経済 EUの通商責任者は、27カ国から成る同連合が「公平な競争環境を守り」「公正な競争を支援する」ために「断固とした行動を取る準備がある」と述べた。

中共 工業用プラスチックに仮の反ダンピング制裁 日本の化学メーカーなどに影響か

2025/01/17
更新: 2025/01/17

中国共産党(中共)商務部は16日、日本、EU、アメリカ、台湾を原産地とする広く使用されている工業用プラスチックに対して、仮の反ダンピング措置を講じると発表した。対象となるのは、医療機器や自動車部品に使用される工業用ポリアセタール樹脂(英語名Copolymer Polyformaldehyde)だ。

今回の措置は、国家補助金過剰生産能力といった非市場貿易慣行が、外国企業や労働者に不公平な競争環境をもたらしているとの批判を受けた中で下されたものだ。

中共商務部によると、1月24日以降、中共税関は該当製品を輸入する企業に対して保証金を徴収する予定だ。保証金率は企業や原産国によって異なり、3.8%から74.9%の範囲で設定される。最も高い税率が課せられるのはアメリカに拠点を置く企業だ。

また、中共商務部の報道官は別の声明で、アンチダンピングの結果を引き合いに出し、これらの地域からの中共ポリアセタール樹脂が「不当に安く販売されている」と主張した。

この調査は2024年5月19日に開始され、バイデン政権が中国製電気自動車(EV)、高性能バッテリー、鋼材などに対する関税を大幅に引き上げた直後に実施された。

バイデン大統領は、この措置が中共から多額の補助金を受けた安価な競合製品からアメリカ企業を守るために必要だと説明している。同時期に欧州委員会も中国製の鋼材に対する貿易調査を開始した。台湾では頼清徳氏の新大統領就任準備が進められていた。

中共商務部によれば、今回の対象製品は銅や亜鉛といった金属の一部が代替可能であり、自動車部品や電子機器、医療機器など幅広い用途があるという。2023年、中共は対象国から約30億元(約409億円)相当の製品を輸入した。

影響を受ける日本企業

日本では、ポリアセタールを製造・輸出する企業が複数存在する。大手化学メーカーである旭化成や三菱ケミカルなどが、この素材の主要な供給者とされている。これらの企業は、中国への輸出に依存している割合が高く、今回の調査により追加関税や輸出制限が課されれば、収益や事業戦略に影響を及ぼす可能性がある。

中共政府は、調査期間中に予備的な保証金徴収を行うことを発表した。日本企業にとっては、中国市場における競争力維持が一層困難になる可能性があるため、今後の動向を注視する必要がある。また、新たな市場の開拓や供給チェーンの見直しなど、戦略的な対応が求められる状況といえるだろう。

米欧との貿易摩擦激化

中共の今回の措置は、トランプ次期大統領の就任直前に発動された。トランプ氏は再任後、中共製品への関税引き上げを検討していると示唆している。

また、中共商務部は、アメリカから輸入される半導体に対する調査を開始すると発表した。関係者は、国内半導体業界の懸念を理由に挙げ、バイデン政権がアメリカ半導体企業を支援することで競争環境に不平等をもたらしていると主張している。ただし、具体的な調査内容には触れていない。

この発表は、アメリカが中共企業の先端半導体へのアクセスを制限する新たな規制を発表した翌日に行われた。これらの規制は、AIやその他の先端技術を中共が軍事利用やスパイ活動に悪用するのを防ぐための措置とされている。

一方、欧州委員会も中共の不公正な貿易慣行への対抗を強化している。1月16日、欧州委員会は中共から輸入される甘味料エリスリトール(砂糖代替品の一種)に対し、最大233.3%の反ダンピング関税を課すと発表した。同委員会の調査結果、中共製品のダンピング慣行がEUの3千万ユーロ(約31億円)規模の産業に深刻な損害を与えた。生産者は2022年末にエリスリトールの生産を停止せざるを得なくなったことが判明した。

欧州委員会の発表は、中国製のモバイル通信設備に対し今後5年間の反ダンピング関税を課す決定や、リジンと呼ばれるアミノ酸を含む複数の中国製品に対する暫定関税の提案に続くもの。

欧州委員会は調査の結果、中共政府が欧州企業を調達市場から不当に排除していることが判明したとして、中国の医療機器メーカーに対する新たな規制を検討している。