日系企業 トランプ新政権開始に懸念と期待が交錯

2025/01/18
更新: 2025/01/18

ジェトロが実施した調査によると、在米日系企業はアメリカ新政権の政策に対し、関税や移民政策に強い警戒感を示す一方、税制改革や経済政策の面で期待を寄せている。

ジェトロは米国時間2025年1月8~10日に、在米日系企業694社を対象にオンラインアンケートを実施し、260社から有効回答を得た。

懸念の中心は関税政策と移民政策

新政権下で実施が見込まれる政策の中で、特に警戒感が高かったのは関税政策と移民政策となっている。

関税政策

回答した123社のうち72.4%が、関税政策の影響を「マイナス」と評価している。追加関税による輸入価格の上昇や納期遅延が懸念の中心。特に中国やメキシコからの輸入品に対する高関税がサプライチェーン全体に大きな負担を与えると予想される。

関税対策として、多くの企業がアメリカ国内での製造や調達の強化、生産・調達拠点の見直し、製品価格の値上げやコストの転嫁や生産・出荷の前倒しなどの対応を検討している。

移民政策

不法移民対策強化や外国人就労ビザ審査の厳格化については、回答企業の61.3%が「マイナスの影響がある」と答えた。これにより、労働力の確保が困難になる可能性が高く、製造業やサービス業を中心に影響が拡大すると見られている。

期待される経済・税制改革とエネルギー政策

一方、新政権の経済政策には一定の期待が寄せられている。

税制改革

法人税の減税措置について、47.3%の企業が「プラスの影響がある」と回答している。企業収益の向上や新規投資の活性化が期待される。

インフレ対策と経済政策

インフレ抑制や経済政策に対しては、34.9%の企業が「プラスの影響」を見込んでいる。物価の安定が消費者ビジネスに好影響を与えると考えられる。

エネルギー政策

新政権によるエネルギー関連規制の緩和や政策転換を背景に、34.5%の企業が「プラスの影響」を期待している。これらの政策は製造業やエネルギー分野にとって、ビジネス環境の改善につながる可能性がある。

政策全体への影響 現時点では不透明感が支配

新政権の政策全体が自社に与える影響について、半数近い企業(48.1%)が「現時点では分からない」と回答している。具体的な政策の全容が明確でないことが、企業の慎重な姿勢を引き出している要因だ。特に自動車部品業界では、52.2%の企業が「マイナスの影響」を指摘している。これは、追加関税やサプライチェーンの見直しに伴うコスト増加が懸念されているためと推察される。一方で、「マイナスとプラスが同程度」とする中立的な立場の企業(14.2%)も一定数存在しており、政策の詳細次第では影響が相殺される可能性も示唆されている。

追加関税がもたらす競争優位性

外国製品への追加関税やアメリカ国内産業保護政策は、多くの企業にとって課題である一方、アメリカ国内に生産拠点を持つ日系企業から、自社商品の競争力向上につながるとの声もある。

追加関税によって輸入品価格が上昇すれば、アメリカ国内で生産された製品が価格面で優位に立つ可能性がある。特に同業他社が輸入製品に依存している場合、自社製品の競争力が相対的に高まる。アメリカ国内での製造体制を整えることで、物流コストや輸送リスクの低減が期待され、競争優位性をさらに高めることができる。

ジェトロの調査は、アメリカ新政権の政策が日系企業に多面的な影響を及ぼすことを示している。課題となる関税や移民政策への対応策を講じる一方で、税制改革や経済政策がもたらすメリットを最大限に活用することが求められる。企業が新政権の政策に適応し、柔軟にビジネスモデルを進化させることで、これらの変化を成長機会に変えることが期待されている。