プライバシーと国家安全保障への懸念から、米国での禁止措置に直面している中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」に関して、その親会社は1月19日までに、「TikTokの売却」か「米国のアプリストアからの削除か」の二者択一を迫られている。
「App Store」や「Google Playストア」から削除されたとしても、禁止前にアプリをインストールしたユーザーは引き続き利用できるが、アップデートは今後できなくなるため、アプリが徐々に劣化する可能性が高い。
米国での命運が重大な岐路を迎えているTikTokの同国ユーザーやクリエイターはこの頃、「小紅書(シャオホンシュ)」という名前の中国製アプリに殺到している。
いま「小紅書」は米国のアプリストアの無料アプリランキングで第1位になるほどの人気ぶりで、ロイター通信によると、わずか2日で70万人以上の新規ユーザーが「小紅書」に流入したという。
「1984へようこそ」
代替アプリの「小紅書」に移行した米国ユーザーは自らを「TikTok難民」と呼び、そのようなハッシュタグを添えて投稿を行っている。
13日に米中のユーザー5万人以上が参加した「小紅書」で開かれた「TikTok難民」と題するチャットルームでは、失業問題や最低賃金、労働時間、物価、消費、教育、権益、人権、政府批判など多岐にわたる交流が行われた。
なかには、踏み込んだ話題になって、検閲やアカウント封鎖を案ずる中国人ユーザーから「ここではそういう話はしない方がいいよ」と外国人ユーザーに親切に教える場面もみられた。
とても印象に残った中国人ユーザーによる歓迎コメントに、「友よ、1984へようこそ」というのもあった。
『1984年』とは、全体主義社会の監視と抑圧を描いたジョージ・オーウェルのディストピア(暗黒の世界)小説に由来する。
緊急封殺
中国共産党政府は長い間「グレート・ファイアウォール」と呼ばれるネット検閲システムを中国全土に敷き、人権迫害や国際社会からの非難など、政府に対する不利益な情報や中国に不利な国際的な情報などを、全て遮断してきた。同時に統制されたメディアを通じて国民に嘘を広めて洗脳し、人々が米国や日本を恨むよう洗脳して、極端なナショナリズムを煽ってきた。
「小紅書」での外国人ユーザーとの「直接対話」の後、「壁が崩壊した感じだ」と表現する中国人ユーザーも少なくないという。
嘘がばれそうになったことが怖くなったのか、中国当局は「小紅書」における「問題アカウント」に対する緊急封殺を行った模様。
14日になると、「アカウントを開けない」とする同アプリの外国人ユーザーが続出した。
海外ユーザー大流入の事態に伴い、「小紅書」では翻訳機能の追加と英語コンテンツの審査員の雇用を急いでいるとする内部情報もネットに流れている。
この事態について、米国の法律事務所に勤める梁少華(りょうしょうか)氏は「中国共産党の支配下では自由な空間など存在しない」と外国ユーザーであっても例外はないと指摘する。
なお、「中国版のインスタグラム」などといわれることもある「小紅書」は米国では「レッドノート」と呼ばれているが、カナダ在住の著名な中国民主活動家・盛雪(せいせつ)氏は「毛沢東語録の別称も『小紅書』だ」と指摘する。
赤いビニール表紙の「毛沢東語録」とは、毛沢東の権威を確立するために作られた言葉の引用集であり、半世紀以上前の中国で行われていた「洗脳・宣伝教育」である。
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