に、中国共産党に近い、尚氏の末裔を称する男性が福建省を訪れ、沖縄と中国との距離を縮めようとした例を挙げた。

女性の目立ったSNSの情報発信について、意図的との見方は否定しつつ「のちに中国共産党は望むのであれば女性の不動産を入手しうる」と警告した。

実際、中国国内法の規定によれば「収用」は可能となる。時事評論家の唐浩氏によれば、民間企業あるいは個人による投資は、国防動員法や国家情報法により、当局が必要と判断すれば、国防や国家安全保障の名目でその資産を収用可能と解釈できるという。

大紀元日本 STAFF
関連特集: 浸透工作