人体のあちこちに潜むマイクロプラスチック 解決策は食用バイオプラスチック?

2024/10/21
更新: 2024/10/21

2018~2024年の約6年間で、人間の体内にマイクロプラスチックが存在することが全く知られていなかったことから、現在ではそれが人体の至る所にあることが明らかになった。

ここ6年で明らかになったマイクロプラスチックが人体に侵入している事実

2018年にウィーン医科大学の研究者らが発表した研究により、マイクロプラスチックが人体の中で発見されたと初めて明らかになった。研究では、検証のため8カ国(日本、英国、イタリア、オランダ、ポーランド、フィンランド、ロシア、オーストリア)の参加者それぞれから糞便サンプルを採取した結果、全員の便からマイクロプラスチックが検出された。

便10グラムあたりに平均20個のマイクロプラスチックがあり、50から500マイクロメートルのサイズの9種類のプラスチックが検出された。

ウィーン医科大学の研究によりこのトピックに関する研究熱が急上昇。2019年、世界自然保護基金(WWF)が発表した研究によると、人間が毎週約2000個のマイクロプラスチック片(クレジットカード一枚分に相当)を摂取していると推定されている。2020年、アイルランドの研究では、哺乳瓶で育てられた赤ちゃんが毎日何百万ものマイクロプラスチックとナノプラスチックを摂取していることが明らかになっている。

2020年には、マイクロプラスチックが消化器系以外にも体内に残留する可能性があることが明らかになった。アリゾナ大学の研究者が発表した研究では、遺体を解剖し、マイクロプラスチックを見つけるため臓器を検査した結果、肺や肝臓、脾臓、腎臓などすべての臓器にマイクロプラスチックの痕跡が発見された。

2022年には、人間の血液中や肺の中にもマイクロプラスチックが発見されている。

今年初めには、ニューメキシコ大学が発表した研究では、胎盤の組織に最も多く残留していた高分子化合物(ポリマー)はポリエチレンであると発見した。ポリエチレンはプラスチック全体の54%を占め、ポリ塩化ビニルとナイロンはそれぞれ約10%、残りは他の9種類のポリマーだった。

さらに、今年初めに発表された研究では、死亡時の年齢が16歳から88歳までの精巣で、2016年に解剖で入手し、人間の精巣23個と犬の精巣47個を検査した結果、すべてのサンプルからマイクロプラスチックが検出された。

生体蓄積性高い「永遠の化学物質」 

マイクロプラスチックが我々の人体のどこにでも潜んでいるという事実は、考えてみれば何ら不思議なことではない。日々の生活において物理的にプラスチックと飲食物との接触は避けられない。

実際、今年初めに米地質調査所が発表した研究によると、米国人の水道水の少なくとも45%には「永遠の化学物質(PFAS)」が含まれている。耐水性や耐汚染性を高めるため、コーヒーカップなどの内側にコーティングとして利用される。水に溶けやすいという性質も持ち合わせているため、工場排水などによって周辺の地下水や水道水の汚染が問題となっている。

PFASは、分子レベルで炭素原子がフッ素原子と結合しており、水や細菌の酵素などでは分解できないため、PFASは自然に分解されることはなく、人体や自然環境に長期間留まる。このように、生体蓄積性が高いため、「永久の化学物質」と呼ばれる。PFASは人体の中だけでなく、自然環境にも非常に長い間残留する。

一度人体や自然環境に残留すると、取り除くのは困難を極める。たった9か国(フィリピンやインド、マレーシア、中国、インドネシア、ミャンマー、ベトナム、バングラデシュ、タイ)が世界の海洋におけるプラスチック汚染の8割を占めている。先進国がマイクロプラスチック問題を解決しても、アジアの発展途上国で深刻な状況であるため、中々難しい問題だ。

プラスチック革命となるか 藻類由来のプラスチックで代替

プラスチック容器をプラスチックでコーティングされた繊維製の容器に変える代わりに、ごく近い将来、レストランでは海藻や藻類から作られたバイオプラスチックが使われるようになるかもしれない。海藻を原料とするバイオプラスチックは、永遠にPFASを一切使用せずに完全に自然の産物で作られるため、有効的な解決策となる可能性がある。

海藻を原料としたバイオプラスチックには多くの利点がある。化石燃料を使用せずに生産され、既存のプラスチックを製造するインフラと互換性がある。沖合いの農場から調達されるため、農業と競争することはない。藻類や海藻は世界で最も成長が早い植物の一つで、豊富に採取できる。ほとんどの場合、家庭にあるコンポストで分解可能で、工場級のコンポスト施設は必要ない。

藻類と海藻から作られたプラスチックは人体にとって安全で、生分解性がある。例えば、3ヶ月前にカリフォルニア大学サンディエゴ校が研究結果を発表した。藻類ベースのプラスチックは普通のプラスチックと同等に耐久性があり、研究者らはそれが堆肥化されやすい場所と水中に置き、どれだけ生分解するかを試験し、藻類ベースのバイオプラスチックを従来の石油ベースのプラスチックと比較した。両方のサンプルを非常に細かい微粒子になるまで粉砕し、堆肥化されやすい場所と水中に置いた。

堆肥化されやすい場所では、藻類ベースのプラスチックが微生物によって分解されたが、従来のプラスチックは分解されなかった。水中では、藻類ベースのプラスチックはよく溶解した。90日後にはバイオプラスチックの32%、200日後には3%のみが残り、約7ヶ月で約97%が生分解された。生分解率が0%の従来のプラスチックと比較して驚異的な数値だ。

こうした技術がすでにあるのなら、なぜ広く使用されないのか。主な要因は価格にある。現在、海藻ベースのバイオプラスチック製の容器は、化石燃料で製造されたプラスチック製の容器に価格で勝つことはできない

近い将来変革する見込みもある。米スウェイ社は海藻から作られた熱可塑性樹脂を発明。この樹脂は家庭で堆肥化可能で、プラスチックを製造する現行のインフラで作ることができる。つまり、スウェイ社は世界中の国々にすでに存在する既存のプラスチックを製造する機械で海藻樹脂を作ることができ、代替が簡単でコストも抑えられる。

インドのゼロサークル社は、プランクトンから作られた食品容器用のコーティング剤を開発している。このコーティング剤はリサイクル可能で家庭で堆肥化でき、実際沸騰水では数秒で、海水では数時間で溶け、約4ヶ月で堆肥化して分解する。今年後半にフィルムメーカーに製品の販売を開始する予定。

食用カップを製造するロリウェア社、食用フィルムを製造するフレキシ社、生分解性インクを製造するオーシャンニアム社など、食用海藻をベースとしたバイオプラスチックの産業が存在している。

米国のエポックタイムズ記者。EPOCH TVの番組「Facts Matter」で司会を務め、国内外で抗議、暴動、選挙の取材経験を持つ。エポックタイムズのCMプロデューサーも務める。
関連特集: 社会