児童のSNS禁止は逆効果になる可能性

2024/11/24
更新: 2024/11/24

年内にも、少なくとも1つの国がソーシャルメディアをほぼ大人専用にする計画を進めている。
詳細はまだ確定していないものの、Instagramのようなプラットフォームにアカウントを持つことが合法になるのは16歳以上からになる見通しだ。これに関して、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、「ソーシャルメディアが社会に害を及ぼし、子供たちを本当の友達や実体験から遠ざけている」と述べた。また、「親たちは子共をスマホから解放して、フットボールのグラウンドに送り出したいと思っている。それは私も同じだ」と付け加えている。
同氏は 「もはや我慢の限界だ。この措置を取る理由はそこにある」と明言した。

まあ、それは明らかだよね? そして、この動きは国民のかなりの支持を得ているようだ。今年8月の調査では、オーストラリア人は16歳以上にソーシャルメディア利用を制限することを支持していると示された。特に、子供のインターネット利用、とりわけティーンエイジャーの管理に頭を悩ませている世界中の親たちにとって、この制限は歓迎されるものだろう。これは新しい問題であり、多くの若い親世代には自分たちの育児経験にないものだ。

一方で、カナダが同様の措置を検討しているという明確な兆候はまだ多くない。FacebookやYouTubeがすでに13歳未満の利用を制限していることが、その理由かもしれない。しかし、政治家は票を得るために行動するものだ。したがって、近い将来、カナダでもアルバニージー首相の施策に似た案を議会の一部が提案する可能性があるだろう。結局のところ、「子供を守る」というスローガンは広く支持を集めるテーマだからだ。

確かに、カナダでは自由で開かれたインターネットの時代は終わりを迎えた。そして、アルバニージー氏のように「ソーシャルメディアが社会に害を及ぼしている」と考える人が増えている。その背景には、メディアがソーシャルメディアによる悪い出来事を報じがちな一方で、そのメリットを無視する傾向があることも影響している。「飛行機が無事に着陸したというニュースは報道されない」という古いことわざを思い出させる状況だ。

現在のところ、ソーシャルメディアと若者の幸福との間に因果関係があるという十分な証拠は存在しない。168か国を対象とした最近の研究でも、この結論は変わらない。

また、年齢確認の課題もある。オーストラリアは12月1日から、同国に住む人がオンラインで自分の身元を証明できるように設計された「自発的な」デジタル身分証明システムが導入される予定だ。しかし、ソーシャルメディア利用に年齢制限を設ける計画が実現すれば、これは「自発的」ではなくなり、すべてのユーザーが自身の年齢を証明しなければならなくなる。

さらに、ティーンエイジャーたちは狡猾であり、親が安心している間にVPN(仮想プライベートネットワーク)を利用して、デジタル上でオーストラリア国外に移動し、新たな法律を回避する可能性がある。また、Instagramで時間を費やす代わりに、ビデオゲームやテキストメッセージを通じて新たなソーシャルネットワークを形成するかもしれない。つまり、アルバニージー氏が期待するような若者たちがフットボール場やクリケット場、ジム、プールに集まる未来が実現するとは限らない。

さらに、親の管理よりも国家の介入を優先することで、ソーシャルメディアの恩恵をも若者から奪い取るというリスクもある。

クイーンズランド工科大学のダニエル・アンガス氏は、オーストラリアの計画について「証拠に基づく政策を完全に無視したものだ」と批判し、「若者をデジタル世界での健全な参加から排除し、質の低いオンライン空間に追いやることで深刻な危害を及ぼす恐れがある」と述べた。

「この規制では、大規模なオンラインプラットフォームがコンテンツの質を改善するために必要な改革を実施せずに済んでしまうという問題があります。つまり、問題の本質を改善するのではなく、単に入り口に規制を設けるだけに終わってしまうのです」と、同氏はLinkedInの投稿で指摘している。

カナダでは、これまでに一連の問題をはらむデジタル政策が導入されてきた。例えば、オンラインストリーミング法や、カナダ放送通信委員会によるインターネット上の音声・映像の管理は、NetflixやSpotifyからの批判を受け、「ストリーミング税を廃止せよ」というキャンペーンが展開されている。また、デジタルサービス税は広告主に負担が転嫁され、オンラインニュース法はFacebook上でニュースリンクが表示されなくなる結果を招いた。さらに、Bill S-210によりオンラインでの年齢確認が求められ、オンラインハーム法案は表現の自由を抑制する恐れがある。

これは本当にひどい実績だが、さらに多くの政策への布石となっている。私たちはみな、子供たちが安全でいてほしいと願っている。もちろんそうだ。しかし、私たち全員にデジタル ID の提出を強制しながら、子供たちをインターネットの「影の部分」や危険な空間に追い込むことは、その大義の実現にはつながらないだろう。

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。