ハリス背水の陣 経済界大物が支持撤回

2024/10/29
更新: 2024/10/31

11月5日のアメリカ大統領選挙投票まで2週間を切り、選挙情勢は激化している。10月24日の最新の世論調査によると、トランプ氏は7つの激戦州でハリス氏に対してリードしている。この状況と最近の傾向は、トランプ氏の支持率が上昇し、ハリス氏が下降していることを示している。しかし、これらのデータは誤差範囲内で、平均してわずか0.9ポイントのリードである。

過去2回の選挙でトランプ氏の支持率は過小評価される傾向があったことを考慮すると、こうした選挙情勢はアメリカの各層にかなりの影響を及ぼし、場合によっては一定の動揺を引き起こす可能性がある。

メディアの立場変更

そのため、10月25日にワシントンポストは非常に珍しい決定を下した。これは数十年ぶりのことで、同紙は今後いかなる候補者も支持しないと発表した。彼らは数十年前の伝統を復活させ、ニュースメディアとして中立かつ客観的であるべきで、政治に巻き込まれず、いかなる候補者も支持しないと述べた。しかし、注目すべきは、同紙が数年前まで、オバマ氏とヒラリー氏を支持し、彼らに賛同していたことである。このニュースが報じられた際、ワシントンポスト編集部はすでにハリス氏を支持する記事を執筆していたが、その記事は背後にいる大物、つまりオーナーであるアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏によって差し止められた。このため、一部の編集者が憤りを感じて辞職する事態が発生した。

2017年を振り返ると、ワシントンポストは当時トランプ氏に対して強い反対姿勢を取っており、ウェブサイトには「民主主義は暗闇の中にある」とまで記載していた。これはまさにトランプ氏に対する反対の表れであり、彼が民主主義を抑圧しているとの批判を込めたものであった。しかし、今回はその背後にいる大物がこのような指示を出したのである。

ワシントン・ポストだけでなく、数日前にはロサンゼルス最大の新聞であるロサンゼルス・タイムズも同様の立場を表明した。編集部はハリス氏を支持し、彼女を支持する声明を出そうとしたが、背後にいるオーナーである華人のパトリック・スン・シオン氏がその行動を中止させた。彼が中止を命じた後、複数の編集者が耐えられず辞職した。彼らは本来ハリス氏を支持するつもりだったのである。 

経済界の大物が次々と支持撤回

これらの大物には、この二人だけでなく、ビル・ゲイツ氏も含まれている。報道によると、彼はハリス氏を支持する政治団体に5千万ドルを寄付したが、その情報が公開された後、特定の候補者を支持することを否定する声明を出した。

JPモルガン・チェースのCEOであるジェームズ・ダイモン氏は公にトランプ氏を称賛しているが、実際にはハリス氏を支持しているとの報道がある。しかし、彼は特定の候補者を支持することを否定する声明を発表した。

過去にはこれら二人の大物が一貫して民主党を支持してきたが、今回は重要な局面で支持しないという異例の態度を示し、実質的に後退した形である。

さらに、ウォーレン・バフェット氏も特定の候補者を支持しないと声明を発表し、彼も過去の数回の選挙で民主党を支持していた。このような状況の中、副大統領のカマラ・ハリスは厳しい戦いに直面している。前方にはトランプ氏と共和党の批判や攻勢が立ちはだかり、後方には何が控えているのだろうか。

内部で意見の相違が生じ、情勢が逆転し始めたため、ハリス氏は厳しい戦いに直面している。いわゆる背水の陣の状況だ。世論調査の状況も非常に微妙で、先ほど言及した平均支持率はわずか0.9ポイントのリードで、依然として接戦の状態である。これは誤差範囲内で、ハリス氏とトランプ氏のどちらも勝利する可能性がある。

左派メディアの応援が逆効果

このような状況の中で、民主党内では多くの議論が行われ、メディア間でも積極的に対策を検討している。特に左派メディアは不安を強く感じ、さまざまな分析を行っている。その中にはCNNも含まれている。CNNは10月23日に市民集会を開催し、アンダーソン・クーパー氏が司会を務め、ハリス氏にインタビューを行い、現場からの質問にも応じた。

カマラ・ハリス氏は集会で孤高の戦士のように振る舞い、勇敢にインタビューを受けた。私の考えでは、CNNは確かにハリス氏を支援し、迷っている有権者を引き寄せようとしていると思う。

しかし、いくつかの評論によると、今回のインタビューは失敗に終わったようだ。CNNの司会者は攻撃的で、ハリス氏に対して多くの鋭い質問を投げかけた。ハリス氏は自分の戦略を持っているため、このような大きな場で間違ったことを言いたくないと考え、非常に保守的に振る舞い、いくつかの敏感な問題については回避することを選んだ。

そのため、CNNは少し焦っているようなので、事前に十分なコミュニケーションが取れていなかったのかもしれない。とにかく、司会者は繰り返し質問し、ハリス氏は常に逃げるようにしていた。

