中国の医療現場における過剰医療や不適切な治療に関する問題が再び注目を集めている。
上海光澤医院で不必要な治療を受けた男性が、全財産を失い、さらなる苦痛に直面した件は、中国国内外で議論を呼んでいる。これは氷山の一角に過ぎず、多くの患者が同様の問題に苦しんでいる。本記事では、具体的な事例と中国医療システムの構造的な課題について掘り下げてゆく。
中国の病院では、どの科にも「売上ノルマ」が設けられ、基本給の安い医師は、過剰な処方および過剰医療などを行い、そのキャッシュバックをもらう。これは中国においては誰もが知る常識である。
中国のネット上にはがん患者が「病院が健康な部位を切除した」あるいは「健康な部位まで(がん治療用の)放射線を当てられてしまった」と訴える投稿をしばしば見かける。世論の注目を集められない場合、大抵は「どこへ訴えても相手にされない」という結末に終わる。
先月にも、湖南省に住む男性は、病院には「5万元(約105万円)しかないとはっきり告げたのに、32万(約675万円)近い請求が来た」とSNSに訴え、中国メディアにもアピールして頼った。
現代の中国では、「問題を解決したければ、世論に頼るしか道はない」が常識になりつつある。
全預金注ぎ込んだ「必要のなかった治療」
9月、「体がかゆい」と感じた上海の出稼ぎ労働者の張さん(男性)は「上海光澤医院(民営)」へ診察を受けに訪れた。すると「ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した」と診断された。医師から「炎症もあるし、今すぐ治療しないと大変なことになる! このまま癌になる可能性だってある!」と告げられ、言われるままに治療を行うことになった。
10日間に及ぶ治療で2万7千元(約58万円)かけた張さんは貯金を使い果たした。しかも病院からは「まだ治っていない」と言われた。張さんは、病院から自宅で治療を続けるための薬(約1万円前後)を処方された。
「治療が必要といわれ、医師の治療方針を受け入れたが、治るどころか、体はもっと痒くなった。頭に発疹ができたり皮がむけたりして、逆に悪くなった感じすらした。そこで、原因を突き止めるため、上海の別の病院で検査を受けたら、『病気になどかかっていないし、治療の必要は全くない』と言われたよ」
「自分は病気治療のために、多くの心理的な圧力に耐えてきた。しかも、仕事まで辞めている」と張さんは訴えた。
「いったいどういう事だ!」と怒った張さんは治療を受けた病院(「上海光澤医院」)に「納得のいく説明」を求めた。しかし、病院からは満足のいく答えが得られなかったため、張さんは関連部門やメディアに訴えた。
何度も言うが、現代の中国では、「問題を解決したければ、世論に頼るしか道はない」のだ。
幸い、不運な張さんの境遇を伝える中国メディアが現れた。
今月11日、中国メディア「新民晚報」はこの件をめぐって問題の病院に電話取材をした。すると、病院は「張さんの治療費を全額返金し、さらに2か月分の給料を補償する」と回答したのだ。
しかし、張さんは「病院側の態度に全く誠意がない!」として、「再発防止のための原因究明と処罰を明らかにするよう」求めている。
中国メディアによれば、この病院をめぐっては、過去3か月の間に「患者に過剰な治療を誘導した」と訴えるSNS投稿が相次いでいたという。
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