食用コオロギの生産・加工などを手掛けるベンチャー企業「グリラス」が7日、徳島地裁に破産手続きを申し立てた。負債総額は1億5300万円あまりに上る。
2023年に徳島県内の高校で希望する生徒にコオロギの粉末を使用した給食が提供され、SNSで拡散したことから安全性を懸念する声や苦情が殺到した。
その後、コオロギを「食用」としてではなく「飼料」として大量生産する新事業を模索したが、設備の導入に必要な国の補助金が得られなかったため、事業継続を断念した。
グリラスは2019年5月に設立された徳島大学発のベンチャー企業で、企業名はフタホシコオロギの学術名に由来する。グリラスは食用コオロギの生産・加工の他、食用のコオロギパウダーを使用した商品の開発や販売も手掛けている。
グリラスの商品には、コオロギせんべいをはじめ、クランチ、カレー、プロテインバー、コーンスナックなどがある。
FAO(国連食糧農業機関)は世界的な食料問題、特に動物性タンパク質不足の解決策として昆虫食を持続可能な食材として推奨している。
コオロギは牛や豚、鶏など、既存の畜産と比べて1キログラムのタンパク質の生成に必要な餌や水の量が圧倒的に少なく、環境負荷の低いタンパク源とされている。また飼育が容易で成長が早いほか、食品ロスを餌として活用できる循環型食品(サーキュラーフード)としての特性も備えている。
今回グリラスが破産した事例は、日本における食用昆虫の課題を再度浮き彫りにした。過去にも日本のある製パン企業がオンラインショップ限定で、コオロギ粉を使用したパンを販売し、SNSで炎上した。消費者の受け入れ度合いや安全性への懸念、規制の問題などがあり、克服すべき課題は多くなっている。
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