11日夜、中国広東省珠海市のスポーツ施設の敷地内でSUVが暴走し、散歩やランニングをしていた市民を次から次へと轢き飛ばす「社会報復事件」が起きた。
死者35人と公表されているが、中国共産党(中共)当局は、災害や社会報復など社会の不安を引き起こしかねない事故や事件が起きるたびに一貫して被害情報の隠蔽を行い、過少報告する傾向があるため、今回の事件による実際の死傷者数も、公式発表をはるかに上回る可能性がある。
事件の後、中共当局は大規模な「安定維持」計画を開始している。
事件が起きた珠海市では市全体の警備レベルを引き上げ、接触及び衝突事故を防止するための石の置物が売り切れになった。
(売り切れ御免の「石の置物」)
社会報復しかねない「潜在的リスク」を排除?
珠海市では「四無五失」と呼ばれる人員に対する登記および捜査も行われている。
「四無五失」とは、配偶者なし、子なし、仕事あるいは安定した収入源なし、不動産などの資産なしの「4つ無し」。
そのほか、「五失」とは、投資で失敗した、人生に失敗した人、人間関係に失敗した人、精神的に病んでいる人という「5つの失敗」。
ようするに、もはや失うものがない絶望した者、もっと平たく言えば、いつ社会報復に走ってもおかしくない人たちのことだ。
珠海市に限らず、広東省の他の地域でも同様の措置が講じられている。なお、他の地方では、「八失」や「三低・三少」のグループも登記・捜査対象としている。
「八失」とは投資に失敗した、失業した、人生に幻滅した、失恋した、人間関係が上手くいっていない、精神的に病んでいるなどの「8つの失敗」だ。
「三低・三少」とは、経済的収入が少ない、権力や社会的地位・社会的名声が低い、人との接触頻度が少ない、移動する機会が少ない、悩みを相談できる所が少ないなど。
いまや「四無五失」や「八失」、「三低・三少」といった言葉が中国SNSでハッシュタグにもなるほど、話題になっている。
「こんな基準であれば、(基準に達した者は)全人口の90%を占めるのでは?」「そうして危ないグループを特定した後、彼らをどうするつもり? 全員強制収容所に送るのか?」など華人圏では、当局のやりかたに疑問を呈する声も多く上がっている。
なかには「中共による暴政が続く限り、こんな措置は無意味」とする声も。
こうした歩行者の安全を守るための「石の置物」が売り切れになる事態や「四無五失」グループへの捜査をめぐり、中国人独立系時事評論家の蔡慎坤氏は自身のSNSに次のように評した。
「(石の置物を置くような)原始的な防衛手段は確かに車が特定のエリアに突っ込むのを阻止することができるが、中国には4億台を超える自動車がある。街中が凶器だ。次は車を禁ずるのか?」
「習近平がいわゆる『重要な指示』を行って以来、中国じゅうで『四無』や『五失』といった特定のグループに対する捜査が行われている。しかし、今は景気悪化、失業率急上昇のなか、広州(広東省)の9月の失業率は37%(公式統計)と高く、弱者層が拡大している。これら人たちの最大の特徴は失うものがないことだ。つまり、この人たちこそ、習近平政権下において防ぎようがない集団だろう」
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