新型の「垂直軸型」風力タービン(VAWT)が注目されている。このタービンは従来型よりも設置面積が小さく、鳥類にも安全だとされている。従来型タービンが設置困難な地域で代替手段となる可能性がある。
開発の背景
このタービンはDNAのらせん構造のような形状を持つ。開発を担当したのは南オーストラリアのフリンダース大学とスタートアップ企業のVAWT-X Energy。試験運用はアデレード南部のフルリオ半島で行われる予定だ。
6キロワットの試作品はフリンダース大学のトンスリー・イノベーション・プレシンクトで製造された。このプロジェクトは、民間資金や州・連邦政府の助成金で支援されている。
従来型タービンとVAWTの違い
オーストラリアでは現在、大規模な風力タービンが各地で建設されている。これらは1基あたりサッカー場1面分の敷地が必要だ。都市部から離れた場所に設置されることが多く、大規模な送電インフラが欠かせない。さらに、基礎工事には数百トンものコンクリートを要する。
一方、VAWTはコンパクトな設計である。現在の試作品は高さ5メートル、幅3メートルで、農場や小規模事業所向けに開発された。現地で組み立てが可能なため、設置の手間も軽減される。
VAWT-X Energyの創業者ゲイリー・アンドリュース氏は「このタービンは効率的であり、オフグリッド電力(電力会社に接続せず、太陽光や風力などの自然エネルギーを利用して電力を自給自足する電力)や小規模事業向けの持続可能なエネルギーソリューション(電力や熱などのエネルギーを有効活用して、省エネや脱炭素を推進する取り組みやサービス)として適している」と述べている。また、従来型の「ダリウス型タービン」が抱えていた課題を解決する設計だと強調している。
野生生物への影響を軽減
アンドリュース氏は大紀元に対し、垂直軸型の設計は野生生物にとって安全性が高いと語った。理由として、野生生物がタービンを認識しやすくなる点を挙げている。
「従来型タービンでは、中心に近いブレードの動きは非常に遅いが、ブレードの先端は時速300キロメートルの速度で動くことがある。鳥にはそれを感知するのは難しい」。
従来型タービンは、騒音によるコアラの交尾行動への影響や、ブレードによる鳥やコウモリの死亡が批判されてきた。
設計は改良中
一方、VAWTは理想的でない風条件下でも利用できるよう設計されている。しかし、現時点でのVAWTは大型タービンと比べて発電効率が低い。
2025年までに、大規模な用途に対応するための設計拡大が計画されている。
Nature Energy誌の研究によれば、より大型で高度な風力タービンが、世界の風力エネルギー効率を大幅に向上させる可能性がある。
フライブルク大学のクリストファー・ユング博士は、「気候変動が風力資源に与える影響は予想よりも小さい。それよりも技術的進化がエネルギー効率に大きな影響を及ぼす」と述べている。
同研究では、今後10年間で最大25%の効率向上が見込まれると予測されている。
一方、マードック大学のアミール・バシルザデ・タブリジア研究員は、中小型タービンの非効率性に課題があると指摘した。
計算流体力学(Computational Fluid Dynamics: CFD)のモデルを用いた研究では、屋上設置型タービンが乱流や不安定な風条件にさらされることで効率が低下していることが示された。
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