日本製鉄会長「トランプ新政権での再審査に期待」

2025/01/07
更新: 2025/01/07

日本製鉄の橋本英二会長兼最高経営責任者(CEO)は2025年1月7日、東京都内の本社で記者会見を開き、米鉄鋼大手USスチールの買収計画に関する見解を表明した。

会見の趣旨

会見冒頭に日本製鉄は、本会見の趣旨について次のように述べた。「1月3日にUSスチールの買収に関しまして米国バイデン大統領が禁止命令を決定し、昨日6日に同禁止命令に対してUSスチールと共同で訴訟提訴しました。本日は、本買収が、USスチールが将来にわたって発展し続けるための最善の方法であり、各ステークホルダーの利益、米国の国家安全保障の強化に資するものであると当社として確信していることについて、あらためて皆さんにご説明するとともに、大統領の買収禁止令に対して日本製鉄とUSスチールは米国での事業遂行を決して諦めないこと、法的権利を守るためにあらゆる措置を追求していく強い決意であることにつきまして会長である橋本から説明いたします」

会見の主要ポイント

買収計画への強い意志

橋本会長は、バイデン米大統領による買収計画中止命令に対し、「本件は、当社の経営戦略上の最重要マターであることだけでなく、日本及びアメリカ両国にとって極めて有益であると今でも確信しているおります。グローバルに収益規模を拡大して、日本国内での設備投資を増やしていく以外に、日本の成長と分配の高潤化を回すことはできません。そういう意味で、日本にとっても極めて重要な案件の一つであろうと思います。もう一つは、米国にとってもUSスチール単体ではなく、当社とUSスチールのパートナーシップで進めていくということが、将来にわたって競争力を保ち、発展し続けていくための最善の方法であって、USスチールの従業員の皆さん、地域コミュニティの皆さん、米国内のお客様、産業全体の利益にかなうものであると思っております。また、当社の技術商品を投入することによって、現在、アメリカでは十分に作れていない鋼材も作れることになりますので、引いては、アメリカの国家安全保障の強化に資すると考えております。したがいまして、米国の事業推行を決して諦めることはありません。諦める理由も必要もないというのが、私の考え方でありますし、日本製鉄とUSスチールの一致した考え方であります」と述べ、買収計画への強い意志を示した。

米国市場の重要性

また、日本製鉄のグローバル戦略の基本について触れ、「グローバル戦略の基本は需要が伸びる市場、そして当社の技術・商品力が活かせる市場、すなわち、相手の市場に当社の参入・参画が歓迎される市場でないと海外事業がうまくいきません。アメリカにおいてもジョイントベンチャーで既にそれなりの規模で事業を展開しておりますけれども、今回のUSスチール事業というのは、米国という、先進国で最も有望な市場であり、高級鋼の需要が多いですから、しかも今後、ますますアメリカの産業政策、あるいはエネルギー政策を考えますと、高級鋼の需要が伸びるということになりますので、当社の技術力・商品力が期待される市場ですね。したがいまして、何としても米国事業は当社のグローバル戦略に欠かせないということになります」と述べ、同社にとっての米国市場の重要性を強調した。
 

バイデン政権への批判

会長は、バイデン大統領の介入を「違法な政治介入」と批判し、米側の対米外国投資委員会(CFIUS)による買収審査が国家安全保障上の観点ではなかったとの見解を示した。

法的対応

日本製鉄とUSスチールは1月6日、バイデン大統領らを相手取り、買収計画の中止命令の無効を求める訴訟を含む2件の訴訟を提起したことを発表している。橋本会長は、この訴訟について勝訴に自信を示した。

トランプ新政権への期待

橋本会長は、現在の訴訟に勝訴した後、トランプ新政権に対してあらためて本買収計画の意義を説明し、再審査が行われることを期待していると語った。現時点では買収に反対しているとされるトランプ次期大統領に対し、どのように買収の意義を伝えるのか、何か方策はあるのか? と記者に問われた橋本氏は「新政権の新メンバーの方々には、このプロジェクトがUSスチールをいかに強くし、将来的に繁栄させ、米国鉄鋼業の強化にもつながり、米国産業全体、ユーザ産業を含めた全体の強化にもつながる。すなわち、トランプ次期大統領がずっとおっしゃっているのは、やっぱり、もう一度製造業を強くしたい。製造業をもう一度強くして、白人労働者を中心として、製造業の労働者にもう一度豊かな暮らしと明るい未来を与えたいという趣旨ですよね。その趣旨にまさしく沿っているわけです。それをきちんと説明していくということで、ご理解を得られると思っております」と述べ、新政権の理解が得られることに自信を示した。

今後の方針

橋本会長は、USスチールとの間で結んだ現在の契約に基づいて買収計画を進める考えを示し、現段階で代替案はないとした。「アメリカの事業遂行を決して諦めることはない」と述べ、引き続き買収の実現を目指す方針を改めて強調した。

 

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。