例えば、イスラエルに関する質問で、司会者はハリス氏に対してトランプ氏よりもイスラエルを支持するかどうかを繰り返し尋ねたが、ハリス氏は応答しなかった。司会者が繰り返し質問する中、ハリス氏は他の話題に移り、トランプ氏を批判することさえあった。

このような対話が5~7分間続いたが、ハリス氏は結局、正面からの回答を避けた。CNNの司会者や評論家が後の議論で指摘したように、CNNはハリス氏に直接自らの立場を表明させ、中間層の有権者を引き寄せ、トランプ氏に対して迷っている支持者を引き込む機会を与えようとした。

しかし、結果としては逆効果となり、多くの人々を遠ざけた。10月23日と24日の世論調査では、トランプ氏がハリス氏を急速に追い越すことを示した。したがって、CNNのこのタウンホールミーティングは実際に失敗に終わった。ハリス氏が特定の問題から逃げるように見えた。

ザッカーバーグ氏は公に政治に関与しないと表明

次に、経済界の重鎮たちの状況について話そう。最近、確かにいくつかの風向きの変化が見られる。先に言及したビル・ゲイツ氏、ジェームズ・ダイモン氏、ジェフ・ベゾス氏、そして華人のパトリック・スン・シオン氏は、公開の場で特定の候補者を支持しないと表明している。これまで彼らは民主党の大統領候補を支持してきた。今回はハリス氏の支持者が支持を撤回することを選び、ハリス氏は困難な挑戦に直面している。

さらに、Facebookの創設者ザッカーバーグ氏も1、2か月前にメディアで同様の状況が報じられた。

ザッカーバーグ氏は、トランプ氏が暗殺未遂事件に巻き込まれた際にトランプ氏と電話で連絡を取ったと述べている。その時はまだ、バイデン氏が選挙戦を撤退する前であり、バイデン氏とトランプ氏が選挙戦を繰り広げている最中であった。彼は暗殺未遂事件後にトランプ氏と二回の秘密の電話を交わし、トランプ氏に慰めの言葉を伝えた。また、Facebook上にいくつかの暗殺予告の投稿が現れたため、彼はそれらの投稿を削除し、トランプ氏に謝罪した。この行動は彼がトランプ氏との和解を望んでいることを示している。

ザッカーバーグ氏は公に政治に関与しないと表明し、過去の政治参加が幼稚だったと認めているが、同時にバイデン政権から特定の投稿を審査するよう圧力を受けていたことを明らかにした。彼はこれを不当だと考えている。このような政治的な発言は、彼が政治から距離を置こうとしていることを示しているが、一方で、実際には富豪たちの動向が現在の選挙情勢に警告を発していることを反映した退却の信号でもある。

選挙戦略と世論の流れ

副大統領のカマラ・ハリス氏は、現在、厳しい競争に直面している。彼女の状況は厳しいが、全く希望がないわけではない。選挙情勢は非常に緊迫しており、世論調査の結果も誤差範囲内にあるため、勝者と敗者はまだ不明である。左派メディアは次々と選挙情勢を分析し意見を発表しており、『ニューヨーク・タイムズ』も関連する記事を掲載している。

ハリス副大統領は中間層の有権者や共和党の有権者を強く引き寄せたいと考えている。彼女がバイデン大統領に代わって大統領選に出馬したとき、その勢いは非常に良好で、世論調査の支持率は急激に上昇し、一時はトランプ前大統領を上回ることもあった。最初はトランプ氏の支持率がバイデン氏を上回っていたが、ハリス氏が出馬してからの短い期間で、彼女の支持率はトランプ氏を数ポイント上回るようになった。さらに、彼女の資金調達も迅速に10億ドルを突破し、彼女は自信を示していた。

しかし、時間が経つにつれて、ハリス氏の政策は徐々に共和党に寄り添う方向にシフトし、中間層の有権者を引き寄せようとしている。『ニューヨーク・タイムズ』の分析によると、現在の選挙情勢は非常に急速に変化しており、短い期間の中で何度も波があった。蜜月期が終わった後、彼女の支持率は緊迫し始めた。彼女のチームがまだ反応できていない間に、彼女は一方的に共和党の有権者を引き寄せようとし、国境問題などの複数の問題で中間的な立場を模索したが、その結果、逆に左派の基盤を失ってしまった。

『ニューヨーク・タイムズ』の記事によれば、彼女はこの基本的な支持基盤を失ったとし、特に多くの労働者階級や貧困層の有権者を失ったと指摘している。ハリス氏は元々中産階級をターゲットにしていたが、左派民主党の伝統的な支持者は、貧しい農民や労働者階級だ。この党の文化は貧しい人々や労働者階級を重視している。彼女の政策の転換は、元々の支持基盤に影響を及ぼしてしまった。

