韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は4日未明、3日夜に宣布した非常戒厳をわずか6時間で「解除する」と表明した。
戒厳令の宣布は即座に強い反発を招き、与野党ともに戒厳令に反対する声が続出。韓国国会は出席した190人の議員全員の賛成により、戒厳令の解除を求める決議を全会一致で可決した。
韓国憲法では、国会在籍議員の過半数の要求があれば、大統領は戒厳令を解除する必要がある。一連の混乱は韓国政治に衝撃が走り、尹氏の求心力低下は避けられないもようだ。
与党「国民の力」の韓東勲代表は「尹大統領の非常戒厳の決定は誤りであり、国民と共にこれを阻止する」と批判。戒厳令の解除後、尹氏に対し「この悲惨な状況について直接、詳しく説明すべきだ」と訴えた。
また「共に民主党」は、戒厳令の宣布は「重大な憲法違反だ」と非難し、尹氏の即時辞任を要求した。国会議事堂の周辺に多くの市民が集まり、「大統領は辞めろ」などとシュプレヒコールを叫ぶ様子も見られた。
韓国情勢について、石破首相は「特段の重大な関心をもって注視している」と表明した。その上で「現時点で邦人被害の報には全く接していない」と述べ、在留邦人の安全には引き続き万全を期すと強調した。
アメリカの国家安全保障会議は、戒厳令の解除について「国会を尊重したことに安堵した」と表明。ホワイトハウスと国務省は事前の通知を受けていなかったとしている。
韓国で一連の混乱の責任を追及する動きが強まれば、尹氏の外交が停滞する可能性があり、日米韓で一致して対応してきた北朝鮮問題は先延ばしされる見通しだ。
韓国で非常戒厳が出されたのは1987年に民主化が宣言されて以降、初めて。
戒厳令が宣布されてから、国防省は軍に警戒態勢の強化を指示。戒厳司令部は、国会や地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど、一切の政治活動を禁じるとする布告を発表したうえ、全てのメディアや出版も統制を受けると宣告していた。
各国の在韓大使館は自国民に対し、現地当局の指示に従い、政治的なデモへの参加を避けるよう緊急の安全通知を発出した。
なぜ戒厳令宣布 その背景は?
戒厳令が宣布された背景には、4月に行われた総選挙での与党敗北以降、尹氏が直面している政治的困難がある。野党が主導権を握る国会で法案成立が困難にとなり、国政運営が混迷となっていた。
最近では、野党が政府と与党が提出した来年度予算案を大幅に削減して、単独で可決したほか、野党による政府幹部への弾劾訴追が相次いでいた。
こうした中、尹氏は3日夜、緊急の談話を発表し、革新系最大野党「共に民主党」が多数派を占める国会を利用し、「国政を麻痺」させているとして「北朝鮮からの脅威や国内の反国家勢力を一挙に清算し、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する」と表明した。
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