アメリカ保健福祉省(HHS)は、パンデミック研究を行う非営利団体「エコヘルス・アライアンス」およびその元代表ピーター・ダザック氏に対し、5年間の連邦資金提供禁止措置を正式に発表した。
新型コロナウイルス感染症に関する調査を行っている下院監視委員会の特別小委員会は、この決定を1月17日に公表し、HHSがエコヘルス・アライアンスおよびダザック氏に送付した書簡を公開した。
HHSの担当者(匿名)は書簡の中で、「本件に関する行政記録およびこれまでの回答を考慮した結果、ダザック博士に一定期間の資金提供禁止措置を講じることが、連邦政府の利益を守る上で必要であると判断した」と記している。この判断は、エコヘルス・アライアンスに対する書簡でもほぼ同様の理由として説明されている。
調査結果とその影響
特別小委員会の調査によれば、エコヘルス・アライアンスとダザック氏は、中国武漢での「機能獲得研究」を適切な監督なしに進めていたとされる。また、同団体は数百万ドル規模の米国立衛生研究所(NIH)の助成金要件に複数違反していた。
機能獲得研究とは、ウイルスを実験室で操作して毒性や感染力を強化し、その性質を科学者がより詳しく研究できるようにする方法である。この研究は、より致死性の高いウイルスが万一実験室から漏洩した場合、壊滅的な影響を及ぼす可能性があるため、非常に議論を呼んでいる。一部の米国情報機関の見解では、コロナによるパンデミックの原因となったウイルスが、このような経路で発生した可能性もあるとしている。
2024年5月に発表された特別小委員会の報告書では、エコヘルス・アライアンスとダザック氏に対する資金提供禁止措置および刑事捜査を求めていた。その後、HHSは同団体への資金提供を停止し、今回の正式な資金提供禁止措置(1月17日)が調査の大きな進展となった。
特別小委員会委員長ジェームズ・コマー氏(共和党)は、1月17日の声明で次のように述べた。
「今日、アメリカ国民のために正義が実現された。エコヘルス・アライアンスという悪質な団体と、その腐敗した元代表ダザック博士は、中国での危険な機能獲得研究を進めるために納税者の資金を使用したとして、HHSから正式に資金提供禁止措置を受けた。本日の決定は、アメリカの納税者にとっての勝利であり、国家安全保障や全世界の市民の安全にとっても重要な勝利だ」
エコヘルス・アライアンスの反応
エコヘルス・アライアンスは、この決定についてのコメント要請に即時回答しなかったが、同団体は公式ウェブサイトで繰り返し反論を発表している。同団体は、自らの資金が機能獲得研究に使われたことを否定しており、コロナを引き起こしたウイルスは実験室ではなく自然由来であると主張している。
2024年6月の声明では、「エコヘルス・アライアンスと武漢ウイルス研究所が行ったコウモリコロナウイルスの研究は、パンデミックの原因とはなり得ない」と述べている。また、特別小委員会の最終報告書に対しては、「調査による非難に深く失望している」と表明し、調査を政治的動機に基づくものだと批判した。
エコヘルス・アライアンスはさらに、「エコヘルス・アライアンスに対する攻撃だけでなく、全米の尊敬される科学・公衆衛生機関に対する不当な攻撃にまで及ぶ、意図的な情報操作や恐怖を煽る行為は、次のパンデミックの予測、準備、予防には何の役にも立たない」と反論している。
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