17日に行われた知事選挙で再選を果たした兵庫県の斎藤元彦知事。選挙期間中、SNSを活用した戦略が特に注目され、SNSや動画サイトをよく利用する層での好感度が高かったことが報じられた。
しかし、選挙後に斎藤知事の陣営がSNS運用をPR会社に委託していたことが明らかになり、公職選挙法違反に当たるか否かが取りざたされている。
問題の発端は、兵庫県内のPR会社「株式会社merchu(メルチュ)」の代表が、選挙後に投稿サイト「note」に「兵庫県知事選挙における戦略的広報」と題したコラムを投稿し、斎藤知事の選挙戦で「広報全般を任された」と記述したこと。この中で、同社がSNS運用戦略の立案やコンテンツ企画などを担当したと述べていた。
公職選挙法では、選挙運動に対して報酬を支払うことは原則として禁止されている。例外として、事務員やウグイス嬢などに対する報酬は認められているが、SNS戦略の企画立案に対する報酬はこれに該当しない可能性が高い。そのため、PR会社に対して報酬が支払われていた場合、買収に当たるのではないかといった指摘が噴出している。
PR会社の代表が「仕事」としてSNS運用を行ったと主張している一方で、斎藤知事側はこれをボランティア活動と認識しており、認識の相違が問題となっている。
こうした中、斎藤氏が27日、神戸市内で記者会見を開き、「公職選挙法に違反する行為はない」と強調した。
PR会社の代表の投稿内容については、「事前に私は一切見ていないし、そういった発信をするということも聞いていない。内容自体も一切確認しておらず、発信されたあとに知った」と説明した。
斎藤知事の代理人を務める奥見司弁護士は、「報酬支払いの事実、約束もないことから、公職選挙法で禁止されている運動員買収には当たらない」と違法性を強く否定した。PR会社への支払いは「製作費として70万円ほど」であり、契約は口頭契約だったと説明している。
斎藤知事側は、PR会社への支払い金額(約70万円)の内訳を明らかにしている。内訳は以下の通り。
公約のスライド制作ー30万円
チラシのデザイン制作ー15万円
メインビジュアルの企画・制作ー10万円
ポスターデザイン制作ー5万円
選挙公報デザイン制作ー5万円
そのうえで、「広報全般を任せたとかは、全く事実ではない。(内容を)盛っている・盛っていないでいえば、盛っている」と指摘した。また、PR会社への法的措置についても言及し、奥見氏は「現段階では考えていない。今後の事態推移では当然あり得る」と述べた。
では、適法なのか違法なのかどちらなのか。
弁護士で中大法科大学院教授の野村修也氏が27日までに自身のSNSで、「斎藤知事の選挙の際にPR会社の社長が、デジタル戦略の企画・運用を任され、それをnoteで自慢しても、選挙期間中のその活動が個人のボランティアで行われたのであれば、何ら法的な問題は生じない」と投稿した。
また、「告示前の立候補準備行為だけは有償で請け負えるので、その分について70万円が支払われただけの事案」と述べ、適法だとの見方を示した。
また、関西のテレビに出演した弁護士の山岸久朗氏も、公職選挙法違反の認定はハードルが高いと指摘。山岸氏は、選挙運動を他人に頼んでお金を払うことは買収にあたるが、例外としてポスター製作やビラ作成、事務員の雇用などは許されていると説明している。現在の状況では、斎藤知事側の説明が事実であれば、違法性は否定される可能性が高いと述べた。
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