満額年金拡大 基準額を62万円に引き上げへ

2025/01/17
更新: 2025/01/17

厚生労働省は、働いて一定の収入がある高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金制度」を見直し、2026年4月から年金をカットする基準額を現行の月収50万円から62万円に引き上げる方針を固めた。改革案は、2024年1月24日召集の通常国会に提出される予定である。

在職老齢年金制度の仕組み

在職老齢年金制度は、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合に適用される。具体的には以下の通りである。

  • 対象額 「老齢厚生年金の月額」と「月給・賞与(直近1年間の賞与の1/12を含む)」の合計額。
  • 減額基準 合計額が50万円を超えると、超過分の半額が年金から減額される仕組み。

今回の見直しでは、この基準額を62万円に引き上げることにより、高齢者が働きやすい環境を整えることを目指す。

日本は少子高齢化による労働力人口の減少に直面している。この中で、高齢者の就労促進が急務とされているが、現行制度では収入が増えるほど年金が減額される仕組みが、就労意欲を損なう要因になっているとの指摘がある。

厚労省によると、2022年度末時点で働きながら年金を受給する65歳以上の高齢者は約308万人に上る。この見直しは、こうした高齢者の就労意欲を高め、社会全体の労働力不足を補うことを目的としている。

改革案の期待と課題

  1. 期待される効果
    基準額の引き上げにより、年金減額の影響を受ける高齢者が減少し、就労意欲が向上すると期待される。特に高所得層や専門性の高い人材が引き続き働くことが可能になり、労働市場全体の活性化が図られる。
  2. 財源確保の課題
    改革案の実施には年間1兆円から2兆円程度の追加財源が必要である。これに伴い、以下の課題が浮上している。

税負担の増加 消費税の引き上げや社会保険料の増加が議論される可能性がある。

財政健全性との両立 既存の歳出削減や国民負担とのバランスをどう取るかが問われる。

自民党の提言と見通し

自民党は2023年12月18日に社会保障制度調査会を開き、基準額引き上げを含む年金制度改革案を提言した。厚労省の今回の見直し案は、この提言に基づき、通常国会での成立を目指す。

しかし、改革案には「高所得層が恩恵を受けやすい」との批判や、「現役世代との公平性をどのように確保するか」といった課題も残されている。これらの問題に対応しながら、制度の透明性を高め、国民の理解を得ることが求められる。

 

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。