トランプ次期政権で米財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏は、バイデン大統領が禁止命令を出した日本製鉄によるUSスチールの買収計画について、再申請された場合は「通常どおり審査を実施する」と述べた。この発言は、1月16日に開かれた米上院の公聴会で行われた。
ベッセント氏が財務長官に就任すれば、買収計画を審査するアメリカ政府の対米外国投資委員会(CFIUS)の議長を務めることになる。
バイデン大統領は昨年12月、日本製鉄によるUSスチール買収計画を阻止する方針を示していた。この決定は、アメリカの製造業の象徴とも言えるUSスチールの外国企業による買収に対する懸念が背景にあったとされる。
日本製鉄は、この買収によってアメリカ市場での事業拡大を目指している。国内の鉄鋼需要が減少する中、成長が見込めるアメリカ市場に活路を見出そうとしている。
しかし、この買収計画には全米鉄鋼労働組合(USW)などが反対を表明し、バイデン政権も難色を示していた。日本製鉄側は「経営陣にアメリカ国籍を持つ人を充てる」などと主張したものの、最終的にバイデン大統領による禁止命令が今月3日に出された。
今回のベッセント氏の発言は、トランプ次期政権が日本製鉄の買収計画に対してより柔軟な姿勢を示す可能性を示唆している。具体的にどのような審査が行われるかについては言及されていない。
トランプ次期大統領は1月20日に就任する予定であり、この問題に対する新政権の具体的な方針が注目される。
スコット・ベッセント氏(米財務長官に指名)
ベッセント氏はマクロヘッジファンド運営会社キー・スクエア・キャピタル・マネジメントの創業者で、2011~15年、ジョージ・ソロス氏のソロス・ファンド・マネジメントで最高投資責任者(CIO)を務めた経験がある。2024年の大統領選挙では、トランプ氏の経済政策の指南役を担い、早期からトランプ氏の再出馬を支持していた。財務長官に就任した場合、ベッセント氏は利益相反を避けるため、キー・スクエア・グループの役職を辞し、持ち分を売却する予定だ。
全米鉄鋼労働組合(USW)とは
全米鉄鋼労働組合(USW)は、アメリカ合衆国において鉄鋼業を中心とした労働者の権利を守る大規模な労働組合である。正式名称は「United Steel, Paper and Forestry, Rubber, Manufacturing, Energy, Allied Industrial and Service Workers International Union」であり、鉄鋼業以外にも多様な産業の労働者を代表している。
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