欧州連合(EU)は、中国製設備を事実上排除する新たな規定を水素生産補助金計画に追加する方針だ。過去、太陽光パネル産業における中国企業の市場支配がEU産業の衰退を招いた反省から、同様の事態を防ぐ狙いがある。
水素エネルギーを推進するための資金支援機関である欧州水素銀行は12月3日、第2回目の補助金入札を開始する。新規定では、中国製の電解槽(製造水素装置の主要部品)が生産能力の25%以上を占める場合、補助金の対象外となる。
2024年4月に行われた第1回目の入札では、補助金の受給が決定した企業のうち、15%が中国製の電解槽を使用する予定だ。このうち約6割の電解槽は中国で組立・加工されて。国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、2023年の中国における電解槽の年間生産能力は15ギガワット時に達し、世界全体の60%を占めている。
水素生産効率を向上させるには、複数のスタック(電解槽の中核部分であり、複数の電極や膜を積み重ねた構造)を連結する必要がある。
EUは再生可能エネルギー基盤への中国企業の参入に長年懸念を抱いてきた。現在、EUで使用される太陽光パネルの約90%が中国製だ。多くの欧州企業がこの分野から撤退している。また、中国の安価なタービンは欧州の海上風力発電プロジェクトに導入され、シーメンス・エナジーなど欧州企業の利益を圧迫している。
さらに、中国企業の競争はスウェーデンのバッテリーメーカー「ノースボルト」を経営破綻に追い込むなど、欧州の製造業に影響を及ぼしている。
アメリカでは、バイデン政権も脱炭素プロジェクトへの補助金条件を厳格化し、中国製品を排除する動きを見せている。これまで中国に対して比較的穏健な姿勢を取っていたEUも、立場を変えつつある。
フィナンシャル・タイムズによれば、EUは中国企業が自動車用バッテリーの補助金を受け取るためには、EU域内に製造拠点を構築することを条件とする案を検討している。
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