韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は戒厳令を発令したことで国会で弾劾され停職となり、さらに違法性が指摘される捜査機関による逮捕を受けた。これにもかかわらず、尹氏の支持率は急上昇している。
尹大統領の逮捕と法廷闘争
1月15日、韓国の高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察で構成された共同捜査本部が大統領官邸に侵入し、尹大統領を逮捕した。尹氏側は逮捕状状の執行が不当であるとして、ソウル中央地裁に逮捕適否審査を申し立てたが、ソウル中央地裁に棄却された。
これに対し、尹氏側は「このような違法行為を是正する必要がある。徹底的に抗議する」と声明を発表した。また、公捜処の調査を今後も拒否し、逮捕以来黙秘権を行使し続ける姿勢を見せている。同日、尹氏の弁護団は、公捜処長と警察庁国家捜査本部長を内乱罪で告訴した。
韓国の刑事訴訟法によると、拘束令状の有効期間は48時間とされており、その後も拘留を続ける場合は追加の逮捕状を裁判所に申請する必要がある。公捜処は17日、尹大統領に対する逮捕状を申請した。
韓国憲法裁判所は1月16日、尹大統領の弾劾案に関する審理で第2回目の討論を行った。尹氏側は、昨年12月に戒厳令を発令した主な理由として、「国会議員選挙における不正行為」を挙げた。また、野党が国家利益を損なう行為を繰り返し、高級公職者への弾劾を頻発させた結果、刑法のスパイ罪関連規定の改正を妨害したことも戒厳令発令の背景にあると主張した。
逮捕直後の尹大統領の声明
尹氏は逮捕された当日に事前収録された動画を公開し、「違法な調査であると認識しているが、不幸な流血事件を防ぐために公調処の調査に出席することを決めた」と説明した。また、「今後、韓国国民が同様の刑事事件に直面する際、自分のような被害を受けないことを願っている」と語った。
さらに、現在の韓国について「法が崩壊し、暗黒の時代にある」と述べつつ、「国民、特に若者が自由民主主義の価値を再認識している姿を見て、この国の未来には希望がある」との見解を示した。
同日、尹氏は自身のFacebookアカウントで長文の自筆の手紙を公開した。この中で、「戒厳令は国家危機を克服するために行使した救国の権限であり、内乱とは全く異なる」と強調した。また、今回の戒厳令の発令は「韓国が抱える深刻な問題に対処するための措置」であることを訴えた。
弾劾と戒厳令の背景
尹大統領は2024年12月3日に戒厳令を一時発令し、その後、12月14日に野党による弾劾案が国会で可決されたことで、大統領権限が停止された。弾劾案は憲法裁判所で審理されており、最長180日以内に判断が下される予定である。もし弾劾が成立すれば、尹大統領は罷免され、2025年4月から8月の間に大統領選挙が行われる。一方、不成立となれば、即座に大統領職に復帰する。
弾劾案の背景には、「国会議員選挙の不正行為」と、国家利益を損なう野党の行動が戒厳の理由として挙げられている。
支持率の急上昇
弾劾と逮捕という事態に直面している尹氏だが、支持率は大幅に回復している。2025年に入り、1月14日までの調査で韓国の7つの世論調査機関が示した結果によると、尹大統領の支持率は40%を超えており、戒厳令発表直後の最低支持率11%から大きく上昇した。
韓国ギャラップが1月17日に発表した最新の世論調査によると、与党「国民の力」の支持率は前週比で5ポイント上昇し、39%に達した。一方、最大野党「共に民主党」の支持率は前週と同じ36%に留まった。
ギャラップが1月7日〜9日に実施した世論調査によると、尹氏の弾劾に対して「反対」と答えた割合は32%、「賛成」と答えた割合は64%だった。国会で弾劾案が可決される前と比較して、弾劾賛成の割合が11ポイント減少した。
保守指向メディアの調査依頼を主に受ける「世論調査工程(R&Search)」が1月12〜13日に行われた調査では、尹氏の支持率は46.6%で、前回調査(2024年12月24日)より15.1ポイント上昇した。不支持率は52.2%だった。特に30代(49.1%)や60代以上(50%以上)の支持が高かった。尹大統領の弾劾に反対する世論がさらに増加していることが明らかになった。
尹錫悦大統領支持者、逮捕後も抗議活動を継続――「国の危機」と訴え
尹氏が逮捕された後、支持者たちはソウル拘置所や公捜処周辺で集会を開催。「大統領と共に戦う」「不正選挙の調査を求め」「弾劾無効」と書かれた横断幕を掲げ、声を上げた。
一部の支持者は15日夜、大紀元のインタビューに応じ、逮捕や弾劾の不当性を訴えた。
映画俳優アン・セロ(21歳)
アンさんは「大統領の逮捕令は不当であり、多くの国民が怒っている。悪人たちは自らの罪を隠すために、あらゆる手段で弾劾を成功させようとしている。韓国の法治体制は崩壊している」と述べた。また、「野党が法律を都合よく修正し、国民に利益のある予算を削減する一方で、自己利益のみを追求している」と批判した。
さらに、「大統領が戒厳令を発令したことで、多くの国民が目覚め始めた」とし、「韓国が共産主義国家に転落する危機にある」と警告した。
会社員パク・ミンスさん(32歳)
妻と幼い子どもとともに抗議に参加したパクさんは、戒厳令発令直後は大統領の支持率が最低まで落ち込んだが、現在は反転していると述べた。理由として、「私と同じ20~30代の人々が戒厳令の背景を考え始め、インターネットで情報を調べるようになったからだ」と語った。
また、「メディアは大統領の成果を報じず、無能や愚かさばかりを強調している。しかし実際には原子力発電や造船業など多くの分野で成果を上げている」と述べた。「こうした事実を知り、多くの人々が怒りを感じている」と語った。
さらに、「逮捕令の発行やその執行は不当であり、法律が崩壊していることに多くの国民が憤っている。また、韓国の政策が中国寄りになっていることや、中国共産党(中共)のスパイ問題などで国家存亡の危機を感じている」と強調した。
会社経営者イ・ドンジュン(55歳)
イ氏は、「戒厳令をきっかけに多くの中間派や保守派の国民が現状に目覚めた」と述べた。「韓国は中共の影響力によって政治界、法曹界、メディアが買収されている。さらに選挙不正の問題も存在している」と語った。
また、「国民が立ち上がらなければ、韓国は社会主義化し、中国のような体制になるだろう」と警告した。支持率の上昇は、この危機感を共有する人々が増えていることの表れだと述べた。
周辺商品の高騰
逮捕された尹錫悦大統領のグッズの価格が急上昇している。例えば、大統領就任記念の時計は、一時5万ウォンだったものが現在では20万ウォン、未使用品は30万ウォンに達している。他にも、郵便切手、掛け時計、マグカップなど、尹大統領関連の商品が二次取引プラットフォームに多数出品されている。
韓国メディアは、この価格上昇の背景に、尹大統領の支持者が集まった効果があると分析している。
韓国で大統領記念品が製作される慣例は朴正熙元大統領の時代から始まった。これらの記念品は制作コストが比較的安価に設定されているものの、稀少性と象徴的な価値を持つため、二次市場では通常、原価を上回る価格で取引されることが多い。特に尹大統領の就任2周年を記念して昨年6月に販売が開始された記念腕時計や関連商品は、現在の政治的な注目を背景に需要が高まっている。
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