ハリス氏は気候変動、国境問題、移民問題などの特定の議題を強調していない。彼女の戦略は、トランプ氏に接近することだ。トランプ氏は常に彼女を批判し、彼女があまりにも自由主義的で左寄りであると非難している。ハリス氏はこのイメージを変え、中間層や白人の有権者を引きつけたいと考えている。しかし、このような努力は間に合わない可能性があり、逆に彼女は支持基盤を失い、支持率が低下する結果を招いている。これは『ニューヨーク・タイムズ』の分析だ。

対中政策

次に、ハリス氏とトランプ氏の対中政策、つまり中国共産党(中共)に対する態度の違いを分析する。『エコノミスト』は10月23日に、両者の違いを詳しい分析記事で発表した。この記事では、ハリス副大統領が多くの問題においてバイデン大統領とほとんど違いがないことが指摘され、彼女自身も両者を区別するのが難しいと認めている。

現在の経済状況では、インフレが市民の生活に圧力をかけており、これは彼女の選挙にとって不利だ。世論調査によれば、人々は彼女がバイデン氏と距離を置く必要があると考えているが、多くの問題において彼女はその実現に至っておらず、二人は依然として一緒にいるように見える。結局、過去4年間の政権運営において、大統領と副大統領の政策は互いに影響し合っている。

『エコノミスト』の分析では、カマラ・ハリス氏の中共に対する政策の立場は比較的明確であると示している。記事では台湾問題に関する具体的な例を挙げている。

中共による台湾侵攻の可能性が浮上した際、メディアがアメリカの出兵の有無や台湾の強硬な防衛の可能性を問い詰めたとき、バイデン大統領はためらわずに「私は台湾を守るために出兵する」と四度も明言した。この発言はホワイトハウスとそのスタッフを驚かせ、ホワイトハウスは「一つの中国政策は変わっていない。私たちの台湾に対する政策も変わっていない」と何度も説明し、強調している。

実際、アメリカは以前から中共に対してあいまいな政策を採用していたが、バイデン大統領の発言は非常に強硬だった。それに対して、ハリス副大統領は関連する質問に対して比較的穏やかな態度を示し、バイデン大統領のように強硬ではなかった。彼女は直接的に質問に答えず、米中関係を「競争」と定義した。

さらに、アメリカの最大の敵は誰だと問われた際、ハリス副大統領はイランだと答えた。現在、アメリカの政治家や政界では中共が最大の敵と広く認識されており、バイデン政権も中共を21世紀におけるアメリカの最も強力な対抗者と考えている。その理由は中共が必要な能力や経済力を持ち、アメリカの世界的な覇権に挑戦する野心を抱いているからである。

ハリス副大統領は、当時中東の紛争はイランがミサイルを発射するなどの行動でアメリカに脅威を与えたと考えているため、イランが原因だと述べている。そのため、彼女の発言は中共に対する穏健な立場として解釈され、独裁者を変えるためには協力と交渉を通じて行うべきだと強調している。彼女の広報担当者もこのように説明しており、このため彼女の立場は中共との協力を示すものと見なされ、結果として、弱いと見なされている。

一方、トランプ氏は全く異なる立場を取っている。最近数日間、『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載された特別インタビューを、10月18日に発表している。このインタビューで、トランプ氏は習近平に言及し、記者から直接質問された「中共が台湾を武力封鎖した場合、アメリカは出兵するのか?」という問いに対して、「武力を行使する必要はない」と答え、習近平に対して非常に尊敬しているという含みを持たせたかのように述べた。

習近平は自分が非常識であることを知っていると説明した。以前、トランプ氏はメディアで「北京が台湾を攻撃した場合、私は北京に反撃する」との意向を示し、この発言は彼の強硬な立場を示しており、彼自身が「非常識」であることを強調している。

同じインタビューの中で、トランプ氏はプーチン氏に対しても威嚇し、クレムリンを爆破すると主張した。これらの発言はすべて強硬な姿勢として受け取られている。トランプ氏は10月25日にテキサス州オースティンで演説を行った後、記者からハリス副大統領の中国政策についての見解を尋ねられた。

トランプ氏の回答は明らかに攻撃的で、ハリス氏が中共によって子供のように欺かれたり、いじめられるだろうと述べた。トランプ氏は「いじめ」という言葉さえ使った。したがって、ハリス副大統領は今後、より強硬な対中政策の声明を発表するであろう。なぜなら、メディアがこの政策をすでに公にしているからである。アメリカの大統領は民選であり、民意に応える必要がある。バイデン氏が就任した際にも、対中政策が疑問視され、彼はすぐに調整を行った。

結局、バイデン氏の立場は、トランプ氏よりも強硬であり、中国に対する政策もさらに厳しくなっている。したがって、私はハリス副大統領が中共に対する政策において、メディアが言うように弱腰や穏健にはならないと考えている。しかし、現在の表明は確かにトランプ氏に遅れをとっているため、今後、数日(すうじつ)で新たな表明があると予想しており、その動向を私たちは注視していく。

唐青