広島・長崎市長が首相に核兵器禁止会議へ参加要請 中国の核脅威急増のなか

2025/01/17
更新: 2025/01/17

石破茂首相は1月17日、広島市の松井一実市長と長崎市の鈴木史朗市長と首相官邸で面会し、両市長から核兵器禁止条約第3回締約国会議への日本政府のオブザーバー参加を要請された。この会議は2025年3月に米国ニューヨークで開催される予定である。

両市長は、核兵器のない世界の実現に向けた取り組みの一環として、日本政府に対してこの国際会議へのオブザーバー参加を求めた。要請書では、日本政府に対し、「米国の拡大抑止の維持・強化を図るなど核抑止力への依存を強めるのではなく、対話による平和的解決と核兵器のない世界の実現に向けた外交努力を着実に積み重ねることが求められる」と述べている。

これに対し、石破首相は「難しい問題だ。核兵器のない世界を実現しなくてはいけないという思いは皆同じだが、現実に照らしてどう対処していくかはさまざまな議論をしなくてはいけない」と述べ、慎重な姿勢を示した。

日本は核兵器禁止条約に署名も批准もしていない。日本の周辺国には核保有国が存在し、複雑な安全保障環境にある。中国は核不拡散条約(NPT)上の合法的な核兵器国として、強力な核戦力を保有している。ロシアも核大国であり、日本の安全保障に影響を与える存在である。さらに、北朝鮮は2006年に核実験を行い、事実上の核保有国となった。

このような状況下で、日本政府は核軍縮と核抑止力のバランスを取る難しい立場にある。岸田元首相は日本が核兵器禁止条約に批准しない理由として、「核保有国は1国たりとも参加していない」と述べており、NPTなどの場で核軍縮を進めるべきとの立場をとっている。

中国の核戦力急増は深刻な脅威

中国の核戦力は急速に拡大しており、日本の安全保障環境に重大な影響を及ぼしている。米国防総省の最新の年次報告書によると、2024年半ば時点で中国が保有する運用可能な核弾頭数は600発を超え、わずか1年で100発程度増加したとされる。この数字は、わずか4年前の3倍に相当し、米国防総省の予測をはるかに上回るペースで拡大している。

さらに懸念されるのは、中国の核戦力拡大の勢いが今後も続くと予測されていることだ。米国防総省は2030年までに中国の核弾頭数が1000発に達すると予測しており、これは米国やロシアの保有数に迫る規模となる。

中国の核戦力増強は単に数量的な問題だけではない。中国は新型の戦略核ミサイル「東風41」の配備を進めており、これは米本土全域を射程に収める。また、潜水艦発射弾道ミサイル「巨浪2」の配備も進んでおり、海中からの核攻撃能力も強化されている。

このような中国の急速な核戦力拡大は、地域の軍事バランスを大きく崩す可能性がある。特に、中国が核の先制不使用政策を変更する可能性も指摘されており、日本を含む周辺国にとっては深刻な脅威となっている。

日本政府は、この急激な情勢変化に対応するため、米国との同盟関係を強化するとともに、自国の防衛力強化を急ぐ必要がある。同時に、国際社会と協調して中国に対する核軍縮の働きかけを強化することも重要だ。中国の核戦力拡大は、アジア太平洋地域の安全保障環境を一変させる可能性があり、日本はこの脅威に対して早急かつ効果的な対応を迫られている。

核兵器禁止条約への参加をめぐる議論は、日本の核軍縮への姿勢を示す重要な判断となる可能性がある一方、今後は、周辺国の核開発動向を注視しつつ、日本の安全保障政策の議論も活発となる可能性がある。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。