中国珠海市で発生した無差別轢殺事件の加害者に死刑判決 超スピード判決に疑問の声も

2024/12/28
更新: 2024/12/28

11月11日、珠海市で人々に車が突っ込むという重大な事故が発生し、多くの死傷者が出た。12月27日、加害者の樊維秋(はん・いしゅう)(62歳)が死刑判決を受け、注目を集めている。

官営メディアの新華社によると、12月27日に珠海市中級人民法院(以後、珠海市法院)はこの事件を公開審理し、同日に判決を下した。樊維秋は公共の安全を危険な方法で害した罪により死刑が言い渡され、政治的権利は終身剥奪された。

珠海市法院は、樊維秋が「婚姻の破綻や生活の不満、離婚時の財産分割に対する不満から、私怨を晴らすために人混みに車で突っ込むことを決意した」と述べた。「その犯罪動機は極めて卑劣で、犯罪の性質は非常に悪質、手段は特に残忍で、結果は特に深刻であり、社会に対する危害は非常に大きい」とし、死刑判決を下した。

今年11月11日の夜、樊維秋は前日に購入したオフロードジープを運転し、珠海体育センターで運動していた人々に突っ込んだ。その事件後、ネット上には多くの現場の動画が流出し、24時間以内に当局はこの事故で少なくとも35人が死亡し、43人が重傷を負ったことを認めた。しかし、その後当局は死傷者数を更新せず、これが公式データに対する市民の疑問を引き起こす結果となった。

この国内外を震撼させた重大な事件は、わずか1か月半で一審が完了し、判決が下された。これについて、アメリカ在住の中国人権弁護士である呉紹平氏はラジオ・フリー・アジアに対し、この判決までの速さは異常であると述べた。

また呉紹平氏は、以前の厳しい取り締まりを除けば、2000年以降の事例を見ても、死に関わる案件がこれほど短期間で処理されたことはほとんどないと述べ、「このように迅速な判決は、この種の案件が正常な法的手続きの下で完了していないことを示している」と発言した。

アメリカ在住の中国人権弁護士である滕彪(とう・ひょう)氏も、この件について、中国の刑事訴訟法に照らし、一般的な刑事事件の審理と比較しても、この判決はあまりにも早すぎると述べた。

滕彪氏は「通常、このような重大で複雑な案件では、証拠を示し、さまざまな法定手続きを行うために、もっと多くの時間が必要であり、最終的にはこれらの証拠と法定手続きに基づいて判決が下されるべきだ」と語っている。

珠海市法院が示した樊維秋の殺人動機について、滕彪氏は疑問を呈している。滕彪氏は、単に婚姻財産の問題だけで、一般の人がこのような激しい方法で社会に復讐することは難しいとした上で、「それは、当局が公表した状況よりもはるかに深刻であり、当局が公に知られたくない他の事情がある可能性もある」と述べた。

呉紹平氏は、当局がこの事件を迅速かつ厳格に処理するのは、実際には社会を鎮めるためではないとし、むしろ無差別に社会に復讐しようとする人々に対し「あなたたちがそうしたいのなら、私たちは迅速な死刑裁判を行う」と脅すためだと指摘した。

しかし、呉紹平氏は、社会に復讐しようとする人々はしばしば命懸けの覚悟を持っているため、当局がこのような司法手段で中国社会が直面している問題を解決しようとするのは、問題が深刻化したときに、その解決策の質や適切さを十分に検討せずに、とにかく何かしらの対策を講じようとしているのだと考えている。

この判決はネット上で大きな議論を引き起こした。多くのネットユーザーがコメントし、「急いでいるね、一か月半で判決が出た」「どうやら、彼に新年を迎えさせるつもりはないようだ」「死刑という結果は完全に予想通りだ」「私の最初の反応も早かった」「珠海国際航空ショーの開催を妨害しようとしたことに関係があるように感じる」「中国本土のすべての事件には本当の動機が公表されることはない」「言論を禁じることは国民全体に恐怖をもたらすだけだ」などといった意見が上がった。