韓国初 現職大統領が逮捕 尹大統領 「流血事態を防ぐために出頭」

2025/01/15
更新: 2025/01/15

韓国尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が15日午前、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察で構成された共同捜査本部により逮捕された。

共同捜査本部はこの日、「午前10時33分に尹大統領に対する逮捕状を執行した」と発表した。これは、尹大統領が昨年12月3日に非常戒厳令を宣言してから44日後のことであり、現職大統領が捜査機関に逮捕されるのは憲政史上初めてだ。

同日午前4時20分ごろ、ソウル龍山区漢南洞(ヨンサング·ハンナムドン)の大統領官邸前に到着した公捜処と警察は、逮捕・捜索令状を提示した後、約2時間半が経過した午前7時30分ごろに官邸内部へ進入した。

その後、共同捜査本部は尹大統領を車両に乗せ、京畿道果川市の公捜処庁舎へ移送した。逮捕の過程で、尹大統領側は公捜処への自発的出頭を提案する形で交渉を試みたが、共同捜査本部はこれを受け入れなかったと伝えられている。

尹氏「流血事態を防ぐために出頭」

尹氏は「国民へのメッセージ」と題した動画を公開した。「不幸な流血事態を防ぐため、不当な捜査ではあるが公捜処の出頭に応じることにした」と述べた。

以下は、尹大統領の映像メッセージ全文である。

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尊敬する国民の皆さん、これまでお元気でいらっしゃいましたか。
私を応援し、多くの支持を送ってくださったことに、心から感謝申し上げます。

残念ながら、この国では法が完全に崩壊しました。
捜査権のない機関に令状が発行され、令状審査権のない裁判所が逮捕令状と捜索・差押え令状を発行する現状を目の当たりにしました。さらに、捜査機関が虚偽の公文書を作成して国民を欺き、不正な令状によって強制的に手続きを進める、このような「不法の、不法の、不法」が繰り返されている状況に、深い憤りを禁じ得ません。

私はこのような不利益を被っている状況ではありますが、国民の皆さんが、将来刑事事件に直面した際、このようなことが二度と起こらないことを願っています。

今日、彼らが警護区域を消防機器を使って侵入する姿を見て、不幸な流血事態を防ぐため、不当な捜査ではあるものの、公捜処への出頭に応じることにしました。
しかし、これは決して公捜処の捜査を認めるという意味ではありません。

国民の皆さん、特に若者たちが自由民主主義の大切さを再認識し、その価値に情熱を見せている姿を見て、今は法が崩壊し、暗黒の時代ではありますが、この国の未来には希望があると感じています。

どうか国民の皆さん、お体に気をつけて、力をお出しください。

取り調べ進行中、公捜処の課題浮き彫りに

取り調べと録画記録

公捜処は、現地時間午前11時から次長の李載昇氏が監視カメラが設置された調査室で尹錫悦(ユン・ソギョル)氏を取り調べていると発表した。証言を巡る争いを防ぐため、取り調べの全過程が録画される可能性がある。韓国メディアによれば、尹氏の弁護団には3名の弁護士が同席している。尹氏は「公捜処には内乱事件を捜査する権限がない」と主張しており、黙秘権を行使する可能性が高いとみられる。

公捜処の役割と限界

公捜処は2021年に設立された独立機関で、大統領やその家族を含む高位公職者を捜査する役割を担っている。ただし、大統領に対する起訴権はなく、案件を検察に引き渡してさらなる対応を依頼する必要がある。

法律に基づき、公捜処は尹氏の逮捕後48時間以内に取り調べを行う権限を持つが、この期限が切れる時点で、釈放するか、裁判所に拘束令状を請求するかを決定する必要がある。拘束令状が発行されれば、公捜処は最大20日間の起訴準備期間を得ることができる。裁判所が拘束令状を発行するかどうかは、尹氏が証拠隠滅や証人との口裏合わせを行う可能性があるかどうかが考慮される。

人員不足と能力への疑問

現在、公捜処には4つの捜査部門が存在するが、そのうち2つは人員が配置されていない状態にある。尹氏の案件を担当しているのは9名の検察官と、所長の呉東運(オ・ドンウン)氏の副官のみである。呉氏はソウル高等裁判所や憲法裁判所などで判事を務めた経験があるものの、機関全体の人員不足が、尹氏の捜査と立件が成功するかどうかに対する疑問を引き起こしている。

陳霆