台湾 臓器移植のために患者を中国に送った外科医を起訴

2024/12/15
更新: 2024/12/15

この事件は、この島(台湾)が2015年に人体臓器移植法を改正して以来、違法な臓器仲介の疑いへの初の起訴となった。

【台湾、台北】台湾の外科医と他の4人が、中国での臓器移植を違法に仲介した罪で起訴された。地元の医療擁護団体は、この事件は中国当局が良心の囚人から臓器を調達していることを考えると憂慮すべきことだと述べた。

台湾南部、彰化県の地方検察庁は11月25日のプレスリリースで、外科医の陳堯俐(チェン・ヤオリー)が2016年から2019年にかけて10人の台湾人患者を臓器移植手術のために中国に送る手助けをした犯罪グループを指揮した罪に問われていると発表した。

陳被告は、移植臓器は「無償で提供または取得しなければならない」とする台湾の「人体臓器移植法」に違反した罪に問われており、「臓器移植や臓器の提供・取得を仲介した者」は5年以下の懲役、最高で150万台湾ドル(約4万6200米ドル)の罰金に処される可能性がある。

陳はかつて彰化キリスト教病院の臓器移植センターで働いていた。

検察当局が起訴を発表した後、同病院は陳が2022年7月以降、同施設で働いていないと発表した。彰化検察は同年3月に陳の捜査を開始していた。

同病院は、法輪功学習者、良心の囚人、ウイグル人、キリスト教徒をターゲットにした臓器強制摘出に関する報道や国連の警告を引用し、肝臓移植のために中国へ渡航することを地元の人々に警告した。また、非倫理的で違法な医療行為を禁止し、司法調査の結果を尊重すると付け加えた。

院長の陳穆寬(チェン・ムークァン)氏はエポックタイムズ紙に、陳は中国での活動を報告しておらず、病院は医療倫理違反の懸念から陳との契約を更新しないことを決定したと表明し「囚人や特定の宗教的少数派から強制的に臓器を摘出することは、それ自体が基本的人権に対する深刻な侵害である」と述べている。

さらに、中国における臓器の出所に関する透明性の欠如は、中国での手術に関連するリスクを増大させると付け加えた。

台湾国際臓器移植ケア協会(TIOTCA)の副会長兼スポークスマンのデビッド・黄氏は、この事件は重要なマイルストーンになると述べた。

今回の案件が台湾が2015年に人体臓器移植法を改正し、死刑囚の臓器の使用や臓器の売買、仲介を禁止して以来、違法な臓器ブローカーに対する初の起訴である。黄氏はエポックタイムズ紙への電子メールで次のように述べた。

「この起訴が地元市民と政府の関心を集めることを期待しています。臓器移植のために中国に行くことは、医学的、道徳的、法的なリスクを伴います」

エポックタイムズ紙は、陳が肝臓移植センターの副センター長を務めていた中山医科大学病院にコメントを求めた。

同病院は起訴についてのコメントを避けたが、「陳医師は当病院の管理手順と専門的基準に従い、当病院で医療業務を行っています」と述べた。

肝臓と腎臓の移植

検察は、陳医師が移植センターに勤務していたとき、移植患者に、無名のバイオテクノロジー企業のトップである黄という苗字の共犯者に接触させたと主張した。黄は6人の台湾人患者に、中国東部の山東省にある青島の中国の病院で肝臓か腎臓の移植手術を受けさせるよう手配したとされる。

黄は6人の患者それぞれに、肝臓移植に500万~750万台湾ドル(約2370万円~約3556万円)、腎臓移植に300万~350万台湾ドル(約1422万円~約1659万円)を請求したとされる。苗字が楊の黄の妻は、患者と青島大学付属病院の医師をつないで手術を手配した。

検察によると、陳はまた青島の中国の病院に行き、肝臓の手術が行われている間、手術室内で「指導」を行ったとされている。

これとは別に、陳は台湾人の看護助手・謝(Hsieh)に対し、中国へ渡航して術後ケアを行うよう指示し、患者1人あたり20万台湾ドル(約948万円)の報酬を支払ったとされた。

陳はまた、長年台湾と中国の間で「臓器移植サービス」を提供してきた林という名の共犯者と協力して、4人の台湾人患者に中国中部の湖南省長沙市で腎臓か肝臓の移植手術を受けさせた。その後、2人はその報酬を分け合った。

検察は陳被告に懲役6年、共犯者4人にそれぞれ懲役3年を求刑している。また、グループの違法収益合計約2040万台湾ドル(約9673万円)の没収を目指している。

陳被告は3年間で1480万台湾ドル(約7017万円)以上を稼いだとされる。陳は捜査中に8万3060台湾ドルを返還した。彰化検察局の発表によると、陳が「違法収益を享受する」ことを阻止するために、検察は陳の財産を没収したという。

謝は現在、検察との合意の一環として、不法所得として得た110万台湾ドル(約521万円)を返還しなければならず、検察は彼女に対し起訴を猶予することに同意した。

検察 中国での臓器移植は「リスクが高い」 

台湾の検察当局は、中国での臓器移植に伴うリスクを警告した。

移植を受けた患者の多くは2〜3年しか生存せず、中には台湾に戻ってから1週間以内に死亡する者もいたという。

「仲介者を介し、透明性のない臓器移植手術は非常に危険であることを示している」とプレスリリースは述べている。

ロンドンを拠点とする中国法廷は2019年、強制的な臓器狩りが中国で「大規模」に行われており、法輪功学習者が臓器の主な供給源であると結論づけた。法輪大法としても知られる精神修養法である法輪功の学習者は、1999年以来、中国政権による迫害の対象となっている。

米下院は6月、法輪功保護法案(H.R. 4132)を可決した。

この法案が成立すれば、大統領は「中華人民共和国において非自発的な臓器摘出に故意かつ直接的に関与またはそれを助長した」外国人のリストを、関連する議会の委員会に提出することが求められることになる。リストに掲載された者は、米国への入国禁止などの制裁を受ける。

マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)は7月、この法案の上院版(S.4914)を提出した。ルビオ氏はドナルド・トランプ次期大統領から国務長官に指名されている。

台湾国際臓器移植ケア協会のデビッド・黄氏は、米国での立法努力を称賛した。上院で法案が可決されれば、それは 「画期的な瞬間 」になるだろうと黄氏は語った。

Yuan Shih-gang氏が本記事に貢献した。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。
台湾在住のジャーナリスト。米国、中国、台湾のニュースを担当。台湾の国立清華大学で材料工学の修士号を取得。