パナマ運河の管理権に関して、一部のファクトチェッカーやパナマ大統領が強調する法的(名目的)支配の主張とは対照的に、トランプ次期大統領の「中国による事実上の支配がアメリカの国家安全保障に対する脅威である」とした見解は、極めて正当なものである。
実際、中国の事実上の支配により、習近平が必要と判断した場合に、アメリカ海軍が世界的な緊急事態に対応する能力を著しく制限される。
パナマ運河の主要港を管理運営している企業は「香港企業」であり、中国企業ではない、またその「香港企業」が法的にはパナマ運河を支配していないという主張は、検証に耐えない。さらに、パナマのホセ・ラウル・ムリーノ大統領が、中国の軍事・情報資産が港湾運営に関与していないと暗示する根拠も不十分である。
その人たちは人民解放軍の制服は着ていない。中国共産党(中共)の情報資産であることを示す身分証を持っていないからといって、港湾運営への関与がないと結論づけることは、無責任と言わざるを得ない。
当然ながら、香港はすでに中国の支配下にあり、すべての「香港企業」は中共に従属しているとみなすべきである。このため、中国との緊張が高まる現在、パナマにおける中共の影響力や支配がもたらす国家安全保障上の問題は、容認できない状況にあり、早急に解決するべきである。
最善の対応策は、パナマが中国の影響下にあることはパナマ運河条約の主要条項に違反していることを認め、迅速に条約を遵守する行動を取ることである。
それができない場合、アメリカ軍が運河地帯を強制的に支配下に戻すことも正当化される。なぜなら、この運河地帯はアメリカの多大な犠牲によって建設したからである。
パナマ運河は単なる貿易ルートではなく、アメリカ海軍の迅速な展開を可能にする戦略的要所である。アメリカの海上貿易の約14%とコンテナ船交通の40%がパナマ運河を通過しており、その経済的重要性は計り知れない。
さらに、アメリカが3万8千人の犠牲を払い建設した主な理由は、海軍艦艇が大西洋と太平洋を迅速に行き来できる手段を確保するためであった。
一部では、新運河や閘門(ロック)を含め、アメリカのスーパーキャリアが通過できないために、運河は戦略的に不要だとする意見もある。
しかし、これは誤りである。スーパーキャリアとは異なり、アメリカ海軍の通常動力艦艇や支援艦は燃料補給が必要であり、南北アメリカを回る際は大幅な時間を要する。したがって、大多数のアメリカ海軍艦艇がパナマ運河を通過できるという事実は、戦略的に極めて重要である。
1997年以降、香港を拠点として国際的に港湾運営を手掛けるハチソン・ワンポア(HWL)は、バルボア港とクリストバル港を運営してきた。当時、香港はイギリスから中国への移行期間にあったが、現在では完全に中国の支配下にある。これにより、すべての香港企業が中共の意向に従属していると見なすことが合理的である。
さらに、HWLの創業者である李嘉誠氏が中共と強い結びつきを持つという議会での証言もあり、この点は1999年から懸念されている。
加えて、過去28年間で米中関係は劇的に変化し、中国がより攻撃的で敵対的な態度を取る中、アメリカが中国の影響力の拡大を抑制しなかったことは重大な過ちであった。
中国による中南米への影響力拡大を許すことは、アメリカのラテンアメリカにおける影響力をさらに弱め、最悪の場合、武力衝突の可能性を高めることになる。
トランプ次期大統領がこの問題を国家安全保障の最優先課題として取り上げたことは、極めて正当である。経済的・軍事的手段を否定しなかったことも、この問題の緊急性を示している。
パナマ運河地帯は、アメリカの血と財産を投じて経済的繁栄をもたらした地域であり、その中立性とアメリカ海軍艦艇の自由な通航が守られるべきである。世界情勢が1978年の条約締結時とは大きく変わった現在、運河地帯の安全保障はアメリカの支配下で確保する必要がある。
この問題は、アメリカの国家安全保障上の基本的な失策の象徴であり、中国の影響力拡大を防ぐためにさらなる行動が求められる。
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