訪日観光客 過去最高を記録 経済効果とオーバーツーリズムの課題

2024/12/18
更新: 2024/12/18

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、11月の訪日外国人数は318万7千人となり、前年同月比で30.6%増、2019年比で30.5%増と過去最高を記録した。また、1~11月の累計訪日者数は3337万9900人に達し、年間としても過去最多を更新した。

2024年冬ダイヤの時点で航空便数は2019年と同等の水準まで回復しており、加えて紅葉シーズンの需要が訪日観光をさらに後押しした。特に中国、韓国、台湾、アメリカからの訪日者が前年同月比で大幅に増加し、全体を押し上げる要因となった。

訪日観光客の増加は、日本経済に大きな恩恵をもたらしている一方で、オーバーツーリズム(観光過剰)の問題も深刻化している。

観光客がもたらす経済効果

消費総額の増加
今年の訪日観光客消費額は、コロナ禍以前の2019年を超えるペースで推移している。訪日観光客の増加に伴い、消費総額も大幅に増加した。

観光庁の速報値によると、1~9月の訪日外国人による消費額は前年同期比61.7%増の5兆8582億円で、すでに過去最高だった2019年の年間消費額(5兆円)を上回っている。

地域経済の活性化
消費の増加は、宿泊施設、交通機関、飲食などの業界で経済効果を生み出し、地域経済の活性化や観光業関連の雇用創出にも寄与している。

地方への観光誘致が進み、地域特有の伝統工芸品や特産品の売上も増えている。特に、訪日観光客の約70%が地方を訪れるという統計もあり、地方経済の支えとなっている。

深刻化するオーバーツーリズムの課題

一方で、観光客の急増により、オーバーツーリズムの問題も深刻化している。過度な観光地化が地域住民の生活環境への影響も顕在化している。

公共交通機関の混雑

祇園祭の期間中、観光客が京都市内に集中するため、観光地を結ぶバス路線が観光客で溢れかえる。一部の京都市民は市外や郊外に避難したり、旅行に出かけたりする傾向がある。また、一部の観光客によるゴミのポイ捨てや食べ歩き、私有地への無断侵入といったマナー違反が住民の不満を招いている。

マナーの問題

日本では、民宿の利用者は退去時に部屋を清掃し、元の状態に戻すことが求められるが、11月には、大阪の民宿で、中国人観光客5人が3日間滞在した後に大量のゴミを残したことが、SNSで議論を巻き起こしている。



大阪の民宿で波紋、中国人観光客のマナーに批判の声

大阪の民宿で、中国人観光客5人が3日間滞在した後に残した大量のゴミが、日本と中国のSNSで議論を巻き起こしている

日本の民宿オーナーからは「次回から中国人客を受け入れない」「外国人客には日本人の10倍の料金を課すべきだ」という声もあった。

訪日観光が日本経済に与える恩恵は大きい一方で、地域住民と観光客の共存を目指した取り組みが必要である。自治体や観光業界は、観光客への啓発や規制を強化することで、持続可能な観光の実現に向けた施策を進めていくことが求められている。
 

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。