過去数年、中国共産党当局はクリスマスを「宗教的な色彩を強く帯びた西側の祝日」として、禁じてきた。
とくに、12月24日は「クリスマスイブではなく、『長津湖戦闘(長津湖の戦い)』の勝利74周年記念日」とアピールするなどして世論を「愛国」のほうへ持っていこうとする。
各地の学校などをはじめ、「クリスマスの飾り付けや関連イベントの開催を禁ずる」内容の通達が事前に出され、クリスマスは朝鮮戦争中の中国軍と国連軍の戦闘を描いた映画『長津湖の戦い』への鑑賞を勧めている。
それが今年になると、過去数年続いた「クリスマス封印」の事情がすこし変わってきているようだ。
一部地方では依然として「封印中」だ。いっぽうで、上海、広州、深センなどの大都会では封印が解かれているのだ。
中国のSNSはというと、依然としてクリスマスボイコットの声はあるものの、例年よりは小さくなってきている印象を持つ。
なぜ、一部地区ではダメで、一部地区ではOKなのか。
「経済が悪化の一途をたどり、ただでさえ国民の不満が高まっている。そこへ引き続きクリスマスを禁じれば、国民の不満をさらに高めることになりかねない、当局は白紙運動のような大規模抗議を恐れている」と指摘する専門家は多い。
米シンクタンク「フリーダム・ハウス」は先月、2024年第3四半期に中国で起きた抗議行動は937件と、昨年同期より27%も多いと公表。そのほとんどが経済面の不満によるもの。(ただし、中共当局が抗議事件関連の情報封鎖を行っているため、実際の件数は公表されたデータより遥かに多いと考えられる)
(2024年12月24、中国河南省、クリスマスツリーの撤去を命じられたスイーツ店。店主は「当局は西側の祭日の祝いを許してくれない」と嘆く)
NTD新唐人テレビの取材に応じた中国在住の著名な人権活動家・陳思明氏は「中共(中国共産党)当局が今年クリスマスをボイコットしなかったのは、国民の不満が高まることを懸念したからだろう。また、地方官僚も就業問題を解決して経済を良くし、政治的成績を上げたいと考えている」と指摘する。
米国在住の時事評論家、邢天行氏は、「中共は変わっていない。ただ、中国の経済が本当にダメになってしまったこと、そしていま西側諸国に対して中国に投資してほしいから、民間で行われているそのような過度ではない商業活動に目をつぶっているだけ。信仰を持つ民衆の活動に対する弾圧は依然と続いている。もし中国民衆が理念からクリスマスを祝うようになったら、やはり当局は不安になる、そうなったらまたクリスマスをボイコットをするだろう」と分析する。
しかし、クリスマスを許されたからといって、民衆の不満のはけ口ができ、期待した通りにクリスマス商戦で売上が伸びるのだろうか。
中国在住の反体制派アーティスト季風氏によれば、「クリスマスであろうがなかろうが、誰も気にしない。いまや街中のホテルやレストラン、バーもカフェもどこもかしこも閑古鳥が鳴いてるんだから」という。
米国在住の著名な調査ジャーナリストである趙蘭健氏も同様、「私の壁の中(中国本土)の友人たちはみんな苦しんでいる。みんないかにして金を稼ごうかと必死だ。いまではどの業界だろうと希望が見えない。だから、とても祝う気分になどなれない、クリスマスに限らず、どんなお祭りも祝う気分になれない人が多い」と指摘する。
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