軟肋(ルヮンレイ)
軟肋とは本来、肋骨(あばら骨)のことだが、骨折しやすい部位であることから「弱み」の意味でも使われる。
昨今の中国では、この「軟肋」が悪辣な場面で使われる。
例えば、中国共産党(中共)の当局者が正当な権利を主張する市民を威圧する時に、これを言うのである、「余計な波風を立てるな。おまえは自分の肋骨を考えろ」と。
背景を知らない日本人には、不可解な会話にしか見えない。それもそのはずで、中共統治下の中国では、日本では想像もつかないほどの個人情報を当局が握っており、それをあからさまな脅迫に使うからだ。
海外に出て、中国の民主や人権を主張する中国人にとっては、国内に残留する親族が「軟肋」、つまり「人質」となっている。
ネット上には「中国の若い世代は結婚しないし、子供ももたない。軟肋をあえて作りたくないから」という言葉が並ぶ。
上海のロックダウンの際に流行語になった「我々は最後の世代だ」は、もう軟肋(弱み)はないぞという決意の表明である。
つまり、現代中国において、「軟肋がいない」ことは、ある意味「勝ち組」なのだ。
最近も、ある学校役人が、地方政府の命を受けて、生徒の保護者に対し「中国選挙民意識」という名のSNSチャットグループからの退出を求めたことがわかった。その際に脅しに利用されたのが、その保護者の「軟肋」である子供の「入党と前途」だったという。
「軟肋」を使って保護者に医療保険料の支払いを強要
近年、中国では医療保険の加入者が年々減っているため、医療保険制度は破綻寸前である。そんななか、地方政府は学校に命じ、「教師が、生徒の親に、保険料を支払うよう催促させる」現状があり、一部教師から反発が起きている。
先月31日、教育局に苦情を申し立てる教師の通話録音がSNSに流出した。
湖南省衡陽市の学校に勤めるこの教師は、教育局に対し、「なぜ医療保険料金の支払いの催促のような仕事をやらされなきゃいけないだ? 本末転倒だろ、それは学校の任務ではないだろう」と訴えた。
また、「衡陽市全体にそのような問題が存在する」というのだ。
(「なぜ医療保険料金の支払いの催促のような仕事をやらされなきゃいけないだ?」と教育局に苦情を申し立てる教師の通話録音)
先月25日も、子供が学校から持って帰ってきたという「保護者宛ての手紙」というタイトルのプリントを手にした湖北省の男性がSNSに怒りの投稿をしていた。
そのプリントは「医療費の支払いを催促する内容」のもので、同保護者によれば「その言い方は強制的、脅しともとれるものだった」というのだ。
「医療保険局はつぶれたのか? なぜ教育局がこんな仕事をする? 医療保険と学生を縛り付けようって魂胆なのか!」と男性は怒り心頭だった。
中国において、医療保険に加入するかどうかは「任意」だ。中国政府もそのように主張しているが、実際は、各地の学校が、現地教育部門から「任務」として支払い催促をやらされている現状がある。
毎年10月になると、多くの学校は生徒家庭の医療保険加入状況を統計し、「できるだけ早く保険料を納付せよ」と保護者に促す。生徒の保護者が入る学校SNSのチャットグループのなかにまで「医療保険払え」の催促メッセージが送られてくるという。
「本当は医療保険になど加入したくない。しかし加入しないと子供が学校で差別され、いじめられるのではないか。子供の進学や将来に影響を及ぼすのではないか?」と保護者たちは非常に難しい境地に立たされている。
「自分たちの軟肋(子供)に付け込んだマネするなんてあんまりだ」と不満の保護者も多い。
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